5年前にNHK朝の連続テレビ小説「あさが来た」(15)で女優デビューをして以降、瞬く間にスターダムを駆け上がり、2021年度前期の連続テレビ小説「おかえりモネ」のヒロインに抜擢された清原果耶。18歳にして、人気と実力を兼ね備える女優となった清原の初主演映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』が公開中だ。これまで役に対して愚直に向き合ってきた清原を直撃した。

隣家に住む大学生の浅倉亨(伊藤健太郎)に想いを寄せる、14歳の大石つばめ(清原果耶)。父と育ての母の間には、もうすぐ妹が誕生する予定だが、両親の血がつながった子どもが生まれることで、つばめは少し複雑な気持ちを抱いている。そんななか、書道教室の屋上で、派手な装いの老婆(桃井かおり)と出会う。つばめは彼女を「星ばあ」と呼び、心の内を話すようになっていく。

本作の脚本と監督を務めたのは、日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作『新聞記者』(19)の藤井道人だ。清原とは『デイアンドナイト』(19)に続いて2度目のタッグとなったが、オファーを受けた際に「以前、お世話になった藤井監督から声を掛けていただいたので、やる気が出ましたし、頑張ろうと思いました」と笑顔を見せた。

『デイアンドナイト』の撮影時は15歳だった清原。「当時はまだ、自分のことで精いっぱいでした。『デイアンドナイト』は、周りの方々に助けてもらった現場の一つだったので、そこで一緒に闘ってくださった藤井監督とまた作品が作れるんだと思うと、純粋にうれしかったです」。

■「桃井さんから、覇気というか、オーラみたいなものを感じました」

つばめ役については「どこにでもいるような普遍的な14歳の女の子」と捉えつつ「つばめ自身が抱えている悩みの“湿度”や“濃度”は、脚本を読んでいてすごく伝わってくるものがありました」と彼女ならではの表現をし、「そこをいかに丁寧にできるのかと、気をつけて演じていきました」という。

藤井監督からのオーダーは「好きなように、感じたままやってもらえたら」というものだったそう。「今回の役は、私自身と結構近かった気がします。もちろん自分が14歳の時、こんなにちゃんと悩めていたかというとそんなことないかもしれないけれど、私も結構考え込んでしまうタイプなので、スッとつばめに入れた気がします」。

伊藤健太郎演じる浅倉亨とつばめの距離感は、思春期ならではの初々しさがある。「亨くんに対しては、好きではあるけど、ただの恋ではなく、どちらかというと『憧れている』という要素が大きいんじゃないかと思いました。小さいころからやさしくしてもらった近所のお兄ちゃんということが、ちゃんと視覚的にも見えたらいいなと思いながら演じました。伊藤さんとは、お互いに役として現場に入ったので、常に他愛もない話をしていた気がします」。

本作で印象的なのが、ベテラン女優である桃井かおりと織りなす、書道教室屋上での二人芝居のシーンだ。「ものすごくいい経験になりました。桃井さんから覇気というか、オーラみたいなものを感じて、自分も頑張ろうと引き上げてもらった気がします。桃井さんは、監督にいろいろな提案をされていましたが、それを間近で見られたことは、すごく勉強になりました」。

桃井とのシーンは常に流動的で、時にはアドリブ満載のシーンもあったそう。「星ばあとバスを待っているシーンは、ほぼ全部アドリブの会話でした。でも、私がなにを言っても、桃井さんは的確に返してくださったので、気がつけば監督から『OK』が出ていたんです。私自身は、本当に大丈夫だったかな?と思うくらい、自然な会話ができました」。

■「基本は石橋を叩いてちゃんと確認してから動きたいタイプです」

また、星ばあの前で感情を吐露して泣くシーンは、本作におけるハイライトでもある。「あのシーンは、とても大変でした…」と言う清原。
「私のなかでは絶対に1回しかできないと思っていましたが、藤井監督も『清原さんの好きなタイミングで、好きな動きでいってください』と任せてくださいました。めちゃめちゃ集中して臨みましたが、スタッフの皆さんや桃井さんが、私を支えて見守ってくださったからこそ、撮りきれたシーンだったのではないかな。私としては、それがちゃんと形になって良かったなと、心から感謝しました」。

星ばあが、悩めるつばめに「後悔ってのは行動してからしろ」という台詞は、百戦錬磨の女優、桃井の口から出ると、なんとも説得力がある。そして、その言葉に背中を押されたつばめは、ある行動を起こす。では、実際の清原は、思い立ったらすぐに行動するタイプか、もしくは石橋を叩いてから渡るタイプか、どちらなんだろうか?

