人気ドラマ「カルテット」などの人気脚本家、坂元裕二によるオリジナル脚本を映画化した『花束みたいな恋をした』(公開中)で、菅田将暉とW主演を務めた有村架純。有村は、恋人役を演じた菅田について「絶対に人を否定しないし、むしろ人のいいところをどんどん見つけていく人」と、その人となりに心を動かされたとか。そんな有村が、菅田との共演秘話や脚本の魅力、自身の恋愛観について語ってくれた。

終電を逃したことがきっかけで出会った、大学生の山音麦(菅田)と八谷絹(有村)。話してみると、自分の好きな音楽や映画など、趣味嗜好が奇跡的なほど合っていた2人は、すんなりと恋に落ちる。2人は多摩川沿いのマンションで同棲を始め、拾ったネコにバロンと名付け、仲良く暮らしていくが、やがて就職活動を経て就職すると、仕事への価値観などの違いを感じていく。そんな2人の5年間が、時代の風物詩と共に綴られる。

これまで『ナラタージュ』(17)やドラマ「中学聖日記」など、数多くのラブストーリーに出演してきた有村だが、「2人が付き合い始めてからの物語を演じるのは初めてでした」と、絹役をかなり新鮮に演じられたそう。

「これまでの作品では、好きになった人と会えなかったり、相手が先生だったり、生徒だったりと、なにかしらの壁がありました。こんなにもスムーズに恋愛をする役を演じたことがなかったので、どう演じたらちゃんと付き合っている2人に見えるのかと考えてしまいました。でも、菅田くんのおかげで、肩肘張らずに自然体で演じられたし、勉強になることもいっぱいありました」。

さらに「恋愛は、ちょっとしたことで崩れてしまうものだけど、人と分かり合えたり、認め合えたりする存在がいるだけで、こんなにも心強い支えになるのかと感じました。それは友達でも恋人でもいいんですが、人とのつながりは脆くて愛おしいというか、脆いからこそ尊くてまぶしいものなんだなと、今回思いました」と述懐。

■「なぜ菅田くんは人望が厚いのかがわかったような気がします」

相手役を務めた菅田について有村は「菅田くんとこんなにしっかりと一緒にお芝居をさせてもらったのは初めてでしたが、なぜ彼は人望が厚いのかがわかったような気がします」と言う。
「菅田くんは人に接する時、いつもその人のすべてを認め、受け入れてくれるんです。だから、菅田くんはみんなに信頼されるし、みんなが彼と仲良くなりたい、一緒に仕事をしたいと思うのかなと。1か月半の撮影で、そういう菅田くんの人間性が見えた気がします」。

本作では恋人役ということで、「菅田くんは、現場での本番以外の時間も、すごく大事にしてくれました」と感謝する。
「1か月半という撮影期間で、恋人たちの5年分を演じなければいけなかったので、そのぶんの距離感や空気感を補うために、撮影の合間も、2人で音楽の話をしたり、絵しりとりをしたりして、他愛もない会話をずっとしていました。菅田くんはすごく絵が上手いというか、絵心があるんです(笑)。そんな雰囲気のなかで本番に向かえたので、ものすごく濃い1か月半を過ごせたし、それを画面に映すことができたかなと。それは、菅田くんとじゃないとできなかった気もします」。

麦の優しさにときめくシーンは数多いが、とりわけ濡れた絹の髪をドライヤーで乾かすシーンは見ていてキュンとする。
「あの時の私は、パーマをかけていて、水に濡れるとよけいにくるくるしていたので、それがほどけないようにと、気にしながら乾かしてくれました。恋が始まるシーンだったから、ドキドキワクワクしたし、本作では夜のシーンが多く、夜中の2時3時まで撮影する日もあったので、そういう非日常を過ごすのも楽しかったです」。

