山﨑賢人・松岡茉優主演の『劇場』、大倉忠義・成田凌主演の『窮鼠はチーズの夢を見る』の近日公開を控える鬼才、行定勲監督。興収85億円を記録した代表作『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)では“セカチュー”ブームを巻き起こし、 同作は“聖地巡礼”人気の先駆けにもなった。

行定勲監督

 行定監督作品における映像世界の魅力とは、光、雨のコントラスト。どの映画も登場人物の感情を揺さぶるように、時に激しく雨が打ち、時に光が人々やその場所を照らす。それらが街並みや自然の風景と相まって、よりドラマチックに見せる。

 では、その場所をいったいどのようにして選んでいるのだろうか? 行定監督自身に、ロケ地選びの秘密や思い出のロケ地を明かしていただいた。

ロケ地選びの必須条件は撮影時の利便性

 行定監督はまず、ロケ地選びの条件として撮影時の利便性を挙げる。

 「設定に合致している場所であるかはもちろん、その中でも撮影がしやすいかどうかは重要です。静かであるとか、近隣の環境が映画に適しているか。撮影行為は大掛かりでもあるので。いくらイメージに合っている場所だとしても、近隣に迷惑がられてしまうようだと、撮影は成り立たないのです」

 このため、協力体制が取れるかは大事だと続ける。

 「協力体制を得るために、ロケハンなどは基本的にはその地方が大切にしている場所を理解した上で、現地を見て回ることにしています。中でも重要なのは光。陰影がはっきりと分かる奥行きのある風景や、水が介在する場所に惹かれます」

撮影監督が地図を指さした奇跡『世界の中心で、愛をさけぶ』

 『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)は地方都市を舞台に、高校生の朔太郎と白血病を患う恋人・亜紀の悲恋を描いた物語。成人した朔太郎を大沢たかお、高校時代を森山未來、ヒロインの亜紀を長澤まさみが演じた。原作小説の組み立てを大きく改変し、見応えのあるドラマを構築している。

 原作小説の舞台は、作者・片山恭一の故郷である愛媛県宇和島がモデルと言われている。映画版は高松市の北端に位置する庵治(あじ)町をメイン舞台に、愛媛県松山市の愛媛県庁本館(松山市一番町4-4-2)、伊予高校(伊予郡松前町北黒田119-2)などで撮影された。

愛媛県庁とその前を走る路面電車。県庁は病院の廊下の設定で撮影された

 いわば、映画「セカチュー」の世界は、街と街を繋ぎ合わせた架空の場所。しかし、原作の世界観を損なってはいない。

 「私は“原作原理主義”なので、四国に想いを馳せてロケハンしました。もちろん宇和島にも行きました。宇和島では撮影しませんでしたが、愛媛県では愛媛県庁や路面電車、伊予高校と撮影させてもらいました。なかなかメインの街が決まらず、愛媛から香川に範囲を広げて探しました。ロケハンの最終日に撮影監督の故・篠田昇さんが地図で庵治町を指さしました」

 そこには奇跡が詰まっていた。朔太郎と亜紀が暮らす街がそのままあった。

海に面した庵治町

 「もともと、防波堤の場面は海に太陽が落ちる場所というイメージがあったので違う場所を探していたのですが、実は庵治町の海には夕日が落ちるのではないかと言って、急きょ向かいました。たどり着いたところには、私が想像していた小さな港町が存在していました。嘘のようにすべての場面がそこでハマっていきました」