2023年3月15日(現地時間)、FIA世界耐久選手権(WEC)の開幕戦セブリング1000マイルレースが米国フロリダ州のセブリング・インターナショナルレースウェイで始まる。ここ4シーズン、トヨタが王者として君臨しているが、今シーズンはどうなるのだろうか。
ハイパーカーのパイオニアであるトヨタが一歩リードか
セブリング1000マイルレースの決勝は、3月17日金曜日に行われる。2023年のWECはこのレースを皮切りに11月4日のバーレーン8時間までの全7戦で争われ、シーズンのハイライトとなる第4戦ル・マン24時間は6月10-11日に開催される。
ここ数年のWECでのトヨタの強さは圧倒的で、2018年からル・マン24時間レースを5連覇、4シーズン連続でWECのシリーズチャンピオンを獲得してきた。2021年から導入されたハイパーカー規定でもその強さは揺るぎないものがあった。
しかし、今シーズンは少しばかり様相が違う。これまでハイパーカークラスでのライバルはプジョー、グリッケンハウスのみだったが、今シーズンからポルシェ、フェラーリ、キャデラック、そして、ヴァンウォールが加わり、開幕戦セブリング1000マイルでは計11台のハイパーカーがグリッドに並ぶ。
シリーズ最大のイベントであるル・マン24時間レースでは、さらに多くの台数が参戦することも予想されており、記念すべき100周年を迎える伝統の耐久レース制覇という栄誉をかけた戦いはさらに激しさを増していくことになりそうだ。
そんな中、トヨタは2023年シーズンに向けてアップデートされた新しい仕様の「GR010 ハイブリッド」を発表した。パワーユニットは520kW(707ps)を発揮する3.5Lエンジンと200kW(272ps)を発揮する電気モーターが組み合わされたレーシングハイブリッド。10年以上にわたるル・マン24時間レース参戦で培われてきたノウハウで、ライバルたちの挑戦を待ち受ける。
過酷な戦いを強いる、米国耐久レースの聖地
その進化のポイントはエアロダイナミクスや冷却系における改善に顕著で、軽量化と信頼性の更なる強化も図られている。外観からでも、両前部の左右に新たに配されたダイブプレーン空力デバイスや小型化されたリアウィングのエンドプレート、ヘッドライトのデザインに改善が見受けられる。
レギュレーション変更では、耐久レースにおけるサスティナビリティ向上への取り組みとして、今シーズンから100%生成されたバイオ燃料の使用、タイヤウォーマーの廃止が義務づけられるが、ここでも長期にわたり開発協力を続けてきたパートナー企業の技術的集積が生きてくるはずだ。
ちなみに、トヨタGR010 ハイブリッドには、デンソーのスパークプラグ、アイシン/デンソー共同開発によるフロントモーター、レイズの軽量マグネシウム鍛造ホイール、アケボノのモノブロックブレーキキャリパー、モービルワンの油脂類などが採用されている。
開幕戦が行われるセブリングは米国耐久レースの聖地と言われるが、1950年のオープン以来、荒れた舗装の路面で知られており、とくにこの時期のフロリダは蒸し暑く、8時間以上にわたって戦われる1000マイルレースは、ドライバーにとっても車両にとっても過酷なものとなる。
チーム代表であり7号車のドライバーも務める小林可夢偉は「これだけ多くのマニュファクチャラーがハイパーカークラスに参戦するというのはファンの皆様にとっても素晴らしいことですし、チームとしても新たなライバルの登場に気持ちが高まっています。今シーズンに向けてGR010ハイブリッドに改良を施してきました。これらのアップデートは東富士とドイツ・ケルンのチームメンバー、パートナーやサプライヤーの皆様との強い協力関係により生み出されたもので、関係者全員の尽力に感謝したいと思います。この改良型車両はとても好感触で、ル・マン制覇とWECタイトル防衛に向けた自信を与えてくれるものでした」とコメントしている。
100周年を迎えるル・マン24時間に向けて戦いはヒートアップ
最大の難敵と目されるポルシェは、北米のIMSAウェザーテックスポーツカー選手権で今季から採用されている次世代プラットフォーム車両LMDhでの参戦。この規定の下でプロトタイプ「963」を開発して、ペンスキーと提携してワークスチームとして2台体制でエントリーする。ハイパーカーLMH規定と北米のLMDh車両、どちらが速いのか、どちらが有利なのかという点も興味深い。
フェラーリはプロトタイプ「499P」で半世紀ぶりにスポーツカーレースにワークス参戦、こちらも2台体制となる。キャデラックはポルシェと同様、IMSAウェザーテックのLMDh規定の車両を開発、チップガナッシ・レーシング(CGR)とともにワークスチームを編成する。
もうひとつ、忘れてならないのが昨年WECにデビューしたプジョー「9X8」。リアウイングレスの大胆なデザインが注目を集めたが、昨年は実験的な挑戦という意味合いが強かった。今シーズンは万全の体制でエントリー、復帰後初のル・マンに向けて着々と準備は進められている。
2023年WEC開幕戦セブリング1000マイルは、日本時間3月16日0時55分からのフリー走行でスタートする。
●2023年WEC第1戦セブリング1000マイル ハイパーカークラス主なエントリー
2 キャデラックVシリーズ・チップガナッシ
4 ヴァンウォール・バンダーベル680
5 ポルシェ963・ペンスキーモータースポーツ
6 ポルシェ963・ペンスキーモータースポーツ
7 トヨタGR010ハイブリッド
8 トヨタGR010ハイブリッド
50 フェラーリ499P
51 フェラーリ499P
93 プジョー9X8
94 プジョー9X8
708 グリッケンハウス007
●2023年WEC開幕戦セブリング1000マイル タイムスケジュール
フリー走行1回目:3月15日水曜日10時55分〜(日本時間16日0時55分〜)
フリー走行2回目:3月15日水曜日16時35分〜(日本時間16日06時35分〜)
フリー走行3回目:3月16日木曜日11時55分〜(日本時間17日01時55分〜)
予選1回目:3月16日木曜日18時30分〜19時(日本時間17日08時30分〜)
予選2回目:3月16日木曜日18時55分〜19時(日本時間17日08時55分〜)
予選3回目:3月16日木曜日19時20分〜19時(日本時間17日09時20分〜)
決勝:3月17日金曜日12時〜(日本時間18日02時〜)
●2023年FIA世界耐久選手権(WEC)カレンダー
第1戦:3月17日/セブリング1000マイル(USA)
第2戦:4月16日/ポルトマオ6時間(ポルトガル)
第3戦:4月29日/スパフランコルシャン6時間(メルボルン)
第4戦:6月10-11日/ル・マン24時間(フランス)
第5戦:7月9日/モンツァ6時間(イタリア)
第6戦:9月10日/富士6時間(日本)
第7戦:11月4日/バーレーン8時間(バーレーン)