第33回東京国際映画祭の特集上映「Japan Now 気鋭の表現者 深田晃司」で上映される「短編プログラム」のQ&Aセッションが11月6日にTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催され、深田晃司、深澤研、ひらたよーこ、兵藤公美が登壇。今年4月に亡くなった俳優、志賀廣太郎の出演作の上映が叶い、深田監督が「『ざくろ屋敷』のメインの声をやっていただいた。(自身が所属した)劇団青年団の大先輩の俳優さん。勝手に、自分のなかで今日この1日が志賀さんの追悼のような気持ちでいた。上映できてうれしい」としみじみと語った。

毎年、日本映画のいまを俯瞰する目的で多くの名監督の作品を特集してきた「Japan Now部門」。今回は『淵に立つ』(16)でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門の審査委員賞を受賞、新作『本気のしるし』がカンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション2020に選出されるなど、いまや日本の映画界を索引する映画監督となった深田晃司監督を特集。「短編プログラム」では、『move / 2020』『ヤルタ会談 オンライン』『鳥(仮)』『いなべ』『ざくろ屋敷 バルザック「人間喜劇」より』の短編6本が上映された。また特集上映の一つとして上映される『東京人間喜劇』にも志賀が出演している。

深田監督は「『ざくろ屋敷』は25歳の時に、深澤くんとほぼ2人で作った。今年、コロナの自粛期間になってリモートで作った『ヤルタ会談 オンライン』『move / 2020』まで通して観てみると、すべて作風は違うけれど、自分のやっていることは変わらないのかなと思った」と発見もあった様子。

コロナ禍で作った『move / 2020』に出演した兵藤は、「コロナで自粛が始まったころ、舞台の仕事も上半期はなくなった。なにも表現することが止まってしまったなと思った時に、深田さんから『この状況を見つめている、受け止めているという作品をやってみたい』と連絡があった」とオファー時を述懐。

「いつも100人の人がいたら、100通りに見え方に分かれるようにしたいと思っている」と映画と向き合ううえでのモットーを明かした深田監督は、「コロナに負けずに頑張ろう、乗り越えていこうという作品もすばらしいけれど、そういう作品はたくさんあった。そうではないものを作ろうと思った」と告白。

「コロナの中で価値観の崩壊が起きてしまった人も多いと思う。これまでみんな、仕事や恋愛、家族を生きるよすがにして、なんとか生きてきた。人が生きる意味があるのかっていうと、たぶん自分はないと思っている。でも意味がないと思うのは辛いから、みんなそういうものを生きがいにして生きてきた」と持論を展開し、「それが突然、友達にも恋人にも会えない。仕事も不要普及だと言われてできなくなる状況になった。そういう悲しみみたいなものを抱えている人もいる。そういう時に、頑張ろうというのではなく、ただ悲しみに寄り添うようなことができないかと考えていた」と映画の力について語っていた。

取材・文/成田おり枝