『町田くんの世界』(19)、『生きちゃった』(20)の石井裕也監督による最新作『茜色に焼かれる』が5月21日(金)より公開されることが決定。『ヤクザと家族 The Family』(公開中) に出演中の尾野真千子が主演を務める同作に、和田庵、片山友希、オダギリジョー、永瀬正敏が出演することがわかった。

本作は、弱者ほど生きにくいこの多難の時代に翻弄される一組の母子を描いた人間賛歌。哀しみと怒りを胸に抱きながらも、我が子へ溢れんばかりの愛を持ち気丈に振る舞う母と、そんな母を気遣い屈辱の日々を耐え忍ぶ中学生の息子が、最後まで絶対に手放すことのなかったものを描きだす。

尾野が演じるのは、逆風を受けながらも前向きに歩もうとする母親の田中良子。また、『ミックス。』(17)にも出演した次世代注目株の和田が良子の13歳の息子である純平、『あの頃。』(公開中)の片山が良子の同僚のケイ、オダギリが交通事故で命を落とす良子の夫の陽一、永瀬が良子とケイを見守る風俗店の店長の中村を演じ、激しくも切ない魂のドラマを紡ぐ。

圧倒的な存在感で良子を体現した尾野は「映画の登場人物達が戦うように私ももがき、あがき、力の限り戦ってみました」とコメントしている。

懸命に生きようとする母子の勇気と美しさに心が揺さぶられる『茜色に焼かれる』。映画が映す“茜色の希望”とは? 尾野の新たな代表作となる、この厳しくも澄みきった人間ドラマに今後も注目したい。

<キャスト・スタッフコメント>

●尾野真千子(田中良子役)

「拝啓皆様いかがお過ごしですか。私は、この度、どうにもやりにくいこの世の中で、映画の登場人物達が戦うように私ももがき、あがき、力の限り戦ってみました。どうぞごらんください」

●和田庵(田中純平役)

「初めて台本を読んだ時、役の重要さにプレッシャーと気合い、そして感謝といういろんな感情が同時にあふれたのを覚えています。主演の尾野さんは、とてもやさしく面白い人で、ほとんどの時間を一緒にいて、本当の親子のように接していたのでクランクアップの時はとても寂しかったです。石井監督は普段はとても気さくで話しやすいお兄さんという感じですが、いざ撮影が始まると怖いくらい集中して別人のようになります。そして監督の良い映画を作りたいという強い想いが現場全体に伝わり、僕も拙いながら『このチームの一員として良い作品を作りたい』と意欲が湧きました。今回、この素晴らしい作品に役者として参加出来たことを僕は誇りに思います。母と子を取り巻く矛盾や理不尽さの中でコントロール出来ない感情に振り回されながら、それでも幸せになりたいと願う親子を描いた作品です。純平を演じて僕自身も精神的に成長出来たと思います。その親子の姿は皆さんにとって、きっと忘れられない作品になると信じています」

●片山友希(ケイ役)

「完成した映画を観ている最中、これで良くなかったら私はやめた方がいいんだろう。縁がなかったんだろう。とふと、思いました。が、そんな事どうでも良くなりました!映画ってかっこいい!映画を作ってる人たちってかっこいい!まだまだ私の熱は冷めません!ここには書ききれない毎日がありました。時間が経って、いまになって監督は私を信じてくれたんだと気づき涙が出ました」

●オダギリジョー(田中陽一役)

「一生懸命に生きることって、なによりも大事だと思う。そして時には、闘うことも必要だ。自分の為にも。大切な人の為にも」

●永瀬正敏(中村役)

「石井裕也監督の世界に触れさせていただきたい…。その想いだけでした。素晴らしい体験、感謝しています」

●石井裕也(監督・脚本・編集)

「とても生きづらさを感じています。率直に言ってとても苦しいです。悩んでいるし、迷っています。明らかに世界全体がボロボロになっているのに、そうではないフリをしていることに疲れ果てています。コロナ禍の2020年夏、しばらく映画はいいやと思っていた矢先、突然どうしても撮りたい映画を思いついてしまいました。

いま、僕がどうしても見たいのは母親についての物語です。人が存在することの最大にして直接の根拠である『母』が、とてつもなくギラギラ輝いている姿を見たいと思いました。我が子へのあふれんばかりの愛を抱えて、圧倒的に力強く笑う母の姿。それはいまここに自分が存在していることを肯定し、勇気づけてくれるのではないかと思いました。

多くの人が虚しさと苦しさを抱えているいま、きれいごとの愛はなんの癒しにもならないと思います。この映画の主人公も、僕たちと同じように傷ついています。そして、理不尽なまでにあらゆるものを奪われていきます。大切な人を失い、お金はもちろん、果ては尊厳までもが奪われていきます。それでもこの主人公が最後の最後まで絶対に手放さないものを描きたいと思いました。それはきっと、この時代の希望と呼べるものだと思います。

これまでは恥ずかしくて避けてきましたが、今回は堂々と愛と希望をテーマにして映画を作りました。と、まあこうやってつらつら書きましたが、尾野真千子さんがその身体と存在の全てを賭して見事に『愛と希望』を体現しています。尾野さんの迫力とエネルギーに心地よく圧倒される映画になっていると思います。尾野さんの芝居に対する真摯な姿勢には心から敬服していますし、ともに映画を作れて、とても幸せに思っております」

文/足立美由紀