911ではおなじみとなっているバージョン、「T」がポルシェマカンにも追加された。モンテカルロラリーのスペシャルステージとして有名なチュリニ峠も走った今回の試乗。果たしてマカンTはそこに相応しい走りを披露するのだろうか。(Motor Magazine 2022年6月号より)

驚かされる標準装備の充実ぶり

ポルシェのミッドサイズSUVマカンは、2014年の登場以来、およそ68万台を出荷。2021年実績でもポルシェの総販売台数30万台の内およそ29%、すなわち8万8000台がマカンだった。

そして、そのマカンにも911でなじみ深い「Tバージョン」が追加され、試乗会が南仏ニース北方に広がるチュリニ峠を中心に開催された。今回はそのインプレッションをお届けする。

マカンTに搭載されている2L直4ターボエンジンは最高出力265ps、最大トルク400Nmで、ベースグレードとまったく同じだが、標準装備のスポーツクロノパッケージによって0→100km/hの加速は6.2秒、最高速は232km/hに達する。

標準装備品は驚くほど豊富になった。エクステリアではマカンTオリジナルのアゲードグレーにペイントされたバンパーとドアミラー、モデル専用サイドブレード、これまでS専用だった20インチのダークチタンカラーの軽合金ホイール。さらにダークグレーのフロントグリルアプリケーション、スポーツデザインのドアミラーなどが採用されている。

インテリアではホイールリムヒーター付きGTスポーツステアリング、マカンTオリジナルレザーパッケージ、ブラックコーティングのスポーツテールパイプ、ブラックグロスのサイドウインドウトリムなどが含まれる。さらに15mmローダウンしたスポーツシャシとPASM(ポルシェ アクティブ サスペンション マネージメント)も追加料金なしで装備される。

つまり、これまでマカンでは選べなかったオプションも含めて単純計算で124万円ほどお買い得ということになる。さらにオプションで、エアサスペンション、21インチホイール、LEDマトリックスヘッドライト、メタリックカラーなどが用意されている。

峠ではノーズの軽さが光る。装備内容を考えればお買い得

試乗したのは、足まわりがコイルスプリング仕様のモデルだ。マカンSのV6エンジンより59kgも軽い4気筒ゆえにハンドルを切り込んだ時のノーズの動きは鋭く、望んだラインへスパッと入っていくような感じである。

ニースの市街地を抜けてアップダウンに富んだチュリニ峠に入る。対向車とようやくすれ違える狭いワインディングロードで全長4.72m、幅1.92mのミッドサイズSUVは、その大きさを忘れたかのように敏捷に走り抜ける。

こうしたセッションでは確かに4気筒モデルはV6に比べると踏み込んだ時にもう少しパワーが欲しいと思う時がある。だがアクセルペダルをいつもより深く踏み込めば後輪駆動キャラクターのPTM(ポルシェ トラクション マネージメント)はタイトなコーナーでややオーバーステア気味にノーズを内側に向けることができる。

ハンドリングはハードセッティングのフロントスタビライザーによって常にコントローラブルで安全、そしてスポーティだ。もちろん下り坂では絶妙なコントロールを可能にするブレーキのお陰でラリードライバー気取りでドリフトを楽しむこともできた。

個人的に2019年式の4気筒マカンを所有する筆者にとって、ポルシェマカンの開発チームがこれほどまでにポテンシャルを引き出せるとは予想していなかった。つまりマカンTはマーケティングの産物ではなかったのである。この新しいバリエーションはまさに伝統のTスポーツに相応しいキャラクターを持っていた。

このモデルは内燃機関搭載の最終マカンとなるわけで、このイベントに参加したクリスチャン・グラーフ氏をはじめとしたチームは、このイベント後に電動モデルとなるマカンの開発へと向かう。「マカンのファイナルエディション」とも言えるマカンTは日本で840万円〜というバーゲン価格に設定され、そろそろデリバリーが開始されるはずである。(文:木村好宏/写真:ポルシェAG)

●ポルシェ マカンT 主要諸元

●全長×全幅×全高:4726×1927×1606mm
●ホイールベース:2807mm
●車両重量:1865kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1984cc
●最高出力:195kW(265ps)/5000−6500rpm
●最大トルク:400Nm/1800−4500rpm
●トランスミッション:7速DCT(PDK)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・65L
●WLTPモード燃費:9.3-9.9km/L
●タイヤサイズ:265/45R20