ハイエンドブランドのSUVも電動化は進んでいる。PHEVではベントレーのベンテイガが先陣を切っているが、高い効率を実現できるMHEVの採用も増えている。ここでは熟成著しい2モデルの最新仕様を試してみた。(Motor Magazine2022年5月号より)

電動化されても継承するマセラティの本質

マセラティとランドローバーといえば、ともにラグジュアリーブランドの一画を担っていることを別にすれば、同じ土俵に上ることは滅多にないくらい距離が離れた伊・英のビッグネームである。

だが、元はといえばグランツーリスモ作りの名手であるマセラティがランドローバーの牙城というべきSUV市場に乗り込んできたことで両ブランドは急速に接近。そこに拍車をかけたのが電動化の波で、マセラティは全モデルの電動化を早々と宣言するいっぽう、ランドローバーもPHEVやマイルドハイブリッドを次々と投入、来るべき電動化時代に備えている。

こうした背景から誕生したレヴァンテGTとレンジローバースポーツD300は、もともとの出自は大きく異なっているのに、少なくともスペック的には驚くほどよく似たライバル関係にある。今回、「ハイブランドSUVの電動化アプローチ」というテーマで2台を取り上げたのは、おおよそ以上のような理由によるものだ。では2台を順にご紹介しよう。

日本上陸を果たしたばかりのレヴァンテGTは、ギブリ ハイブリッドに続くマセラティ電動化モデルの第2弾で、ともに排気量2Lの直4ガソリンターボエンジンに48VのMHEV(マイルドハイブリッド)システムを組み合わせている。この結果、レヴァンテGTは330psの最高出力を振り絞るとともに、最大トルクは450Nmに達する。

レヴァンテGTに試乗すると、マイルドハイブリッドらしい低速域での力強さやレスポンスのよさもいくぶん感じられるものの、それ以上に伸びやかな加速感が強く印象に残る。また、高回転域まで引っ張ったときに、マセラティらしい快音を響かせることも特徴のひとつ。その意味でいえば、電動化されてもブランドの本質は失われていないといえる。

背筋がゾクゾクするような官能性が味わえる

レヴァンテのプラットフォームは軽合金素材を多用したギブリ用がベースとなる。レヴァンテの発表が2016年、ギブリはそこからさらに3年遡る2013年だから、シャシの洗練度という点では最新モデルにやや見劣りする部分があるのはやむを得ない。とはいえ、基本的なボディ剛性や走行安定性に不満があるわけではなく、快適性と操縦性のバランス取りといった面で最新モデルに一歩及ばない、といった程度のものである。

具体的にいうと、レヴァンテGTの足まわりはどちらかといえばソフトな設定で、ピッチングやローリングが小さくないわりに、路面からのゴツゴツ感を正直に拾う傾向がある。だから「これだけ足まわりが柔らかいのなら、ハーシュネスをもう少しうまく吸収して欲しいなあ」というツッコミのひとつも入れたくなるのだが、これがワインディングロードに足を踏み入れると、そうした印象が一変するのだから実に面白い。

コーナーの入り口でブレーキングすると、レヴァンテのノーズは確実に下降し、ハンドルを切れば外側のサスペンションがグッと沈み込む。ある意味で当然ともいえるこの動きにより、4輪のどのタイヤにどれくらいの荷重がかかっているかが克明に感じ取れるし、裏を返せば、荷重移動を積極的に活用して走行ラインを微調整することも簡単にできるのだ。

ベテランのスポーツドライバーからは「そんなものはコーナリングのイロハのイ!」と怒られるかもしれないが、最近はこうしたドライビングの実感を味わえないモデルが増えていることも事実。その意味でいえば、レヴァンテGTは基本に忠実ともいえるし、伝統的な意味での「操る楽しさ」に溢れているともいえるだろう。

そうした喜びを倍加させるのが前述したエキゾーストサウンドで、積極的なコーナリングを試していると、背筋がゾクゾクするような官能性を味わえる。つまり、たとえSUVでもマセラティの本質的な魅力を失っていないのがレヴァンテGTなのだ。

着実な熟成と進歩を実感。秀逸な直6ディーゼルエンジン

一方のレンジローバースポーツは、全高がレヴァンテGTより120mm高いこともあって、オフロードのために作られたSUVという雰囲気を強く漂わせる。

レヴァンテの流れるようなクーペラインとは正反対の無骨な四角いボディ形状もそうだし、オールシーズンタイヤのピレリスコーピオンゼロを履いていることも、このクルマが何のために生まれてきたのかを明確に物語っている。オリジナルのレンジローバーより全長を短縮してレンジローバースポーツを名乗っても、その血筋を隠し通せるわけではないのだ。

