「DVD&動画配信でーた」と連動した連載「南沙良、ミニシアターを巡る 彗星のごとく現れる予期せぬトキメキに自由を奪われたいっ」。第8回はユーロスペースさん(後編)。支配人の北條誠人さんとの対談の模様をお届けします!

■「ミニシアター上映作品ならではの良さを表現できるよう、こだわっています」
南「こちらには昨年『はちどり』を観に来て、すごく良かったです!綺麗でオシャレな劇場ですね」
北條 「いえいえ、移転して15年なので建物は古いですし、事務所も冬は寒いですよ(笑)」
南「前は別の場所に?」
北條「はい、同じ渋谷にあるビルの2階でした。ずっと家賃を払い続けて何も残らないのもな…というのがひとつめの移転理由です」
南「2つめは?」
北條「シネコンが増えてきたことです。大きなスクリーンと座りやすい椅子のシネコンが出てくると、前の劇場で戦うのはしんどくて。だからその反省を込めて今の劇場を設計したんですけど、15年も経つとやはり古くなりますね。今はデジタル上映がほとんどですが、移転当時まだデジタルは“ときどき上映”くらいだったので、フィルム上映を想定した設計なんです」
南「何が違うんですか?」
北條「デジタル上映が主眼の劇場に比べて、館内がずっと暗いんです。真っ暗じゃないと、フィルムがもつ情報量を出せないので」
南「そうなんですか!」
北條「それと、普通の映画館はスクリーンの後ろにスピーカーがあるので、スクリーンの表面に小さな穴が開いてるんですけど、うちはフィルムの色合いをちゃんと出せるよう、穴のないスクリーンを採用しています。だからスピーカーは上下に置いてるんですよ」
南「そもそもスクリーンに穴があいてることを知らなかったです。今度、舞台挨拶の時に後ろを振り返って確認してみたい!」
北條「あと、多くの映画館は反射に優れたシルバー・スクリーンですが、うちは白をきちんと表現できるホワイト・スクリーン。スピーカーも、最近の映画館は爆音・轟音重視なんですけど、うちはどちらかというと小さな音を繊細に聴かせる、包み込むような音質が特徴のスピーカーなんですよ」
南「同じ映画でも劇場によって全然違うんですね」
■「やっぱり映画はスクリーンで観たいですよね」
南「上映作品はどう決めてるんですか?」
北條「特定世代の監督や特定ジャンルに偏らないようにしています。とはいえ、渋谷という土地柄、お客さんは若いですね」
南「北條さんは支配人として、30年以上も渋谷の街を見てこられたんですよね」
北條「昔の渋谷は今より猥雑で活気がありました。映画、音楽、アパレル関係の人が、業種をまたいで会っていて。今はそれをあまり感じませんね。あとは映画館に来る学生が減ったかなあ」
南「私の周りでも、比較的映画を観る人ですら配信です。なんでわざわざ映画館に行くの?って」
北條「映画館には“場”への参加意識が高い人が集まるから、自然と集中力も上がるんですよね」
南「分かります。家だと集中力が途切れて、ついスマホに手が…」
北條「『はちどり』を買い付けた方は、最初パソコンで観て普通にいい映画だと思ったそうなんですけと、その後字幕が入ったものをスクリーンで観たら『震えた』とおっしゃっていました」
南「はあー、どうしたらもっと映画館に来てくれるんだろう?」
北條「南さんの周囲の若い方は、シネコンには行くのでは?」
南「私、友達が少ないので…(笑)」
北條「映画好きだと友達が少なくなっちゃうのかなあ(笑)」
取材・文/稲田豊史

■写真&ひと言コラム:最近は胴上げされたい気分です。
数日前から日中に限り春の陽気を感じています。
よく通っている神社で猫さんが
ひなたぼっこを楽しんでいる姿を目撃。
羨ましい。