ボルボのミドルクラスSUVのXC60。その走りや取り回しのよいサイズ感でさらに上質な雰囲気のインテリアなどで人気のモデルだ。最初のGoogle搭載機種でもあるこのXC60の最新モデルの進化を見ていこう。(Motor Magazine2022年12月号より)

全モデルにGoogle搭載の新インフォテインメントを標準装備

現行のボルボXC60は2016年から販売されており、エクステリアデザインは大きく変わっていないが、中身は進化している。とくにPHEVモデルに関しては大幅に改良が施されているので、車両の変更点を含め紹介しよう。

2022年7月にラインナップが一新され、秋から販売されている2023年モデルは、最上級モデル「アルティメット」と「プラス」の2つのグレード展開となった。

今回試乗したモデルは、「XC60リチャージ アルティメットT6 AWD プラグインハイブリッド」。ちなみに、ボルボはBEVもラインナップしているが、PHEVも含め、充電できるモデルにはすべて「リチャージ」の名が冠される。

グレード名称が従来の「インスクリプション」から「アルティメット」へと変更されたのにともない、エクステリアも、「Rデザイン」のものとなった。つまり、よりスポーティな印象になったわけだ。

一方、インテリアは従来どおりのボルボらしい明るくクリーンなスカンジナビアンデザインとなっ
ている。私もXC60のオーナー(ディーゼルモデルのインスクリプション)なので、クルマに乗り込んだ瞬間は、見慣れた景色で何の違和感もなかった。が、ディテールを見ていくとさまざま異なる。

まず、9インチのセンターディスプレイの表示が異なる。Google搭載の新しいインフォテインメントが全モデル標準装備となっている。そして、12.3インチのドライバーインフォメーションディスプレイのデザインも一新され、高解像度のグラフィックデザインは機能的で視認性に優れる。

さらに、シフトノブがオレフォス社製のクリスタルとなっている。これは以前から装備されるが、シフトバイワイヤとの組み合わせのみで、内燃機関のトランスミッションには装備されない。

ちなみにオレフォス社は、スウェーデン王室御用達ブランドで、ノーベル賞受賞晩餐会で使われるグラスとして有名。さりげなく一流ブランドのマテリアルがあしらわれ、スウェーデンのプライドが伺える。決して華美ではないが美しい。そして、未来志向のモデルだけに採用されているのがディーゼルオーナーとしてはちょっと悔しい。

大幅に刷新され電池容量が約60%増しになった

一方、パワートレーンはひと足早く、22年の初めに大幅刷新された。駆動用のリチウムイオンバッテリーは、電池容量が従来の11.6kWhから約60%増の18.8kWhとなった。それにより、EVモードでの航続距離が約70~90kmと、ほぼ2倍にまで延びた。また、駆動用リアモーターは、約65%も出力がアップし、107kW(145ps)に。それにより、パワフルなEVV走行とより効率的な回生ブレーキ性能を実現した。

そして、2L4気筒エンジンも改良されている。従来搭載されていたスーパーチャージャーをやめ、組み合わされるCISG(クランク インテグレーテッド スターター ジェネレーター)の出力を40kW/54ps、160Nmに向上。バッテリー、モーターの容量が向上したため、エンジン(スーパーチャージャー)の力を借りなくても、電気の力で低回転域から優れたトルクとレスポンスを得られるようになったということだ。

このように、ドライバビリティが大幅に向上したため、XC60には従来のT8に変わり、T6エンジンが搭載された。パワーユニットの出力は、ガソリンエンジン186kW(253ps)/350Nm、電気モーターフロント52kW/165Nm、リア107kW/309Nm、システム総合出力は350psとなっている。

このように大幅改良されたXC60リチャージだが、結論を言ってしまうと、モーターならではのスムーズさを最大限に引き出し、フットワークと相まって、非常に洗練されたドライバビリティへと進化を遂げていた。バッテリーは、セルテクノロジーの大幅な進化により、サイズを大きくすることな
く電力量を大幅に増加でき、室内空間が狭くなる影響はない。

モーターによる力強く滑らかで気持ちのいい加速

まずはデフォルトの状態、つまりドライブモードは「HYBRID」、バッテリーは「AUTO」で走行開始。バッテリーの目盛りは3/4ほどで、走行可能距離はを60km、ガソリンも3/4目盛りで可能走行距離は660kmと表示されている。この時点では電欠の心配はなく、安心感が高い。アクセルペダルを踏んだ瞬間から豊かなトルクが立ち上がり、シームレスかつパワフルな加速が気持ち良い。

