超ド級の悪党たちが集結したDCエクステンデッド・ユニバース最新作『ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結』(8月13日公開)が、いよいよこの夏スクリーンに登場する。クレイジーさに磨きがかかった“悪カワ”ハーレイ・クイン、最強スナイパーのブラッドスポート、爆食サメ人間のキング・シャークら終身刑クラスの悪党14人に託されたのは、成功率ほぼ0%のデス・ミッション!どんな困難が待ち受けているのか?そして、彼らは世界を救うことができるのか?

2016年に公開されたデヴィッド・エアー監督版の『スーサイド・スクワッド』とは別の物語として再構築された“新生スースク”の活躍を描く今作。特筆すべきは、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズで絶賛されたジェームズ・ガンが監督することだ。ヒットメーカーとして熱い注目を浴びているガンだが、メジャースタジオで大作を手掛けたのは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(14)が初めて。それまでは一部ファンの間でのみ評価されてきた、知る人ぞ知る存在だった。いったい、ガンはどうやって『ザ・スーサイド・スクワッド』にたどり着いたのか?彼が手掛けた作品の魅力と共にその道のりを振り返りたい。

■オタク気質でウルトラマン、仮面ライダーなど日本カルチャーにも精通

1966年生まれのガンは、映画やアニメ、コミックブックが大好きな、いわゆるオタク少年。ホラー映画好きが高じて、10代からゾンビものの自主映画作りを開始した。コロンビア大学に在学中、知人の紹介で脚本家としてのキャリアをスタートさせ、いくつかの作品での経験を積んだあと、メジャースタジオ作品で人気アニメの実写化『スクービー・ドゥー』(02)の脚本家に抜擢される。探偵チームが怪奇事件に挑む本作は、言葉をしゃべる犬と個性豊かな若者たちの活躍を描いた推理コメディ。映画は大ヒットし続編も手掛けたことで、ガンの名はハリウッド中に広まることとなった。次なる脚本作『ドーン・オブ・ザ・デッド』(04)は、ゾンビ映画の最高傑作として名高い『ゾンビ』(77)のリメイク。ガンはのちにこのジャンルに定着する“走るゾンビ”の誕生に携わった。

なお、ゾンビ映画に目がないガンは、2010年代最高の映画として上田慎一郎監督作『カメラを止めるな!』(17)を挙げている。さらに2014年に東京国際映画祭の審査員長として来日した際に撮影したウルトラマンとバルタン星人との3ショット写真や、『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』(18)の英語字幕版配信の際に仮面ライダーへの愛をツイートするなど、特撮をはじめとする日本のカルチャーに精通。そういった側面も彼自身の作品にもキャラクターを創造するうえで活かされているのかもしれない。

脚本家として地位を確立したガンは、アクションホラー『スリザー』(06)で監督として本格デビュー。パンチの効いた演出とユーモアを効かせたセリフ回し、“負け組たち”が底力を発揮する痛快さで人気を獲得した。続くヒーロー映画『スーパー!』(10)では、スタイルこそコメディだが自警活動の功罪に焦点を当て、その容赦ない展開から彼が子どもの頃に衝撃を受けたという社会派ヒーローコミック「ウォッチメン」の影響も見て取れる。

■ジェームズ・ガンの魅力と情熱が注ぎ込まれた『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』

『スーパー!』が評価され、ガンに舞い込んできたのがマーベルの超大作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』だった。宇宙の刑務所で結成されたクセ者チームの大冒険を描いた作品で、ヒネリを効かせたキャラ設定やあふれるユーモア、心に傷を抱えたはみだし者がガッツを見せる熱きドラマ、そして物語を盛り上げる音楽…と、ガンのオリジナリティ満載のヒーロー映画を創出し、マーベル・シネマティック・ユニバースに新たな風をもたらした。なお、ガンは欠点のあるヒーローが好きな理由について、「ダメな人間がヒーローになれるなら、僕らにもチャンスがあると思えてくるから」と語っている。

映画はいままでマーベル作品を触れてこなかった客層や音楽好きの心をもわしづかみにし、大ヒットを記録。親子の絆に焦点当てた超胸アツな続編『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(17)も成功に導いたガンは、いっきに人気監督の仲間入りを果たした。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)などマーベル作品に製作総指揮で参加したほか、2023年に公開予定の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』第3弾への続投も決定している。

■トラブルに見舞われても、俳優ら仲間たちに支えられ、表舞台へ復帰

順調にキャリアを積み上げてきたガンだが、2018年にトラブルに見舞われる。2008〜11年頃に発信した差別や小児性愛に関するツイートが掘り起こされ、メディアに公開されたのだ。この時期ガンは妻と離婚、ブラジルで臨んだ『サラリーマン バトル・ロワイアル』(16)の監督を降板するなどトラブルが続いた時期と重なるが、それは理由にならないだろう。問題視したマーベル・スタジオの親会社ディズニー・スタジオは、ガンとの契約解消を発表した。

大成功を収めたあとだけにガンをバッシングする声も多く上がったが、クリス・プラット、ゾーイ・サルダナ、デイヴ・バウティスタ、ブラッドリー・クーパー、ヴィン・ディーゼルほか『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の主要キャストが連名でガンを支持する声明を発表。さらに署名サイトChange.orgには復帰を求め43万を超える署名が集まった。

ガンが“ヒット作を作るだけの人間”ではない、ということだろう。ガンの公式な謝罪も考慮したディズニーは、翌19年に再雇用を決定。その間に手掛けたのが、マーベルと対極にあるDCコミックスの『ザ・スーサイド・スクワッド』というわけだ。マイケル・ルーカーや弟ショーン・ガン、ネイサン・フィリオンらガン作品常連組のほか、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』で組んだシルヴェスター・スタローンがキング・シャークの声で出演しているところにも、俳優たちからのガンへの信頼がにじんでいる。『マイティ・ソー バトルロイヤル 』(17)で監督を務めたタイカ・ワイティティが出演するなど、マーベルの名監督2人がDCコミックスで競演を果たすというのもポイントだ。

ノリと気合いで宇宙を救ったはみだし者の大活躍を描き上げ、映画ファンの信頼を得たガンが、『ザ・スーサイド・スクワッド』でメガホンをとるとなれば、その力量が存分に発揮されることは間違いない。軽快なナンバーをバックに、14人の悪党たちのキャラクターを愛ある視点で紡ぎながら、いままで経験したことのないクレイジーなデス・ミッションを展開してくれるだろう。はたして、悪党たちに希望や未来はあるのか?監督ジェームズ・ガンの集大成に期待したい。

文/神武団四郎