当初は2021年11月にワールドプレミアが予定されていたが、半導体不足などもあり発表が延期されたマセラティ グレカーレ。正式発表はまだ少し先だが、今回イタリアのテストコースで試乗する機会に恵まれ、その実力を確かめてきた。(Motor Magazine2022年2月号より)

2L直4ターボに48Vマイルドハイブリッドの組み合わせ

たとえ擬装がかかっていてもプレーンなシルエットはおおよそ見当がつく。ウインドウグラフィックスの後端が垂直近くに立ち上がっているのは、Cピラーに掲げられた三叉の矛を引き立てるための演出で、ギブリやレヴァンテにも採用されている伝統的な手法。間隔の広い縦縞のフロントグリルであることもうっすらとわかるし、目を細めれば、その中央に三叉の矛がうやうやしく飾られている様子まで見えるような気がする。

グレカーレはマセラティが世に送り出す2台目のSUV。半導体問題などの影響で正式発表は半年ほど延期されたが、開発が順調なことにマセラティは自信を深めているらしく、プロトタイプの試乗会が実施される運びとなった。

試乗会が行われたのは、北イタリアのバロッコにあるFCAプルービンググラウンド。ここには公道の路面を模したコースも用意されているので、プロトタイプとはいえ、グレカーレの真の実力を確かめるには好適だろう。

試乗車は2L直4ターボエンジンを搭載。48Vマイルドハイブリッドシステムと組み合わされて最高出力300psを発生する。ハイブリッドシステムの構成はギブリやレヴァンテのハイブリッドに近いもので、ターボチャージャーに加えて電動式スーパーチャージャーを搭載。低回転域から鋭いレスポンスを発揮するという。

プラットフォームはFCAが開発した「ジョルジョ」にマセラティが独自のモディファイを実施。ホイールベースもアルファロメオ用に比べて83mm延長され、レヴァンテ並みの後席スペースを実現したとマセラティは主張する。

駆動形式は油圧多板クラッチを用いたフルタイム4WDで、通常時はリアへのトルク配分が100%だが、滑りやすい状況ではフロントへのトルク配分を最大50%まで引き上げることができる。

乗り心地とハンドリングを高い次元で両立する

試乗当日はときおり小雨がぱらつく空模様で、気温も真冬のように低い。おかげで、もともと摩擦係数が低いと思しきテストコースの路面は、さらに滑りやすい状況になっているようだった。

走り始めてまず印象に残ったのは、路面からのゴツゴツとしたショックがほとんど感じられないこと。それも、ただサスペンションの設定をソフトにするのではなく、ボディをしっかりと支えるソリッドさは残したうえで、足まわりがスムーズに動く工夫が施されているような気がした。つまり、乗り心地とハンドリングのバランスが高い次元で両立されているということ。これには、剛性が極めて高いジョルジョプラットフォームも大きく貢献しているはずだ。

この高剛性なプラットフォームが優れた効果を発揮しているもうひとつのポイントが、ステアリングフィールだった。操舵力自体は軽めでキックバックもほとんど伝えない洗練されたステアリングフィールながら、前輪が路面を捉えている様子だけは克明に伝わってくるのだ。

試乗当日の路面は滑りやく、コーナーを攻めるとアンダーステアが顔を出しそうになったが、そんなときでも早めに、そして安全に対処できたのは、このステアリングインフォメーションのおかげ。これは、ステアリングポストの取り付け剛性やステアリング系全体の剛性が並外れて高いことによるものだろう。

48Vマイルドハイブリッドを組み合わせるターボエンジンは、低回転域でも踏めば即座に分厚いトルクを生み出し、レスポンスのいい走りをもたらしてくれる。このエンジンのもうひとつの魅力がエキゾーストサウンドで、4気筒らしさを残しつつもスッキリとして乾いた快音を聞かせてくれる。その一方でトップエンドまできれいに回り切るキャラクターも併せ持つ。実に完成度の高いパワープラントである。

少なくとも今回の試乗では動的質感に関する不満は見当たらなかったマセラティ グレカーレ。これまでライバル不在だったポルシェ マカンにとっては、強敵誕生といえそうだ。(文:大谷達也/写真:マセラティジャパン)