映画制作の裏側を通して、映画を愛する人々の情熱を描き出す杉谷庄吾【人間プラモ】の同名コミックをアニメーション映画化した『映画大好きポンポさん』(公開中)。映画監督を志すジーン役に清水尋也、女優になることを夢見るナタリー役に、大谷凜香が抜てきされた。「20歳の年にアフレコに臨んだ」と声を揃える同い年の彼らだが、“ものづくり”に喜びを見いだしていく役柄に身を投じ、俳優業に向かううえで「大きな力をもらった」と告白する。一体感のある現場を振り返ってもらうと共に、本作から受けた刺激や、好きな映画まで、たっぷりと語り合ってもらった。

主人公となるのは、敏腕映画プロデューサー、ポンポさんのもとで製作アシスタントをしている青年ジーン(清水)。映画を撮ることに憧れつつも、自分には無理だと卑屈になっていたジーンが、ポンポさん(小原好美)に才能を見いだされ、映画監督に大抜てき。新人女優のナタリー(大谷)をヒロインに迎えて、映画撮影に挑む姿を描く。監督と脚本は平尾隆之が務めた。

■「夢が一つ叶いました」(清水)

――主人公のジーン役を演じた清水さんは、オーディションを経て、声優業に初挑戦を果たしました。ジーン役を射止めた感想はいかがなものでしたか。

清水「声優業は、技術を持ったプロの方々がやられているものなので、同じ映像業界に携わっているとはいえ、うかつに『声の仕事をやりたい』と言えるものではないと思っていました。でも僕、実は小さなころからアニメが大好きで。中学生くらいから深夜アニメも観ていました。だからこそずっと声の仕事に憧れがあって、これまでにもオーディションを受けさせてもらっていたんですが、なかなかうまくいかず…。なので、今回ジーン役に選んでいただけたことは、自分のなかでは『夢が一つ叶った』というくらいうれしい出来事でした。もちろんプレッシャーも感じましたが、ポンポさん役の小原さんたちと共演できると思うと、異次元のような感覚もあって(笑)。受け止めきれないくらいのうれしさでした」

――大谷さんも、オーディションでナタリー役に選ばれましたね。

大谷「原作を隅から隅まで読んで、オーディションに向かいました。当日は、オーディション会場にものすごく早く到着してしまって。前の人よりも先に、私が会場に着いてしまっていたので、スタッフさんから『先にやっちゃおう』と言われたんです。ゆっくりと緊張をほぐしてからブースに入ろうと思っていたので、ものすごく焦りました(笑)。いざセリフを話すとなったら、緊張しすぎて声がうまく出なくなってしまって、オーディションの帰り道は『もっとゆっくり会場に行けばよかった…』と落ち込んでいたんです。でも私は、原作を読んだ時にナタリーと自分がとても重なったので、『ナタリー役をやりたい』という想いを秘めながら、結果を待っていました。選んでいただけて本当にうれしかったですし、もしほかの方がナタリーをやるとなっていたら、嫉妬して映画を観られなくなってしまっていたかもしれません」

■「清水くんの強さやまっすぐな情熱が、ジーンと重なった」(大谷)

――そういった大谷さんの姿は、劇中のオーディションで初々しさを見せるナタリーと重なる気がします。ジーンもナタリーも映画に恋をして、無我夢中で突き進んでいる2人ですが、俳優として活躍する清水さん、大谷さんにとっても共感することの多いキャラクターでしたか。

清水「僕は中学生のころからこの仕事をしているんですが、そうすると“本来みんなが通るべき青春を過ごせない”という部分もありました。ジーンも学生時代から、青春のすべてを映画に捧げていたようなキャラクター。友だちもいないけれど、『僕には観たい映画がたくさんあるんだ』という好きなことへの情熱を持って生きている人です。僕もみんなと同じ青春は過ごせなかったとしても、『自分のやりたいことを成し遂げるためには、犠牲にすべきものがあるんだ』と思っているようなところがあると思います。また一つのことに集中すると、周りが見えなくなってしまうようなところも、ジーンと似ているかもしれません。ジーンが狂気とも言えるくらい、おかしいほどに映画づくりに熱中してしまうところは、ものすごく共感するものがありました」

――大谷さんから見ても、清水さんとジーンの共通点を感じますか?

大谷「私は以前、映画『ミスミソウ』で清水くんと共演したことがあるんですが、清水くんは録音部さんや美術さんなど、プロの職人さんたちとコミュニケーションをたくさん取る方なんです。そんな姿を見て、私は『清水くんは、クリエイター気質の方だな』と感じていました。だからこそ、ジーン役を演じるのが清水くんだと聞いた時、ぴったりだなと思いました。また、いまの話を聞いても、清水くんには“なにかを突き詰めようとする強さ”があるなと感じます。ジーンは、好きな世界に集中している時に爆発劇なエネルギーを発揮するキャラクターですが、アフレコで清水くんとご一緒していても、清水くんの強さやまっすぐな情熱が、ジーンととても重なりました。また私自身は、原作を読んだ時から、女優を夢見るナタリーにものすごく共感していました」

