スーパーカーから超高級ブランドまで、数多のフラッグシップたちは12気筒ユニットを搭載してきた。時代が変わろうとしている今、真に味わうべきはこうした「究極」がつづってきた官能的なドラマなのかもしれない。3回に分けて短期集中連載する「12気筒に魅せられた男たち」の中編(Motor Magazine 2021年11月号より)

50年近くの長きにわたって、熟成され続けてきた名機

もうひとり、12気筒エンジンを積んだイタリアの至宝をこよなく愛した男がいた。名前をフェルッチョ・ランボルギーニという。

ある時、販売されていたマラネッロ産パワートレーンのパーツのプライスタグに、驚くような価格がつけられていることを知って考えた。スポーツカービジネスは儲かる・・・。

1963年、アウトモビリ・フェルッチョ・ランボルギーニを設立。もうじき60周年を迎えるこのブランドのクルマには、設立当初から野心的なパワートレーンが積まれていた。それはマラネッロよりも数年早くDOHCヘッドを積んだ、60度12気筒エンジンだった。元フェラーリのエンジニア、ジョット・ビッザリーニの設計による12気筒エンジンはその後、進化に進化を重ねる。なんと、その基本設計は2010年に生産を終えたムルシエラゴまで活用されていた。

2011年、ムルシエラゴに代わる新型フラッグシップモデルとしてアヴェンタドールが誕生すると、ファンは狂喜乱舞した。なぜならデザインのみならずボディ骨格やパワートレーンなど何から何まで「新設計」であったからだ。

中でもマニアを唸らせたのが、「L539」と呼ばれる6.5L 60度V12自然吸気エンジンだ。パワートレーンを一新し、エンジンやトランスミッションを新開発して小型化。ボディ骨格もCFRP成型のモノコックボディとしてなお、フラッグシップモデルのパワートレーン配置をカウンタック以来の伝統となるスタンツァーニLPレイアウトとした。

キャビンから後方に向かってトランスミッション、エンジンの順に縦置きされるパッケージで、この「奇策」がカウンタック独自の形を生み、シザーズドアを必須としたのである。つまり、ディアブロ以降のフラッグシップにはすべて、カウンタックの血が流れていた。

L539ユニットの魅力は、アクセルペダルを踏み込み回転を上げていった時の、まるで右足がそのままエンジン回転に巻き込まれるのではないかと思われるほどのダイレクトなフィールにある。ドライバーは、精緻なメカニカルパーツが一斉に作動する様子を右足の裏で実感する。そして、完璧にバランスされた内燃機関の力強さを全身で堪能できる。

アヴェンタドールの生産台数は1万台をついに超えた。その間、L539エンジンもパワーアップを繰り返す。そして搭載された車両は、ムルシエラゴ以前のすべての12気筒搭載車の販売数を上回った。史上もっとも成功した12気筒エンジンである、と言っていい。(文:西川 淳/写真:小平 寛、永元秀和、井上雅行)

ランボルギーニ アヴェンタドール LP780-4 ウルティメ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4868×2098×1136mm
●エンジン:V12DOHC
●総排気量:6498cc
●最高出力:574kW(780ps)/8500rpm
●最大トルク:720Nm/6750rpm
●トランスミッション:7速AMT
●車両価格(税込):5454万3090円