岡田准一演じる伝説の殺し屋ファブルが、再びスクリーンに登場。シリーズ第二弾となる『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』(6月18日公開)での岡田は、主演だけではなく、自らアクションを組み立てる“ファイトコレオグラファー”も務め、目をみはるような規格外のアクションで観る者の度肝を抜く。並々ならぬ想いで本作に参加し、前作超えの高みを目指した岡田が、座長としての胸の内を明かしてくれた。

どんな相⼿も6秒以内に仕留めるという殺し屋ファブルだが、ボス(佐藤浩市)から「1年間、誰も殺すな。⼀般⼈として普通に⽣きろ」という命を受け、佐藤アキラという偽名で、穏やかな生活を送っていた。そんななか、表向きは⼦どもを守るNPO代表だが、裏では金儲けのために若者を殺している男、宇津帆(堤真⼀)が、過去のある事件で因縁を持つファブルの行方を探していた。

原作は南勝久の人気コミックで、監督も前作から江口カンが続投した。興行収入17.7億円のヒットとなった前作について、岡田は「興行的には成功しましたが、アクションについてはいろいろな反省点もありました。前作よりももっとすごいものを作らないと今作の成功はない。だから前作を改良材料として捉えるところからスタートしました」と襟を正す。
「僕の夢は、日本から世界に売れるエンタテインメントを作ること。自分はサブカルではなく、王道のド真ん中にあるエンタメを背負う者として、もしもシリーズ化を目指すのであれば、夢への1歩、2歩を踏み出せるような作品にしなければいけないという責任感を感じていました」。

特に岡田は、アクション映画という分野に対して特別な思い入れがある。「自分が闘える場所はいつも探していますが、自分はアクションに関してはできると思っていただけていますし、信頼もしていただいているので、そこではできるだけのことをしたい。ギリギリできるかどうかの舵を自分が握っているので、普通なら危なくてさせられないというアクションも『岡田ができると言っているならやろう』と承諾してもらえる。そこに挑戦できることが、自分にとっての幸せなので、常にそこを目指しています」。

■「自分のクレイジーさが、スタッフの方々にも伝染していきます」
前作では、フランス人のアラン・フィグラルズが、メインのファイトコレオグラファーを務めていて、岡田は一部のアクションを手掛けていたが、今回の岡田はその重責を1人で担い、アクション監督の横山誠と共にディスカッションを重ねて、様々なチャレンジを試みた。

「アクションは、労力がいる割にすごいものを撮るのが難しく、『その日にできることをやってほしい』といったオーダーでやれることは、たかが知れています。だから今回はしっかりと準備をし、安全性を測ったうえで、いろいろな動きが検証できる横山さんにアクション監督として参加していただきました。動きや構成は、江口監督を含め、若いアクションチームで作っていったんです」。

なかには、アクション通がうなるようなマニアックな技も登場する。「僕にとっては師匠の1人であるブラジリアン柔術の橋本(知之)さんが参加してくださって、まだ世界のアクション作品では誰もやってないであろう技を披露してくれました。そういうコアなアクションもあれば、西洋の構成で撮ったわかりやすい殺陣もあります」。

岡田は、日本でアクション映画を撮ることの難しさついて「予算や撮影の仕方だけではなく、道路交通法違反でできないことなど、問題は山ほどあります」と述べつつ「今回は僕自身、少しクレイジーになっていた気がします。これまでの現場を振り返っても、自分ががむしゃらにやれる時は、ある種の狂気をはらんでいたのではないかと。そのクレイジーさは、スタッフの方々にも伝染していくので、今回は通常ならできないこともできた気がします」と手応えも感じた様子。

「例えば『こんな画、撮れませんか?』と言ったら、天井に綱を引いて、そこを走らせるというワイヤーカムを使ってくださいました。それはスポーツの中継でしか見たことがなかったし、『撮影費がすごくかかるので、難しい』という声も出たんです。でも、どうせ作るのなら、いい作品にしたい。僕は25年以上この仕事をしていますが、自分がいかに闘えたかというところに価値を見いだし、それが自分のキャリアになった気もします」。

■「本作のキーパーソンを堤真一さんに演じてもらうということで、すごく安心感がありました」

今回、宇津帆役を、「SP」シリーズなどで共演してきた堤真一が演じているが「『ザ・ファブル』で大事なのは敵役なので、そのキーパーソンを堤真一さんに演じてもらうということで、すごく安心感がありました。今回の“宇津帆編”は、佐藤の変化も含めて大事なエピソードだし、宇津帆を、堤さんがどう演じてくれるのかも楽しみでした」と全幅の信頼感を口にする。

宇津帆と暮らす、足の不自由な少女、佐羽ヒナコ役には平手友梨奈がキャスティングされた。
「平手さんはアイドルとして“天才”と評されてきた方で、すごくのめり込む方なんだろうなとは思っていましたが、共演してみたら、いいものを作ることで満たされる方だと感じました。人気が欲しいといった意識では動いていないですし、でもネガティブで、すぐに顔を隠そうとするから『顔を隠しちゃダメ』といじっていましたが、可愛らしくて魅力的な方でした。本作で、僕は浮世離れしたファブル役でアクションシーンを頑張りましたが、いわば堤さんと平手さんが主軸の物語でもあるので、そこが見どころになるんじゃないかと」。
共演者とオフショットでのエピソードについて尋ねると「コロナ禍での撮影だったので、ご飯なども全然一緒に行けなかったです」と残念そうに語る。

「途中で緊急事態宣言が出て、一時期、撮影が中断しました。皆さんそれぞれに、エンタメをどうすればいいのかとか、自分たちが映画を撮る意義はなんなのか、いろんなことを考えたと思います。だからこそ、エンタメで誰かが笑ってくれて、少しでもいい時間を過ごしてもらえたらいいなと思いながら、現場に臨みました。今回は特に、皆さんの心に届くものを作りたいという想いが強かったと思います」。

取材・文/山崎伸子