レンジローバースポーツのデビューも2013年と、決して新しくはない。ただしジャガー・ランドローバーの新作に乗ると、それが決してフルモデルチェンジでなかったとしてもシャシ、パワートレーン、ユーザーインターフェイスなどが着実な進歩を遂げていて驚かされることが多い。そしてこの最新レンジローバースポーツもまた、その例外ではなかった。

まず、2021年モデルからレンジローバースポーツにも導入された直6ディーゼルターボエンジンの完成度が凄まじく高い。それもディーゼル特有のノイズやバイブレーションが感じられないというレベルの話ではなく、レスポンスの鋭さや回転が上昇する素早さ、さらにはストレート6ならではの心地いいビート感など「ほかのエンジンじゃなくてこれがいい!」と、積極的に選びたくなる魅力が詰まっているのだ。

とりわけ素晴らしいのがアクセルペダルのレスポンスで、低回転域で右足に力を込めた瞬間、無尽蔵とも言えそうなトルクが溢れ出てくる。この辺は、マイルドハイブリッドの効果もあるのかもしれないが、その後もタコメーターの針はぐんぐんと上昇を続けて4000rpmオーバーのレブリミットまで一気にたどり着いてしまう。その様子は「本当にディーゼルエンジンなのか?」と訝(いぶか)しく思えてしまうほどだ。

ハイブランドでは譲れない高出力が実現する快適性

そんな直6ディーゼルエンジンをあえてマセラティ直4ガソリンエンジンと比較すると、低速域のトルク感は直6ディーゼルの圧勝。ただし、一定のトルクを保ったまま一気にレブリミットに到達する直6ディーゼルに比べると、直4ガソリンは低速トルクがやや細いものの、回転の上昇に伴って徐々にパワーが高まっていくドラマ性が感じられる。

このため、直4ガソリンのほうが、より息の長い加速を味わえる。カタログデー0→100km/h加速がレンジローバースポーツD300の7.3秒に対してレヴァンテGTは6.0秒、同様に最高速度は209km/hに対して245km/hと、いずれもレヴァンテGTが大幅に上回っている。

レンジローバースポーツはシャシの進化も目覚ましく、ハンドリングと乗り心地のバランスは最新モデルと比べてもまったく遜色がない。とりわけ、レヴァンテGTに対する明らかな優位性と思われたのが、路面からのゴツゴツ感を見事に遮断していた点。この辺は、当たりの柔らかいオールシーズンタイヤの影響もあるのだろう。

ソフトな乗り心地のわりにピッチングやローリングが巧みに抑えられているのもレンジローバースポーツの特徴だ。ただしこれはスプリング/ダンパーのチューニングというよりも、サスペンションジオメトリーの効果で、要はアンチノーズダイブをしっかり利かせた恩恵のように思えた。

裏を返せば、レンジローバースポーツのハンドリングは、自然な感触のレヴァンテGTとは対照的に、やや人工的な味付けにも思える。クロスカントリー4WD的な成り立ちのSUVに、優れたオンロード性能を与えようと努力して生まれたのがレンジローバースポーツの足まわり、といえる。

いっぽうのレヴァンテGTは、出自がグランツーリスモらしい自然なサスペンションの動きが魅力的。どちらを選ぶかは、「オンロード出身とオフロード出身のどちらが自分の肌に合うか?」という点に帰結するような気がする。(文:大谷達也/写真:永元秀和)

●マセラティ レヴァンテ GT 主要諸元

●全長×全幅×全高:5020×1985×1680mm
●ホイールベース:3005mm
●車両重量:2280kg
●エンジン:直4SOHCマルチエアターボ+電動コンプレッサー+モーター
●総排気量:1995cc
●最高出力:243kW(330ps)/5750rpm
●最大トルク:450Nm/2250rpm
●モーター最高出力:−kW
●モーター最大トルク:44Nm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・80L
●WLTCモード燃費:−km/L
●タイヤサイズ:265/50R19*
●車両価格(税込):1149万円
*取材車はオプションの265/45R20を装着

●ランドローバー レンジローバースポーツHSEダイナミックD300主要諸元

●全長×全幅×全高:4855×1985×1800mm
●ホイールベース:2920mm
●車両重量:2430kg*
●エンジン:直6DOHCディーゼルターボ+モーター
●総排気量:2993cc
●最高出力:221kW(300ps)/4000rpm
●最大トルク:650Nm/1500−2500rpm
●モーター最高出力:18kW
●モーター最大トルク:55Nm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:軽油・86L
●WLTCモード燃費:10.3km/L
●タイヤサイズ:275/45R21
●車両価格(税込):1143万円
*取材車はオプションのパノラミックルーフ装着(+40kg)、2座式3列目シート装着の7人乗り仕様(+80kg)のため2550kg