BEVに限って言うとそのモデル数はまだ限られているが、コンパクトカーからSUV、4ドアセダン、スポーツカーと意外と種類はある。そこでいま、日本に導入されているBEVモデルを見ていこう。本記事は後編。(Motor Magazine 2022年1月号より)

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※タイトル写真はメルセデス ベンツ EQA。対話型インフォテインメントシステム「MBUX」やADAS、コネクティビティ機能なども標準で搭載する。充電は普通充電と急速充電に対応する。

違和感なくBEVへ移行が可能なメルセデスの乗り味

メルセデス・ベンツ発のBEVには、また異なる印象を受けることに。前述のように、この先BEV専業メーカーになることも辞さないと表明するメルセデス・ベンツだが、これまでに試したBEVモデルのEQCやEQAに乗った感覚からすると、その走りのテイストはなるほど既存のエンジン車からのスムーズな乗り換えを意識した仕上げなんだろうな、と、そのように理解ができるものであったのだ。

とくに、これまでメルセデスの作品に慣れ親しんだユーザーにとっては、とにかく一切の違和感を抱かせないように作りこまれていたことが印象的。衝撃的な動力性能によって圧倒的なインパクトを体感させるテスラの各モデルや、未来感にあふれるアウディの作品、そして生粋の「スポーツカーメーカー」が手掛けたことを否が応でも想起させるポルシェ「タイカン」などに比べると、相対的に没個性であることがむしろ特徴になっていると受け取れたのである。

そうかと思えば、高価な駆動用バッテリーをふんだんに搭載することで、航続距離の長さや大出力モーターとの組み合わせによる怒涛の動力性能を付加価値のひとつと考えるプレミアムブランドの作品とは一線を画し、効率重視のBEVづくりを連想させられたのが、ステランティス、すなわちPSA連合によるさまざまなBEV群でもあった。

欧州ブランドながらバッテリーの容量は「ほどほど」に抑え、同時に「パワー オブ チョイス」と称してその動力発生源を既存のエンジンと同格に扱うことで、BEVを特別視しないというユニークなコンセプトを提示する。

プジョーe-208やe-2008、DS3クロスバックEテンスは50kWhという容量の駆動用バッテリーをフロントシート下やリアシートクッション下などに分散配置することで、既存のエンジン車と同等の室内空間&ラゲッジスペースを成立させている。100kWh(約136ps)相当の最高出力と260Nmという最大トルクによる「常識的な出力を発するモーター」で前輪を駆動するというソリューションはいずれのモデルでも共通。

JC08モードで400kmを多少割り込む程度の航続距離は、前出プレミアムブランドの作品に比べると軒並みそれを下回るものの、ホンダeの283km、MX-30の256km(いずれもWLTCモード)といったデータは確実に上回り、欧州ではどうやらこの程度の航続距離が「BEVによるミニマム」と考えているフシも伺い知れるものとなった。

航続距離による価値感の違いもBEVならではの特徴

不特定多数を相手とした自動車の使われ方を考えれば、「一充電でどのくらい走れれば善しとするのか」はまさに千差万別となる課題である。

だが、比較的軽量、コンパクトで毎日の実用の友となり、車両価格の低廉さも重要度を増す、プジョーやDS、BMWのi3などのモデル群に対し、1000km近い航続距離を与えるような設計は、多くのユーザーにとってはむしろ「無駄なこと」と映るはず。

ましてや、自宅にさえたどり着けばそこでの充電が可能になるユーザーにとっては、極端な脚の長さというのはまさに「無用の長物」。日常的な使い勝手とは無縁の余裕を謳うことも付加価値となるプレミアムモデルと実用本位のモデルとでは、こうして航続距離ひとつにも大きな価値感の違いがあるのも、BEVならではの特徴なのかもしれない。

既存のエンジン車と同様の使い勝手を実現するべく、大容量の駆動用バッテリーを搭載し、それゆえに発生する充電時間の問題も出てくる。大出力の充電器を整備することによって解決しようという「力技」で攻め立てようという一部欧州勢のようなキャラクターのBEVは、今のところ日本発のモデルでは姿を現していないが、これもまたお国柄と言えるのかもしれない。

「エンジン車には負けじ」とばかり、再生可能エネルギーを用いた電力をチャージするのであれば、もはや「何でもアリ」とも受け取れるスペックが与えられる欧州発のBEV。だが、この先も電源構成が100%の再生可能エネルギーとなることは考えづらく、それゆえに効率が重視される日本発のBEVでは、自ずから既存のエンジン車以上に異なった価値観によるクルマづくりの考え方が継続されていくことになりそうだ。(文:河村康彦/写真:井上雅行)