坂元作品に出演するのは、連続ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」以来となった。有村は撮影前に「この作品は坂元さんにとって、どんな作品ですか?」と直接尋ねた時、「日記のような作品です。麦と絹は、ある意味、出会ってしまったことは悲しい運命だったのかもしれない」と言われたのがとても印象に残っているそうだ。

「坂元さんがラブストーリーを書く際に気をつけているのは、わかりやすいシチュエーションや設定に頼らないことだとか。そうじゃない方向で闘うために物語を考えるし、課題を持ってやっているとおっしゃっていて、そこは自分も大いにうなずけるところがありました。私もどちらかというと、近年はわかりやすい設定を持つキャラクターよりは、等身大と言うか、自分の周りにもいそうなキャラクターを演じてきたので。だからこそすごく難しいけど、私自身もそこで勝負をしたいなと、改めて思いました」。

坂元が描く台詞の魅力については「普段、口では言わないようなことが、言葉になっている台詞もたくさんありますが、本当に呼吸をするように自然と自分のなかに入ってくるし、咀嚼できる部分もいっぱいあります。それは、坂本さんならではの着眼点で、目立たない人を主人公にすることで、より身近に感じられる気がします」と言う有村。


例えば、横断歩道で、信号が赤になっている間に、2人がキスをするシーンがとてもエモーショナルだ。
「まさか横断歩道で、押しボタン式信号に感謝する時が来るなんて、思わないですよね。普通だったらスルーしがちだけど、坂元さんは、みんなが流してしまうような小さい出来事もちゃんと脚本に入れるんです。あのシーンは、すごくユニークで、本当にチャーミングなシーンになりました」。

■「悩む時期も楽しまなきゃいけないし、闘い続けないといけない」

有村自身の恋愛観についても斬り込んでみると「麦と絹のように、趣味が共通してなくてもいいんですが、私は嫌なことは嫌だと言います。例えば嘘をつかれることは嫌だとか、そういうことです」とキッパリ言う。

「また、人って少なからず承認欲求があるので、自分が『こう思う』ということに対して『わかるわかる』と言ってもらえると、その言葉だけでもほっとします。麦と絹はそれがカルチャーだったけど、好きなスポーツや音楽などの話が盛り上がり、恋愛に発展することは、きっと日常でもありふれていると思うので、本作は、誰もが共感できるラブストーリーかなと思います」と、演じた役柄にもシンパシーを感じた様子。

「たとえ辛い恋愛だったとしても、時間が経てば自分のなかで勝手に美化されるのかなと。なぜなら、自分を形成している一部分になっていくので、無下にはできないはずだから。だって、自分の感情が豊かになるのは、恋愛くらいじゃないですか。泣いたり笑ったり嫉妬したりは、もちろん友達にも抱く感情かもしれないけど、やっぱり恋愛でしか感じられない人間味が出るし、それが恋愛の醍醐味かなとも思います」。

有村は、現在27歳で、菅田と同い年だ。
「菅田くんは、次の時代を作っていかなきゃいけないという意識がすごく高いし、なおかつ自分の想いを行動で実態として表すこともできる方です。きっと自分も含め、20代前半ののころは『自分はこういうことを目指したい』という目標があったと思いますが、それを菅田くんが先陣を切って体現してくれることで、自分たちも勇気をもらえますし、尊敬もしてます。自分もそうやって、次の世代の方たちのために、また、先輩たちが作ってきてくれたものを壊さないためにも、ちゃんと結果を残していかなきゃいけないなとも思います」と気を引き締める。

「いまは忙しくさせていただいていた時期から少し落ち着いて、じっくりと仕事に向き合う時間が増えたので、今後どういう方向でやっていこうか悩む時期なのかなと。もちろん悩む時期も楽しまなきゃいけないし、闘い続けないといけないんですが、そこで諦めないという想いが大切です。いまやっていることが、いつ実りを迎えるのかわからなくっても、とにかくやり続けるしかない。あとは自分の感覚を信じて、選択をしていく感じです」。

取材・文/山崎伸子