ボルボの現行車において車名に“90”を冠するモデルはすなわち最上級を意味する。ここでは「90」の文字を与えられたセダン、ワゴン、SUVをテストドライブ。ボルボのフラッグシップモデル3台の魅力を改めて検証する。(Motor Magazine2022年12月号より)

新たな法則に従ってグレード名が一新された

このところボルボは、電動化やインフォテインメント等に矢継ぎ早に新たな要素を取り入れて改良を繰り返してきた。フラッグシップである90シリーズの3モデルは、いずれも登場から時間が経過しているが、内容的には最新の仕様にアップデートされている。

私が現行XC90の実車に初めて出会ったのは、2016年の初めのこと。たまたま取材で訪れたデトロイトショーだった。栄えあるトラック&SUVVオブザ イヤーを受賞したXC90のあまりにエレガントになったスタイリングにひと目惚れしたその気持ちは、今でも変わらない。

そのときはあまりに外見が印象的で、車内はよく確かめずにいたのだが、ほどなくして日本に導入されてじっくり乗る機会を得たときには、インテリアの美しさを目にして惚れ直した。さらにはサイズや重々しさを感じさせない走りの仕上がりにも感心した。

久しぶりに触れた今回の取材でも同じことを感じるとともに、時間の経過によりすべてがより洗練さあれたように感じた。

1年あまり後に日本に上陸したS60とV90 も、モジュラープラットフォーム「SPA」を共有するとともに、同じくエレガントさをアピールしていた。S90という車名は以前もあったが、現行型は、かつての「S80」の後継となるフラッグシップセダンだ。当初は500台のみが日本で販売されたが、2021年9月より販売が再開された。

一方のV90も以前にあったが、現行モデルは実質的に850→V70と受け継がれた系譜の後継車が、90シリーズの一員として格上げされたことになる。その後、パワートレーンのバリエーションなどの変更を受けて現在に至る。

S90、V90、XC90ともに2022年7月にボルボ全車に適用されるルールに則してグレード名が一新されたばかり。すでに全車で電動化を達成しているが、今回は全車「リチャージ アルティメット T8 AWD プラグインハイブリッド」となる。「アルティメット」というのは、従来の「インスクリプション」の後継という位置づけで、見てのとおり従来の「Rデザイン」のテイストもいくぶん入っている。

3台ともボディカラーも同じ「デニムブルーメタリック」で、ブロンドのインテリアカラーに、ブロンドチャコールのパーフォレーテッドファインナッパレザーシートや1400Wの高出力を誇るBower & Wilkins 社製プレミアムサウンドオーディオシステムが全車に装着されていた。

参考までに、T8パワートレーンのスペックも大半が共通だが、車両重量が200kgほど重いXC90のみ最終減速比が少し低められている。WLTCモード燃費公表値は1割ほど下回るが、充電電力使用時のEV走行可能距離は1kmだけ長い。そんな3台を駆り、ショートトリップに出かけた。

ターボ+モーターでどの速度域でも力強く走る

今回の試乗車は3台ともに、2L直4ガソリンエンジンにターボチャージャーとISGMを組み合わせたPHEVのT8パワートレーンを搭載。その走りも着実に進化している。

いずれも静かで力強く、なめらかな走りを味わえたことに加えて、最新モデルをドライブして印象的だったのは、瞬発力の強さだ。発進から流れに乗れる車速に上げる時はもちろん、高速走行時でもモーターが後押ししてくれる感覚があり、どの速度域でもトルクが上乗せされる。

XC90を含め3台とも車両重量が2トンを超えているとは思えないほど、軽やかな加速感を実現していて、どんな道でも気持ちよく走ることができた。その感覚をきついカーブと登り坂が繰り返される箱根のワインディングロードでも味わえたのは驚いた。

この車格でエンジンが4気筒では物足りないと感じる人もいるかも知れないが、性能的にはまったく不満のない水準であることを強調しておきたい。音や振動など走りの質感も4気筒としてはこれ以上はないほど洗練されていたのも、おそらく90シリーズとして相応しい仕上がりとなるよう開発しているに違いない。

足まわりも時間の経過とともに進化していて、各車登場時よりも印象が良かった。車高の低いS90
とV90でも走りの性格はそれなりに違って、セオリーどおりセダンのS90は剛性感が高く、大柄なサイズながら走りに一体感がある。一方のV90は、ゆったりと乗れるのが持ち味。荷物の積載に合わせて足まわりが硬めにセッティングされているワゴンも世では見受けられるが、そうなっていない。

圧倒的に重くて全高が30cm以上も高いXC90も、それを踏まえてチューニングされているようで、走りに重々しさはない。むしろ走り出してしまえば、もっと小さなクルマに乗っているかのような感覚になる。ここにもボルボは何か独自の秘策を持っているようだ。

