MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今週は、青森を舞台に市井の人々を描く人間ドラマ、台湾発の風変りでハートウォーミングなラブストーリー、是枝裕和監督に師事した女優・小川沙良の初監督作の、みずみずしくて心にじんわり残る3本!

■突飛な奇想を“異次元の趣向”でもってヴィジュアル化!…『1秒先の彼女』(公開中)

原題は『消失的情人節』。ここからも分かるように、何かが突然消えてしまうのだ。具体的に言えば「とある1日」が。さらに主人公として、なぜか“タイム感”の違う男女ふたり(人より行動がワンテンポ遅いバスの運転手と、逆にワンテンポ早くなってしまうヒロイン)を投入。これはもう、ギミック満載のラノベ風ファンタジー路線を驀進するのかと思いきや、そこは台湾映画界の傑士にしてヒットメーカーのチェン・ユーシュン監督、想像の斜め上…いや、“異次元の趣向”でもって突飛な奇想をヴィジュアル化して見せてくれる。かつてのエヴァーグリーンな『熱帯魚』(95)、『ラブ ゴーゴー』(97)の匂いも感じさせつつ、ゲスな世の中が消し去ってしまったものを問いかける姿勢がとても健気。主演のリー・ペイユーのキュートさ、相手役のリウ・グァンティンの純真さも含め、全身でぎゅっと抱きしめたくなる珠玉作だ。(ライター・轟夕起夫)

■奇才・横浜聡子による青春ムービーの傑作!…『いとみち』(公開中)

強い津軽訛りと人見知りのせいで他人に心を開けなかった16歳の女子高生いとが、バイト先のメイドカフェで得意の三味線を披露して自分を変える!! オール青森ロケの本作は、青森出身の奇才・横浜聡子監督にしか撮れなかった、彼女だから撮ることのできた観る者を元気にする青春ムービーの傑作だ。青森の風土、そこで暮らす地方の人たちならではの価値観や考え方もリアルに伝わるし、父親と娘のぎこちない関係性も生っぽくていい(不器用な父親を演じた豊川悦司がまた最高!)。これまでの横浜監督の作品は、07年の初長編『ジャーマン+雨』から『俳優 亀岡拓次』(16)までぶっ飛んだ展開とタッチが魅力だったけれど、そのノリについていけない人もいた。それは否めない。でも、今回は彼女のポップなテイストとリアリティの塩梅も絶妙。そして何よりも、津軽三味線を猛特訓して自分のものにした新星・駒井蓮の魅力が爆発しているのがたまらない。ヒロインの祖母を演じた津軽三味線の名手、西川洋子と三味線で堂々とセッションをするシーンでは、とんでもない輝きを放つ彼女から目が離せなくなる。(ライター・イソガイマサト)

■人生に踏み出そうとする女の子の揺れと決意…『海辺の金魚』(公開中)

注目は、監督を務めた小川沙良の若き才能。朝ドラ「まんぷく」でヒロインの長女・幸を演じて注目された女優でもある彼女が、オリジナル脚本も手掛けた初長編劇映画で、人生に踏み出そうとする女の子の揺れと決意をしっかり捉えている。
舞台は、鹿児島県阿久根市にある、ある児童養護施設。小学生の時に母親が事件を起こし、以来、そこで暮らしてきた高校3年生の花(小川未祐)は18歳。規定通り、退所する日が近づいている。そんなある日、誰とも口をきこうとしない8歳の少女・晴海が入所してくる。
かつての自分を見るようだからなのか、必死で寄り添おうとする花のおかげで心を開き始める晴海。18歳と8歳の女の子2人の交流を軸に、花が母親に対する葛藤や生きづらさを乗り越え、一歩踏み出そうとする姿が、時にドキュメンタリーのようなリアルさで映し出される。『誰も知らない』をはじめ是枝裕和作品で撮影監督を務めて来た大ベテラン、山崎裕の力も大きい。だが、何を語り語らざるべきか自制を効かせて絞り込んだ語り口で、“感じさせる”ことに成功した手腕は見事。タイトルの暗喩も効いている。(映画ライター・折田千鶴子)

週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!なお、緊急事態宣言下にある都道府県の劇場の一部では引き続き臨時休業を案内している。各劇場の状況を確認のうえ、足を運んでほしい。

構成/サンクレイオ翼