33歳で手がけた⻑編初監督作『善き⼈のためのソナタ』(06)でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督の最新作『ある画家の数奇な運命』が今秋、日本公開されることになり、同作のポスタービジュアルが解禁された。

現代美術界の巨匠ゲルハルト・リヒターの半生をモデルに、祖国ドイツの“歴史の闇”と“芸術の光”に迫る本作。第75回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部⾨で⾼評価を獲得したほか、第91回アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされ、アルフォンソ・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』(18)や、是枝裕和監督の『万引き家族』(18)と賞を争った。

物語の主人公は画家志望の青年クルト(トム・シリング)。彼は幼き日に画家を志すきっかけをくれた叔母(ザスキア・ローゼンダール)を、ナチ政権下にあったドイツの“安楽死政策”で失っていた。やがて東ドイツの美術学校へ進学したクルトは、叔⺟の⾯影を持つ⼥性エリー(パウラ・ベーア)と恋に落ちる。その後結婚したふたりは芸術の自由を求め西ドイツへ逃亡。クルトは“自分だけの表現方法”を模索し、もがき苦しむ。

ポスタービジュアルには真っ白なカンバスに真剣な眼差しを向けるクルトと、彼の心の内で導き続ける叔母や妻エリー、さらにナチスの制服姿のエリーの父(セバスチャン・コッホ)が登場し、複雑に絡み合う彼らの数奇な関係を暗示している。また「⽬をそらさない。その信念が、真実を描き出す」というキャッチコピーは、”絵画の可能性”を信じて挑戦し続けるクルトの強い意志を代弁しているようでもある。

激動のドイツに生き、“苦悩と葛藤”を“希望と喜び”へ昇華させていくクルトの姿は、コロナ禍の困難な時代を生きる私たちにも力を与えてくれるはず。今年の秋は、若き芸術家の感動の物語を美しい絵画とともに堪能してほしい。

文/トライワークス