2009年、プジョー308シリーズに電動メタルトップを持つ4シータークーぺカブリオレ「308CC」が追加された。大成功を収めた「307CC」の後継となる308CCは、さらなる快適性とプレミアム感、そして楽しさが期待されていたが、はたしてどんなモデルだったのか。ここでは軽井沢で行われた国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年7月号より)

2分割のメタルルーフは約20秒で開閉可能

昨年(2008年)5月に上陸したハッチバック、9月のSWに続き、308シリーズに今回新たなボディラインアップが加わった。電動メタルトップを持つ4シーター、308CCだ。

2004年に登場した先代307CCは、日本において約3000台が販売されたヒットモデル。その先代と比較して、全長で75mm、全幅で60mmサイズアップ、逆に全高は5mm下げられ、よりロー&ワイドなスタイルを与えられたのがこの新型となる。

グレードは、本革シートに16インチタイヤを装備する「プレミアム」と、ダッシュボードまで本革のインテグラルレザー内装をまとい、17インチタイヤを履く「グリフ」の2種類。搭載エンジンはどちらも140psを発生する直噴1.6Lターボだ。

クーペ(クローズ)状態で並ぶ試乗車を見ると、なかなかにスタイリッシュだ。ハッチバックと同時進行で開発され、フロントセクションとボンネット以外はすべて専用のデザインが与えられたというだけあって、流れるようなボディラインはエレガントで美しい。またリアのディフューザー調のデザインは、力強くレーシーな雰囲気をも漂わせている。

重めのドアを開けて室内へと乗り込む。308シリーズは、このセグメントでは抜きん出てプレミアム感を演出しているが、本革シートが標準となる308CCの内装は、それに輪をかける華やかさを持つ。

先代比で室内長が125mm、室内幅は210mmも上回るため、リアシート空間も余裕がある。後席の背もたれが立ち気味なのと、デザイン上、クーペの状態では後席アタマまわりに余裕が少ないことを除けば、スペース的には大人4人乗車のドライブも十分可能。Cセグメントベースの4シーターカブリオレの中では、実用的な広さを確保している。

サイドブレーキ隣にあるスイッチを押すと、メタルルーフが2分割されながらトランクルームへと格納され、およそ20秒でカブリオレモードとなる。この開閉の動作にかかる時間自体は、ライバル車と比較してとりわけ短いというわけではないが、先代比では5秒短縮されているので、信号待ちなど限られた時間のなかで、焦らずに開閉させることが可能となった。

ちなみに、荷室容量はクーペ時が403L、カブリオレ時は226Lとなる。さらに、荷室にあるトノカバーをあらかじめ引き出しておかないと、メタルルーフのオープン操作はできないという安全対策も取られている。

シリーズ中もっともプジョーらしい「猫足」を持つ

新緑まぶしい軽井沢での試乗会。このままカブリオレ状態で走り出す。

フロントガラスの傾斜角がきつく、Aピラーの付け根がかなり遠くにあるので、カブリオレモデル特有のピラーの太さはまったく気にならない。他の308シリーズ同様、ドアミラーの先にある三角ガラスも、死角を少なくするのに一役買っている。

特筆すべきは、風の巻き込みの少なさだ。標準で着脱式のウインドディフレクターも用意するが、それを装着せず高速道路を走行しても、風はさわさわと髪の先を撫でる程度。シチュエーションを選ばず、髪の乱れを気にすることなくどこでもオープンエアを楽めるのは、とくに女性ドライバーにとって歓迎すべき長所だろう。

フロントガラスがドライバーの頭上近くまで伸びているため巻き込みが少なく、高速走行時にもパッセンジャーと普通の声音量で会話できるのだが、反面、通常の運転姿勢だと、その視界のなかに青空はなく、意識的に視線を上に移さないと、流れる景色を感じることはできない。

搭載されるトランスミッションは例の4速ATとなるが、シフトショックなどは今や皆無。ワインディングでは、あと何速か欲しい衝動にかられるが、街乗りや高速巡航など日常シーンにおいては不満は少ない。

308GTiと同レベルに強化されたという足まわりは、決して硬すぎることはない。高い回頭性でタイトコーナーも難なくクリア。ぺっとりと路面を掴んで粘るその感覚は、308シエロなど通常モデルよりもむしろコンフォート性において上回っている。プジョーらしい猫足という意味では、308シリーズの中ではこのCCが一番かもしれない。

メタルトップを閉めクーペ状態にすると、ほとんどハッチバックモデルと変わらない静粛性を確保している。フロントガラスにラミネート吸音ガラスを採用するなど、CC独自の防音処理を施し、気密性も高い。

クーペのスポーツ性とカブリオレの開放感、そしてプジョーらしい走り味。308CCは、何も我慢することなく、理屈抜きで楽しめる1台に仕上がっている。(文:Motor Magazine編集部/写真:原田 淳)

●プジョー 308CC グリフ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4455×1820×1430mm
●ホイールベース:2610mm
●車両重量:1590kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:103kW(140ps)/5800rpm
●最大トルク:240Nm/1400-3500rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:FF
●10・15モード燃費:9.4km/L
●タイヤサイズ:225/45R17
●車両価格:445万円(2009年当時)