『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜 ファイナル』(8月20日(金)公開)や、中川大志主演の日曜ドラマ「ボクの殺意が恋をした」(7月4日スタート)の脚本家・徳永友一が初めて手掛けるオリジナル小説を、「DVD&動画配信でーた WEB」で特別連載!
脚本家を目指す中年男・吉野純一、若手脚本家として闘う男・宮間竜介、2人を巧みに操る男・滝口康平、3人の男のリアリティドラマが始まる。滝口は従順だった宮間から驚きの決断を聞かされる。このままだと企画が全て崩れてしまう。焦った滝口は、吉野を使って軌道修正を試みるが…。

■第12回「予想だにしない決断 滝口編」

 俺と宮間は本社内にあるカフェに来ていた。

「すみません。今回の仕事降ろさせて下さい」

「お前、それ本気で言ってんのか?」

「はい……」

 宮間はか細い声でそう返事をすると俯いたまま黙りこんだ。「映画化前提の連続ドラマはやりたくないのか?」

「やりたいです……。でも、これ以上吉野さんのサポートは出来ないっていうか」

「今日一話の完パケが出来たばかりだ。明日からネットで始まるんだぞ?お前、番組潰す気か?」

「すみません……」

「ふざけるな。最後までやれ」

「すみません。出来ません……」

 おかしい。いつもの宮間なら多少強めに恫喝すれば、すぐ言うことを聞いてきたが今回はやけに頑なだ。

「そうか。わかった。じゃあ、この企画は他の脚本家に振っていいってことだな」

 そう言うと、俺は映画化ありきの連続ドラマの企画書を見せた。宮間の顔色が変わる。自分がやるはずだった作品を誰かに取られることを脚本家は嫌がる。大型案件であれば尚更だ。

「どうした?それでいいんだろ?」

「……はい。今回は降ります」

「おい?」

「本当にすみません。失礼します」

 立ち去ろうとする宮間を慌てて呼び止める。

「ちょっと待て。何があったんだ?理由を言え」

「自分のプライドの問題です」

 そう言うと宮間は立ち去って行った。信じられない。言いなりだと思っていた宮間が俺の仕事を断るなんて。あいつに二度と仕事を振ってやるもんか!宮間に対して怒りが湧き出てくるが、このまま宮間を逃がすわけにはいかない。ましてや、ここで宮間が降りたことが局内に広まり、10月クールの連ドラの脚本家として引き上げられたら終わりだ。どうにかしなければ……。その時、ふと新たな展開が頭をよぎる。そうか、これも全部“リアリティショー”にすればいいのか。

「宮間先生が?」

「はい。この企画から降りるって言い出して来たんです」

「そうですか……」

 六本木のカフェでおっさんと会っていた。調子に乗っているおっさんのトーンを下げて、一度宮間に頭を下げさせなければ。もちろん、その姿も撮影する。

「ちょうど良かったです」

「え?」

「実は僕も宮間先生が相手だとやり辛いと思っていまして……。できれば、一人でやりたいなって」

「いや、吉野さんはまだデビューもしてない新人だし、サポートがいた方がいいと思いますよ」

「必要ないですよ。もう頭の中で物語が出来てるんで」
 
 何を言ってるんだ!?このおっさん。

「あの人、僕に嫉妬してるんですよ。この先一緒に話考えていったとしても、僕の才能潰すような発言しかしないと思います」

「そんなことないですよ。宮間はもうプロとして何作もやってるんです。力だってあるし、いた方が絶対プラスになりますよ」

「そうだとしても、僕は一人でやりたいです」

 おい、どうすりゃいいんだ。少しは現実を教えてやる。

「吉野さんが書いてくれたプロット。発想はとても気に入ってるし好きなんだけど、宮間が言う通り、あのままでは予算が足りなくて形には出来ないんですよ」

「そうなんですか?」

「『ストレンジャー・シングス』的な展開や、『ウォーキング・デッド』的な展開も金がかかりすぎます」

「そうですかね……」

 そうですかね……じゃないだろ。バカなのか!?

「あ、だったら僕が書いたプロットで、クラウドファンディングやってみたらどうでしょうか?」

 ダメだ……。全く話が通じない。仕事を投げ出した宮間の気持ちがわかる気がした。このままでは俺の企画が崩壊する。

「吉野さん、この後のスケジュールってどうなってますか?」

「え?」

「他に何か脚本の仕事が?」

「いや、それはまだ……」

「あ、良かった。だったら、この企画に興味ないですかね?」

 そう言うと、宮間にも見せた連続ドラマの企画書を見せる。

「え?これを僕がですか……!?」

「まだ脚本家決めてなくて。吉野さんの脚本見て、いけそうだったら是非トライしてもらいたいなとは思ってるんですけどね」

「頑張ります!やらせて下さい!」

「でも、一つ問題がありまして……。この企画、最初に宮間に声をかけてしまったんですよ」

 一瞬にしておっさんの顔が曇ったのが見て取れる。よほど宮間のことが嫌いになっているようだ。

「宮間と僕は付き合いが長いんです。この大型企画を宮間の生徒である吉野さんに振ったとなれば角が立つ。ましてや、先に声をかけていたとなれば尚更です」

「確かにそれは……」

「だから今回の企画は、宮間を外したくないんです。もしかしたら、僕が宮間と組む最後の仕事になるかもしれない」

「なるほど……。そういうことですね。わかりました。だったら僕うまくやるようにしますよ」

「ありがとうございます。では、宮間と一席設けるのでそこで謝ってもらえたら」

「わかりました」

「それと、この大型企画の件は宮間には内密でお願いしますね」

「もちろんです!」

 何とか言いくるめることができホッと胸を撫で下ろした。あとは頑なになっている宮間をどう呼び出すかだ。
 
(つづく)