ここ数年、堅調に販売台数を伸ばしているプジョー。その要因とはなにか? 今後のプジョーに期待するものはなにか。Motor Magazine筆者陣の大谷達也氏と竹岡圭氏、またMotor Magazine編集長 千葉知充が、新しいCIを採用して新たなステージへと向かうプジョーについて語る。(Motor Magazine2021年10月号より)

ポジションがとても取りやすいiコックピット

千葉知充(以下、千葉):ここ数年プジョーは好調で、2021年は7カ月で前年同期比168%を記録しました。その要因はどこでしょうか。また新しいCIが導入され、ステージが変わるこれからのプジョーについてお聞きしたいと思います。

大谷達也氏(以下、大谷):僕にとってはネコ足とピニンファリーナデザインというのがプジョーの魅力でしたが、207からネコ足じゃなくなってしまった。そして販売台数が下がり、同じタイミングでピニンファリーナではなくなった。1990年代、EUの始まりでグローバル化が加速し、そんな時にドイツ車を見習ってしまったと言われています。フランス車らしい魅力のあった時代、それがプジョーから失われていた時代があったけど、今はグローバルで魅力を備えたクルマに変わってきたのだと思います。

竹岡 圭氏(以下、竹岡):ネコがドッグフード食べてイヌ風になって、またキャットフードを食べるようになったのかなと(笑)。私は以前307CCを持っていましたが、屋根を閉めていればラゲッジルームに車椅子をそのまま放り込めるくらい広かった。フランス車は、おしゃれでデザインも凝っているけど、機能を犠牲にしていないと思いました。

千葉:同じプラットフォームでもプジョーは足が硬めでドイツ車に近い印象。シトロエンは昔からのフランス車、その間をDSが埋めている。グループ内で作り分けがうまく、さまざまなユーザーを3ブランドでカバーしています。

大谷:パワートレーンの進化や、ひとつひとつの熟成度が上がっている。でも僕は、それ以上にクルマとしてのまとまりが出て、クルマ全体で何を表現しようかというのが明確になってきたと思っています。3ブランドの関係がきれいに成立してトータルバランスがすごく高い。かつてフランス車に乗っていた人は、乗り心地がいいからとか、おしゃれだからという理由で、パワートレーンや質感のことをあきらめていた部分があったけど、今のプジョーは何ひとつあきらめなくていい。

竹岡:あのiコックピットは、私はすごくポジション取りやすくて、最高じゃんって思います。

大谷:全部がピタッとはまるドライビングポジションがあるんだよね。僕も208になって初めてピタッとくるポジションがあったけど、そこはもっと認識されるようになるのかもしれないね。

千葉:iコックピットが3D iコックピットに進化していて、そういうところも今のプジョーの魅力ですね。

大谷:情報の重要性によって引き立つようにしたというアイデアも素晴らしいのですが、文字とか、色合いとかグラフィックがきれいですね。インテリアの素材感とか、ダッシュボード、シートもいい。

竹岡:不満なところは、オープンカーがないくらいかな。207にも307にもあったのにね。

大谷:僕は、バリエーションは豊富だと思っています。ボディスタイルもそうだし、パワートレーンもBEV、PHEV、ガソリン、ディーゼルと揃っている。いろいろやれば価格は高くなるのが普通だけど。

プジョーのデザイン言語の出発点は508

千葉:新たにステランティスグループになってこれまでよりもっとスケールメリットが出ると思います。ここで、もうひとつ、プジョーの魅力として、パワー・オブ・チョイスをどうみるか。いろいろなものが用意されているのはすごく魅力だと思います。

大谷:メリットを言えば、やはりひとつのボディで、需要に対してフレキシブルに対応できる。ただ通常はいろいろなパワートレーンを積めるプラットフォームは、結果、中途半端になりがちですが、それがうまくいっている。

竹岡:スタイルはこれで決めて、パワートレーンはどれにする、という決め方ができるのはすごくいい。だいたいクルマを買う時って、まずはデザインですよね。乗った感じも違和感がなく、どれに乗っても嫌な感じがまったくしない。

千葉:今、一番気になっているモデルは?

竹岡:実はリフターが気になっています。今までルノー カングー一択だけだったけど、リフターとシトロエン ベルランゴが入ってきて、注目しています。

大谷:僕は圧倒的に208ですよ。凄く良くできていて弱点がない。Bセグメントでは208はダントツですね。おしゃれだし、ADASも充実している。値段も安いし乗り心地もハンドリングもいい。208こそ完全無欠、というと少し大げさだけど、僕の中ではプジョーらしい作品だなぁと。

千葉:最近、プジョーがあきらかに変わったなと思うクルマと言えば、僕は508ですが、おふたりはいかがですか。

竹岡:先代の208から変わってきたなと思って、今の208でさらに変わったなという印象です。

大谷:最近のプジョーのデザイン言語の出発点は508ですね。新しいデザインの世界を切り開いた。さらにプジョーのディーゼルエンジンは活気があってほんとうにいいですね。それも508の魅力のひとつだと思います。

竹岡:私は508セダンには魅力を感じなかったけど、SWに乗った時、カッコいいのとディーゼルエンジンの良さで初めて508がいいと感じました。SWの方がバランスがいいと思う。

