「DVD&動画配信でーた」と連動した連載がリニューアル! 私、南沙良が、ミニシアターを巡り(まずは関東近郊から)、その劇場の魅力や特徴を皆さんにお伝えします。題して「彗星のごとく現れる予期せぬトキメキに自由を奪われたいっ」。第2回は下高井戸シネマさん(後編)。代表の木下陽香さんとの対談の模様をお届けします!

■「“懐かしい”や“落ち着く”を提供する場所です」
木下「実は私、代表になって間もないんですよ。前の会社を辞めたのが去年の9月で…」
南「まだ最近じゃないですか! えっと…前の会社って!?」
木下「それまでは損害保険会社に勤めてました。前館長だった父が突然亡くなったので、退職して後を継いだんです。畑違いだし、ろくに引き継ぎも受けてないので、最初は大変でした。父は自ら経理をやってたんですけど、ファイルにパスワード・ロックをかけたまま亡くなってしまって(笑)」
南「笑いごとじゃないです(笑)。
改めて、下高井戸シネマさんの特徴を教えていただけますか」
木下「60年以上やっているので、地元で“懐かしい”や“落ち着く”を提供する場所になっていることですね。お客さんはほとんど近所の方。主婦やおじいちゃんやおばあちゃんが、平日の昼間にふらっと映画を観に来て、帰ったら夕飯の準備をする。そんな感じですね」
■「私なら、サメ映画をラインナップしたい!」
南「いいなあ。うちの近所にも映画館が欲しいです。結構遠くて、映画を観に行くだけでもちょっとした旅で…。(特集上映リストを見て)あ、『シェルブールの雨傘』! 小さい頃に家族で観て以来、大好きです」
木下「ミシェル・ルグラン特集ですね。南さんなら、うちでどんな作品をラインナップします?」
南「サメ映画!」
木下「サメ? 『ジョーズ』とか?」
南「『シャーク・ナイト』とか(笑)」
木下「サメ映画ってリアルで怖いですよね。ゾンビ映画に比べてずっとリアリティがある」
南「分かります! でもサメが竜巻に乗って飛んでくるみたいなのも好き(笑)。ただ、B級だと下高井戸シネマさんにハマらないかな?」
木下「そんなことないですよ。うちは昔から『色をつけない』のがポリシーのひとつなんです。音楽映画もドキュメンタリーも、ハリウッドもインドも、偏りなく。古い名作だけでなく、新作をちょっと遅れて上映したりもします」

■「昔、星野源さんがギターを忘れて帰ったそうです(笑)」
南「ところで名物の食べ物もあるそうですが、実は私、映画館でものを食べない派なんです。昔はポップコーンを買って食べてたんですけど、一度も食べ切れたことがなくて(笑)。映画が終わっても食べ終わらないし、結局買うのをやめました」
木下「ええ!? 私なんて最初の10分で完食しちゃうのに!」
南「シネコンのポップコーンは最小サイズでも大きいんです」
木下「私みたいな客がすぐ食べ終わらないようにですね(笑)。昔の映画館はもっと小ぶりでしたよ」
南「シネコンとの違いと言えば、席が予約制じゃないんですね」
木下「昔の映画館はそうでしたよ。整理券を配らない館は、扉が開いたら客が席取りに殺到します」
南「大変ですね、それ」
木下「でも予約制じゃないから、『行くつもりだったけど、雨だからやーめた!』ができるんですよ」
南「いいですね! 私、予約したけど雨が強くて行くのが億劫だなあ…ってことがよくあるので。じゃあ最後に、下高井戸シネマさんの長い歴史で何か事件など…」
木下「2006年に、星野源さんがあるライブ・イベントの前座で当館にいらしたんですが、ギターを忘れて帰られたそうです」
南「いい事件ですね(笑)」

取材・文/稲田豊史

■写真&ひと言コラム:最近は眠りにつく時羊を数えています
映画館からの帰り道は、
ただ歩いているだけなのに
普段の何倍も世界が輝いて見えたり、
たくさんの情報が飛び込んでくる。
あの高揚感が大好き。