“金魚すくい”を題材にした大谷紀子の同名コミックを映画化した人間ドラマ『すくってごらん』(公開中)。東京から片田舎に左遷されたエリート銀行員が、金魚すくいや町の人々との出会いを通して成長していく姿が描かれる。そんな本作で、主人公が一目惚れする謎の美女を演じたのが「ももいろクローバーZ」の百田夏菜子。ミステリアスな魅力を振りまく彼女を中心に本作を紹介する。

大手メガバンクのエリート銀行員である香芝誠(尾上松也)は、些細な出来事がきっかけで左遷され、荒んだ気持ちで東京本店から片田舎の町へとやって来た。そこで偶然かつ運命的に、金魚すくいの店を営む美女、吉乃(百田)と出会い、一目惚れしてしまう。なんとかお近づきになろうと金魚すくいにも挑戦するが、彼女はある秘密を抱えており、心を閉ざしてしまっていた。はたして、香芝は金魚のように吉乃の心を“すくう”ことができるのか?

■俳優、声優としても幅広く活躍する百田夏菜子
ヒロインの吉乃を演じる百田と言えば、国民的ガールズユニット「ももいろクローバーZ」のリーダーとしての活躍はもちろん、俳優業でも『幕が上がる』(15)やNHKの朝ドラ「べっぴんさん」などに出演。テレビアニメ「おジャ魔女どれみ」シリーズの放送20周年を記念して制作された『魔女見習いをさがして』(20)では、メインキャラクターの声優に抜擢され、ダメ彼氏に振り回されながらも自分の道を生きようとする女性を等身大で演じたことも記憶に新しい。声優としては、『ブラックパンサー』(18)や『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18)で、ブラックパンサーの妹シュリ(レティーシャ・ライト)の日本語吹替版キャストを務めた。

■憂いを帯びたヒロインを繊細に表現
百田にとって実写映画で初めてのヒロイン役となる本作では、これまでのヒロイックで元気いっぱいなイメージから一転して、色鮮やかな浴衣を着こなす、少し憂いを帯びたキャラクターに扮している。店の暖簾から顔を覗かせ、香芝に「おにいさんこっち。ゆっくり遊んでいってくださいね」とほほ笑む姿は妖艶さもあり、彼が一目で心を奪われてしまうのも納得の存在感だ。

一方で、金魚すくいのコツを教えるなど香芝に親切に接する吉乃だが、つかみどころがなく、距離を縮めようとする彼をひらりひらりとまるで金魚のようにかわしていく。彼女には秘めた想いを寄せる相手がいるようで、どこか遠くを見ているような佇まいも印象的。そんな彼女を百田は、所作の美しさはもちろん、笑顔の奥にある寂しさや押し殺した感情を、目や表情のわずかな動きで繊細に表現している。

■ピアノの弾き語りに、大人な雰囲気の歌声も披露

また、本作はミュージカル調になっており、和製『ラ・ラ・ランド』(16)を思わせる(?)ような尾上松也とのデュエットを披露するほか、ピアノの弾き語りにも挑戦。本格的なピアノの経験がなかった百田は、一からレッスンを受けることに。その上達ぶりは目を見張るものだったようで、劇中の演奏シーンの音声は元々プロの演奏に差し替える予定だったのが、彼女自身のレコーディングに変更されたのだとか。さらに、主題歌「赤い幻夜」の歌唱も吉乃として担当しており、「ももいろクローバーZ」とは異なる、大人な雰囲気の歌声を堪能することができる。

演技だけでなく、ピアノや歌など、百田の魅力が存分に詰まった『すくってごらん』。本作を観れば、彼女のこれからの活躍にますます期待を感じること間違いなしだ!

文/サンクレイオ翼