ボルボらしく必要十分な力を発揮しつつも決して誇示するような爆発的加速チューニングではなく、あくまで穏やかで扱いやすい。

交通の流れに乗って街中を走っている分には、基本的にエンジンはかからない。発進から加速まで、優先的にモーターで走行する。高速道路の合流や追い越し加速でちょっと多めにアクセルペダルを
踏み込むとエンジンがかかるが、その際のクオリティも高い。もちろん振動は小さく、エンジンの音
質、音量も耳障りではない。

最近、さまざまなブランドのハイブリッドモデルに乗る機会も増えたが、モーター走行による静粛性の高さゆえ、クルマそのものの遮音性やエンジンの音がより際立ち、快適性に大きな差を感じる。電動化が進んでも、エンジンそのものの音振がクルマの質感を大きく左右するのだ。

静粛性の高さを実感するシーンは高速道路でもあった。ハイブリッドモードでも基本モーター走行だし、「PURE」モードでEV走行を選択しても、最高140km/hまで走行可能な仕様となっている。この状況だと、より他の音が大きくなり気になりやすい。

タイヤが路面と接するためロードノイズはもちろん聞こえるが、速度とともにうるさくなる感じはな
い。そして、100km/h巡航時も風切り音は気にならない。XC60のSPAプラットフォームやボディはハイブリッド専用ではないが、電動化も見越して作り込まれていることがしっかりと伺える。

そして、エンジンとモーターが最大出力モードとなり、パワフルな走りを堪能できるのが、「POWER」モード。動力性能のみならず、8速ATのシフトスケジュールも変わり、ハンドル、ブレーキのレスポンスもクイックになる。さらに、AWDの設定もスタビリティ重視となる。

快適性とスポーティな走りをハイレベルに両立

ドライブモードがここまでスポーティになると、フットワークが気になるところだろう。床下に重いバッテリーを搭載するため、低重心となり、SUVとの相性も良い。2トンを超える車重は、2L 4気筒ディーゼルエンジンを搭載する私のXC60と比べると約200kgほどの重量増となる。

当然ながら、重さを支えるためにサスペンションもしっかりさせる必要があり、「骨太感」は増している。が、重量級に見られがちな、足捌きがドタバタした感じもなく、スッキリ感やコンフォートは犠牲にされていない。

21インチのピレリPゼロというスポーティなタイヤを履きながら、エアサスペンションの恩恵もあり、スポーティなフットワークとコンフォートがちゃんと両立されている。

バッテリーもオートのほか「HOLD」、「CHARGE」モードを備え、貯めたり使ったりを自在にできる。ドライブモードとバッテリーの組み合わせにより、いろんな走り方ができるが「いや、いろいろ面倒、良くわからない」という方は、素直にデフォルトの状態で走行して大丈夫。むしろ、クルマがとても賢いので、よほど意図がない限りはデフォルトがオススメともいえる。

この状態でGoogle マップを使用すると、カメラ&レーダーシステム、マップデータを使い、目的地までの走行距離全体でエネルギー効率良く走行するよう、マネージメントしてくれるというのだから。まだ充電インフラ事情でBEVを選べない人も多い日本において、PHEVは航続距離も長くて安心感が高く、現時点で積極的に選べる電動車だと言える。

2030年にBEV専業メーカーを目指し、電動化を進めているボルボ。単にCO2排出量を削減をするだけでなく、クルマとしての魅力もしっかり進化させていることがXC60で実感できた。(文:佐藤久実/写真:伊藤嘉啓、赤松 孝)

●■ボルボ XC60リチャージ ラインナップ

XC60リチャージ プラス T6 AWD プラグインハイブリッド:844万円
XC60リチャージ アルティメット T6 AWD プラグインハイブリッド:969万円

●■ボルボ XC60リチャージ アルティメット T6 AWD プラグインハイブリッド主要諸元

●全長×全幅×全高:4710×1915×16600mm
●ホイールベース:2865mm
●車両重量:2180kg
●エンジン:直4DOHCターボ+モーター
●総排気量:1968cc
●最高出力:186kW(253ps)/5500rpm
●最大トルク:3500Nm/2500−5000rpm
●モーター最高出力:前52kW(70ps)/3000−4500rpm、後107kW(145ps)/3280−15900rpm
●モーター最大トルク:前165Nm/0−3000rpm、後309Nm/0−3280rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・71L
●WLTCモード燃費:14.3km/L
●タイヤサイズ:255/40R21
●車両価格(税込):969万円