清水「僕も、大谷さんとナタリーには共通する部分があるなと感じています。“女優を目指している女の子”という状況はもちろん、まずナタリーの“発信する力”というものが、大谷さんと重なります。ジーンが、たくさんインプットして、自分のなかに正解を作っていく人だとすると、ナタリーは、外に向かってバーンと発信していくタイプの人。何度オーディションに失敗しても、常に前を向いている、“前進する力”のある人でもあります。アフレコでは、僕ら2人はNGを出してしまったり、何度もやり直しをさせてもらったりもしました。大谷さんはそういった時も常に前を向いていたし、大谷さんの演じるナタリーの声にどんどん力がこもっていくのが、僕にもわかりました。劇中のナタリーの成長と、大谷さんの姿がぴったりとシンクロしていたんです。ポンポさん役の小原さんからも『こうしてみるといいかも』『いまのすごくよかったよ』など言葉をいただきながら、僕ら2人にもすごくいい変化が生まれていったんじゃないかなと思っています」

大谷「小原さんには、本当にものすごく支えていただいたよね!」

清水「小原さんが最初に『一緒に頑張りましょう』と言ってくださったことで、まず僕らは救われたよね。ものすごく引っ張っていただいた。僕にとって初めての声優業が本作の現場だったことは、本当に恵まれているなと思います」

■「“20歳の覚悟”ができた」(清水&大谷)

――お二人のお話からも、一体感のあるいい現場だったことが伝わります。映画づくりに込められた愛や、情熱を描く物語となりますが、お二人が本作からもらった刺激や力などがあれば、教えてください。

清水「僕が本作のアフレコをやらせていただいたのが、20歳の時でした。20歳ってやっぱり、一つの節目になる年齢ですよね。いろいろなものを犠牲にしながら、映画づくりと向き合うジーンを見て改めて、僕は『この仕事をやるうえでは、自分のプライベートも捧げる必要がある。それでもやっていきたい』と実感することができました。“20歳の覚悟”という意味でも、本作との出会いはとても大きなものだったと思います」

大谷「私も清水くんと同い年で、20歳の年に本作のアフレコがあって。私にとっても、その出会いはかなり大きなものでした。私は、芸能のお仕事を中学生くらいから始めて。中学、高校生時代は、学生生活もお仕事もうまくバランスをとってやっていましたが、一方では『このお仕事だけで生きていく』という覚悟ができず、怖気付いていた部分がありました。でも、周囲から『無理だ』と笑われても、小さなころに見た女優という夢を諦めずに挑戦し続けているナタリーを見て、私のなかで怖気付いていたものが取っ払われた。『このお仕事で生きていくことを、自分の夢にしたい』と強く思ったんです。18、19歳は『どんな道に進むのか』とかなり悩んでいたのですが、20歳でこの作品と出会って、スッキリしたんです!」

清水「おお、すごい!転機だ!」

大谷「ね!ナタリーは失敗を繰り返しながら、女優の道を進んでいる。私もこの先、失敗もたくさんするだろうけれど、とにかく進み続けることが大事だなと思っています。清水くんは、その覚悟を中学生の時にできたんだから、本当にすごいと思う!」

清水「『失うものがなにもない』と感じていたからかもしれないなあ。今回改めて、このお仕事にはもっともっと突き詰めていくべきものがあるなと実感しましたし、声優さんのお芝居を肌で体感して、いつもは映画やドラマで芝居をしている僕たちも、負けていられないなと思った。本作から、ものすごく大きな力をもらいました」

■「僕を、私を救ってくれた映画は…」(清水&大谷)

――観た後に、好きな映画について語りたくなるような作品でもあります。お二人にとって、「この時、この映画を観て救われたな」と思うような作品を教えてください。

清水「ジム・キャリーの『トゥルーマン・ショー』です。普通に生活していたつもりが、実はそのすべてがリアリティ番組として放送されていた…という物語なのですが、ちょうどいろいろと悩んでいる時にあの映画を観て、『自分の人生の主人公は、自分でしかないんだな』と思ったのを覚えています。なにを決めるにしても、自分の意志で決定するべき。もし誰かの意見に従って物事を決めて、それが失敗したとしたら、その人のせいしてしまうかもしれない。そういうことは、絶対にしたくない。選択を大事にして、やりたいことや進みたい方向を目で見て、しっかりと考えていきたいです。『自分の人生は、自分にしか背負うことはできないんだな』と感じています」

大谷「私は、『映画大好きポンポさん』です(笑)」

清水「あはは!いいね、それ。でも本当にそうだもんね」

大谷「そうなの!小学生のころとか、『将来の夢は?』と聞かれたりしますよね。いまの子どもたちはもしかしたら、触れられるものや情報が多すぎて、現実的な夢を答える子も多いのかもしれません。でもこの映画を観ると、純粋に夢を追いかけることのすばらしさを感じてもらえると思います。私がそうだったように、迷っている時に背中を押してくれる映画だとも思いますし、好きなことを突き詰めようとすることが、どれほど人生を豊かにすることなのかを実感できる。大好きな映画です」

取材・文/成田おり枝