「状況によりけりですが、基本は石橋を叩いて、ちゃんと確認してから動きたいタイプで、仕事となると、余計にそうなります。もちろん、準『行っちゃえ!』と思うこともありますが、いつも事前に準備できることはしておきたいし、予測できる範囲の問題点なども、ある程度予想しておきたいタイプです。なぜなら、自分のなかでの安心感が、現場で役を生きるときの自信につながる気がするので」。

実際、これまでのインタビューでも、「入念にリサーチしてから、現場に入りたい」というスタイルは変わらず、「私は、ものすごく考えて悩むタイプ」と自覚もしている。

「悩むことでいい方向に働くときもあれば、ここはもっと柔軟にいったほうがいいなと思うときもあります。ただ、今回撮影が終わって思ったのは、作品のことを一番に考えて、1つ1つのことに対してちゃんと悩み、考えることは、悪いことではないのかなということでした。だからこれからも丁寧に考えてやっていきたいなと思っています」。

■「歌については、自分が出せる限りの全力を注ごうとは思っていました」

本作では、シンガーソングライターのCoccoが作詞、作曲、プロデュースを手掛けた主題歌「今とあの頃の僕ら」も歌いあげている清原。歌について「私はまだ、それを語れるほどの人間ではないです」と恐縮する清原に、レコーディングの感想を尋ねてみた。

「録る前日からすごく緊張していましたが、レコーディング中もずっと緊張が続いていました。だから終わってからも、本当にこれで良かったのかな?と思いました。もちろん、ボイストレーニングは重ねてきたし、自分が出せる限りの全力を注ごうとは思っていましたが、Coccoさんやスタッフの皆さんに指導をしていただいてなんとかできた感じです」。

同曲が映画の最後を締めくくったことについては「Coccoさんが、映画を観てから、つばめのいまとあのころの気持ちを歌詞に起こしてくださったので、つばめを演じた私が歌うことは、1つ大きな意味を持つことができたのかなとは思っています。また、それを聴いてくださった方々が、作品の広がりを感じていただけたとしたら、私の喜びにもつながります。ただ、自分としては、不安でいっぱいでした」と素直な想いを語った。

また、この秋から冬にかけて、清原の出演作が目白押しである。本作を皮切りに、堤真一や石田ゆり子と共演する『望み』(10月9日公開)、成田凌と清原のW主演映画『まともじゃないのは君も一緒』(11月公開)、中川大志と清原果耶がW主演を務めるアニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』(12月25日公開)のほか、『砕け散るところを見せてあげる』や『護られなかった者たちへ』も公開予定だ。

「去年まで頑張って撮ってきた作品が公開されることへの喜びが大きいです」と言う清原は「なかなかこのご時勢、声を大きくして『映画館へ行ってください』とは言えないかもしれませんが、作品として世に出す機会をいただけたこと自体、ものすごくありがたいことだと思っています。また、もうすぐ朝ドラの撮影にも入るので、そちらも全力で頑張り、全うしたいと思います」。

最後に、『宇宙でいちばんあかるい屋根』をこれから観る人へのメッセージをもらった。
「この物語は、つばめが星ばあと出逢い、ひと夏の奇跡を通じ、成長していく物語となっています。なにかいま、自分のなかで悩みを持っている方や、つばめの年齢を超えて大人になったけどなにかもどかしさを感じている方など、幅広い年齢の方に観ていただけたらうれしいです」。

取材・文/山崎伸子