千葉:僕も本命はSWで、真横から見た時のスタイルは凄くカッコいい。ネコが獲物を捕る時の構えた姿、「今から行くぞ」みたいな。家のネコがその恰好をするたびに「あっ508SW」って思う。

竹岡:私は3008のデザインが好きで、停まっていても動いている感じがする。複雑なデザインも好きです。

千葉:3008では、プジョー初となった4WD+PHEVの3008GTハイブリッド4についてですが、フロントはエンジンで、リアにモーターを積み駆動するというシステムですね。

大谷:こういうスタイルで後ろに荷物や人が乗る可能性が多いということを考えると、後輪も駆動するというのはすごく大切なことだと感じます。

千葉:SUVシリーズとしてはちゃんと棲み分けができていて、3008と同じプラットフォームを使いながら、5008は3列シートを採用し、ディーゼルとガソリンのパワー・オブ・チョイスができている。iコックピットも含め、プジョーのデザインになっている。

大谷:3008は走りもいいですものね。こういう背の高いクルマとは思えない軽快な走りで、乗り心地もいい。

竹岡:でもFFもプジョーは頑張るんだよね。アドバンスドグリップコントロールが出たときの、試乗会で泥の中を走ったけど、結構頑張るなと感じました。でもなんで4WDがないの?とも思ったけれど。

大谷:プジョーはプロペラシャフトの通っているクルマってないじゃないですか。つまり、そういうプラットフォームにはなっていない。荷物を積めるのはフランス車の大きな魅力なので、荷室スペースを稼ぐためにリアがトーションビームだったりね。

竹岡:バカンス需要かな。

大谷:フランス人は、小さいサイズでも実用性が高くないと納得できないようです。それとプロペラシャフトを通して4WDを作るというのとは相容れないですよね。荷室も広いというより、だいたいは深くて高さがあることが多いですよね。足まわりのことと深く関係している気がしますね。

プジョーはクルマの魅力を考えた電動化を推進

千葉:2022年に導入される予定の308には、後日、大谷さんには乗っていただきますが、今の段階の期待についてお話し下さい。

大谷:今のプジョーにはどういうクルマづくりをしたいのかという思想があり、それを実現できる完成度の高いハードウエアがある、だからこそ今の208ができたと思っています。それが全部308に受け継がれるわけだから、走ってもいいだろうし、クオリティ感、実用性、さらに運転支援機能まで、完成度の高いCセグメントに仕上がっていると期待しています。

竹岡:私はネコっぽい足まわりとか、インテリアの質感とか、デザインのおしゃれ度とか、きちんとプジョーらしさを貫いたクルマとして出てきてほしい。ゴルフがすごくわかりやすいクルマだとしたら、それとはちょっと違う方向だね、みたいな存在でいてほしいの。

千葉:ブランドのロゴも新しくったのですが、そこにプジョーの何を予感しますか。

大谷:208によってこの時代のプジョーのクルマづくりがひとつピークに達し、それを象徴するような何かが必要だった。もうひとつは、この先の電動化でクルマの意味が大きく変わる。それをロゴでも象徴させようとしている。パワー・オブ・チョイスを視覚的にも訴えようという表れなのかなと思います。

竹岡:時代の変化に合わせてプジョーも変わるぞというアピールだと思う。ライオンは踏襲されてはいるけれど、個人的には前の方が可愛いかったな。

千葉:1810年以来、ロゴを10回変えてきて、今回が11回目です。

竹岡:これまでのプジョーのロゴは、女子の認識度がすごく高いのよ。私の女友だちもライオンマークはプジョーだってみんなわかるけど、新しいロゴは私もまだ慣れないかな。

千葉:プジョーとしては新しいフェーズに入ったので時代に合わせてロゴも変えましたよということなのでしょう。

大谷:クルマのデザインも今は男性的です。グループ内での位置づけを考えれば、シトロエンがフェミニンな感じで、プジョーは男性的な方向ですね。

千葉:実はテールランプはライオンが爪でひっかいたような立体的なものになっています。あれもぜひ注目してほしいと思う。

竹岡:508SWのリアデザインは凄くカッコいい。ワゴンでこうデザインするのはさすがフランス車。ドイツ車とは違うこんなところを大事にしてほしいの。

大谷:デザイン、走りに、プジョーらしい立ち位置が見つかったんじゃないですか。

千葉:最後に今後のプジョーについてお聞きします。

大谷:プジョーも電動化に進んでいるけれど、クルマの魅力を考えたうえで電動化と言っているところが大人っぽいなと思います。要は電動化で何を訴えるべきかがよくわかっている。自分たちのクルマのイメージを明確にフォーカスしていて、クルマづくりに自信を持っている感じがします。

竹岡:フランスで電気自動車しか売らないという発表に工業界が反対していたけど、フランスのメーカーは流されずに発信できると思うので、ちゃんとユーザーのことを見たクルマづくりをしてほしいという期待があります。

大谷:何を作りたいかというのが一番大事なので、それは208でフォーカスされたなと。プジョーは今いい状況にあるけれど、あとはこれをどこまで広げていけるかということですね。

千葉:今後もプジョーに期待ですね。(写真:井上雅行)