今年4月10日に82歳でこの世を去った“映像の魔術師”大林宣彦監督の遺作となってしまった『海辺の映画館−キネマの玉手箱』(7月31日公開)。待望の初日を明日に控え、監督の想いをひと足先に受け止めた映画人や著名人から、熱いコメントの数々が到着した。

本作は『転校生』(82)や『時をかける少女』(83)など数多くの革新的な作品を世に送りだし、余命宣告を受けながらも精力的に映画を撮り続けた大林監督が、20年ぶりに故郷の広島県尾道市で撮影をおこなった劇場公開映画第44作。尾道の海辺にある唯一の映画館”瀬戸内キネマ”が閉館を迎える最終日におこなわれた「日本の戦争映画大特集」のオールナイト興行。そこで映画を観ていた3人の若者は、劇場を襲った稲妻の閃光に包まれスクリーンの中の映画の世界へとタイムリープする。戊辰戦争から日中戦争、沖縄戦と戦争の歴史をたどっていく3人は、原爆投下前夜の広島で出会った移動劇団”桜隊”の運命を変えるために奔走する。

”大林版ニュー・シネマ・パラダイス”との呼び声も高い本作は、監督が幼少期から持ち続けてきた“映画への情熱”と“平和への想い”が凝縮された、約3時間におよぶエネルギッシュなエンターテインメント。今回のコメントは、無声映画やトーキー、アクション、ミュージカルといった様々な映画表現で展開する本作に込められた「映画は未来を変えられる!」というメッセージを受け止めた映画人や著名人が寄せたものだ。

コメントを寄せたのは、第二次世界大戦中の広島を舞台にしたアニメ映画『この世界の片隅に』(16)で主人公の声を務めたのんや、岩井俊二、園子温、井口昇ら“映画の未来”を託された作り手たち。そして、大林監督の代名詞となった”角川映画”のプロデューサーを務めた角川春樹といったそうそうたる顔ぶれ。彼らの心を震わせた大林監督の最期のメッセージを、映画館のスクリーンでしっかりと受け止めてほしい。


<コメント(五十音順)>

●井口昇(映画監督)

「始まった瞬間から傑作の予感と鳥肌が立ち、それが1秒も変わらず3時間続く映画体験は生涯初めてでした。余命を宣告された監督が撮ったと信じられない、このすさまじいパワーと若々しさはなんなのだろう。あらゆる感想も、『大傑作!』という賞賛さえ陳腐に感じるほど、大林宣彦監督の細胞から暴れ出た映画的才気と創作の執念と戦争への怒りの凄絶さに、ただただ打ちのめされました。大林宣彦監督は亡くなったのではない。この映画そのものになって、つらい現実と立ち向かう現在の観客の心にスクリーンから光を与えてくださるのだと僕は本気で思います。だからこそ、いまこそ、映画舘で大林監督に逢いに行こう!!」

●岩井俊二

「まるで大林宣彦監督の脳内を直接見ているような表現世界。それはどこか昨日見た夢のようでもあり、明日見るかも知れない夢のようでもあり。この“ひとつの映画”がこの現世をどう照らすだろう」

●羽海野チカ(漫画家)

「繰り返される時間たちが、岩だらけの入江の蒼い海の底に沈んだ、カラフルなブリキの宝石箱のよう。もっと思いきり生きていいんだよと、宝石箱たちが一斉にしゃべりだしたような気がして、映画の中に吸い込まれました」

●笠井信輔(フリーアナウンサー)

「映像作家を刺激する自由で大胆な映像構成、リフレインと挿入の魔術師といった大林監督の晩年の輝きはいっそう増している。なんといっても物語がわかりやすく、ぜひとも若い人たちに驚いてもらいたい」

●角川春樹(角川春樹事務所 代表取締役社長・俳人・映画監督)

「彼こそがキネマの玉手箱。青春映画から反戦映画までなにが飛び出すかわからない。最後まで映画監督として生き切った大林宣彦監督の幸せな人生がうらやましくもある」

●園子温(映画監督)

「映画史に残る最高傑作かつ最高遺作だ」

●のん(女優、創作あーちすと)

「生きている時間ギリギリまで使って、映画を撮り続けたことに感動します。時空も次元も渡り歩いて映画を旅する3人が、観客じゃなく当事者になった瞬間に、この『海辺の映画館』を観ている私も観客ではないんだ、と突きつけられた気がしました」

●樋口尚文(映画評論家・映画監督)

「反戦と放蕩、近代史と極私的記憶、真摯なるメッセージと豊饒なる映画の詩。あらゆるものがアナーキーな自由さのもとで結い合わされ、沸騰する奇想の大河。これは大林監督一世一代のウソとマコトの饗宴!」

●町山智浩(映画評論家)

「『いま、これを言っておかなければ!』という切迫感とともに、時代への怒りと映画への愛が怒濤のごとく奔出する!」

●松本紀子(ドワーフ プロデューサー)

「なんと挑戦的な作品!この作品を生みだす監督のエネルギーに圧倒されました。映画への情熱はそのままで、でも新しい大林監督にここでまた出会うことになるなんて!そして、しんしんと観客の上に降り積もるメッセージ。それを丁寧に受け止めるのが、せめてもの私の使命だと思います」

文/久保田和馬