高い質感と使い勝手の良さ車内のIT化にも驚かされた

ボルボはインテリアの良さで選ばれるケースも少なくなく、とくに家庭でクルマ選びに権限を持つ女性のひと声で決まることが多いそうだが、それも納得がいく。ドイツ車にも日本車にも、あるいはイギリス車やアメリカ車にもない、独特の素材感とスカジナビアンデザインが織りなす空間は人にやさしく、とても居心地がよいものだ。

さらに、独自の車内自動換気機能を備えた「Clean Zone −アドバンストエアクオリティシステム」が、微粒子状物質を除去し、PM2.5粒子を車外に排出して、車内の空気を良好にして快適に保ってくれる。アドバンストエアクリーナーも採用される。

新インフォテイメントシステムは、ボルボの最新モデルらしく、Google と共同で開発されており「OK、グーグル!」と呼びかければ、地図検索をはじめ、オーディオや空調等を操作したり、天気予報やニュースを聞いたり、自宅のIoT家電と連動させたりできるほか、PHEV用に特別に開発された機能も備えていて、充電ステーションを含むルートの計画や、出発前に空調を自宅で設定するといったこともできる。

タッチコントロール機能を備えた9インチサイズのセンターディスプレイで車両のほとんどの機能を直感的に操作できるようにされているのも、先進的かる合理的でよい。

ボディに合わせたらしさと個性が各々に与えらている

ボルボといえばエステートというイメージは根強くあるが、V90は世にあるすべてのワゴンの中でも、車格としてはほぼハイエンドに位置する。このサイズのワゴンは、いまやドイツの御三家とボル
ボぐらいにしか存在しない。

V90で改めて感心するのは、やはりエステートの基本である荷室の作りが良いことだ。奥行きが驚くほど長く、側面もタイヤハウスの存在を感じさせないよう形状を工夫していて、551L(5名乗車時)の容量以上に広く感じられる。

必要に応じて跳ね上げたり収めたりできる床面のパーテーションボードや、荷室後端右側のトレー状のスペースや、ちょっとしたものを挟んでおけるグロサリーバックホルダーやフック類など、本当に配慮が行き届いている。各メーカーも頑張っているが、ボルボはさすがの出来栄えである。かたやS90は、もちろんV90やXC90もそうなのだが、今回改めて見て、よりスタイリッシュさが際立っているように思えた。

ボルボというのは、プレミアムブランドと呼ばれる中でも、ドイツ勢に見られるヒエラルキー的なものからは少し離れたところにいる点も強みだと思うのだが、そのボルボのオシャレなフラッグシップサルーンが、しかも内容のわりにリーズナブルなプライス設定というのは、なんともありがたい話ではないか。セダン派には大きな価値があるように思える。

XC90は、多くの賞を獲得し、ユーザーからも高く評価されているとおり、天が二物も三物も与えたようなマルチな才能の持ち主だ。今回もあらためて、そのスタイリッシュな姿に惚れ直し、使い勝手と走りの良さに感心した。

優美な容姿、走りの性能は進化を重ね完熟に達した90シリーズは、今がもっとも美味しい「旬」な時期かもしれない。(文:岡本幸一郎/写真:井上雅行)

●■ボルボ S90リチャージ アルティメット T8 AWD プラグインハイブリッド主要諸元

●全長×全幅×全高:4970×1880×1445mm
●ホイールベース:2940mm
●車両重量:2100kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1968cc
●最高出力:233kW(317ps)/6000rpm
●最大トルク:400Nm/3000−5400rpm
●モーター最高出力:前52kW(70.7ps)/3000−4500rpm、後107kW(145ps)/3280−15900rpm
●モーター最大トルク:前165Nm/0−3280rpm、後309Nm/0−3000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTCモード燃費:14.5km/L
●タイヤサイズ:2450/40R20
●車両価格(税込):1059万円

●■ボルボ V90リチャージ アルティメット T8 AWD プラグインハイブリッド主要諸元

●全長×全幅×全高:4945×1880×1475mm
●ホイールベース:2940mm
●車両重量:2130kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1968cc
●最高出力:233kW(317ps)/6000rpm
●最大トルク:400Nm/3000−5400rpm
●モーター最高出力:前52kW(70.7ps)/3000−4500rpm、後107kW(145ps)/3280−15900rpm
●モーター最大トルク:前165Nm/0−3280rpm、後309Nm/0−3000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTCモード燃費:14.5km/L
●タイヤサイズ:245/40R20
●車両価格(税込):1079万円

●■ボルボ XC90リチャージ アルティメット T8 AWD プラグインハイブリッド主要諸元

●全長×全幅×全高:4950×1960×1775mm
●ホイールベース:2985mm
●車両重量:2340kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1968cc
●最高出力:233kW(317ps)/6000rpm
●最大トルク:400Nm/3000−5400rpm
●モーター最高出力:前52kW(70.7ps)/3000−4500rpm、後107kW(145ps)/3280−15900rpm
●モーター最大トルク:前165Nm/0−3280rpm、後309Nm/0−3000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTCモード燃費:13.3km/L
●タイヤサイズ:275/35R22
●車両価格(税込):1214万円