山田洋次監督最新作『キネマの神様』(8月6日公開)の完成披露舞台挨拶が6月28日に丸の内ピカデリーで開催され、菅田将暉、永野芽郁、野田洋次郎、北川景子、寺島しのぶ、前田旺志郎、宮本信子、山田監督が登壇。主人公・ゴウの現代と過去を菅田と志村けんが二人一役で演じる予定だったが、志村が2020年3月29日に急逝。志村に代わって沢田研二が現代のゴウを演じることとなったが、菅田が「沢田研二さんの演じたゴウを見た時に、志村さんを感じた」と告白。山田監督も「亡き志村さんのことも思い出してください」と会場に呼びかけた。

松竹映画100周年記念作品となる本作。ひたすらに映画を愛し続けた男・ゴウを主人公に、時代を超えた愛と友情、家族のありようを描きだす。志村の突然の逝去、緊急事態宣言による撮影の長期中断、2度の公開延期を経て、いよいよ公開となる。山田監督は「昨年の1月にクラインクインして、1年半かけてようやく完成披露試写会を迎えることができた。こんなことは、僕も初めて体験すること。できたら8月6日は、50パーセントではなく、いっぱいのお客さんが入った劇場で封切ることができたら」と願いを込めていた。

さらに「いまから1年半前は、主演のゴウという役をやるのは、志村けんさんだった」と切りだした山田監督。志村が亡くなり「一時は呆然としていた」そうだが、「今日は見えていないけれど、沢田研二さんがピンチヒッターに立とうと決心してくれた。志村けんさんとはまったく違う、沢田研二のゴウ像を作り上げてくれた」とバトンを受け取ってくれた沢田に感謝しきり。「大変な出来事を経て、この作品が別の様相をもって出来上がった。亡き志村さんのことも思いだしてください」と語り、会場から拍手を浴びていた。

過去パートのゴウを演じた菅田は「志村さんの本読み(脚本の読み合わせ)を見学してから、撮影に入った。志村さんの演じるゴウを想定して、お芝居をしている」と述懐。「撮り終わったころにこういう状態になり、しばらく経って撮影も止まった。現代パートはどうなるのかなと思っているなか、山田さんが書き直して、新しい脚本を追加されて。それを読んだ時に、ものすごく残念なことなんですけれど、またひとつ違うパワーが生まれたような感じがした」と複雑な胸の内を明かし、「沢田研二さんの演じたゴウを見て、僕は勝手に志村さんを感じた。確実にいろいろなものが残っている。間違いなく、ほかにない映画になっている」としみじみと語っていた。

また菅田は「山田組に参戦できたことがなによりうれしくて。山田さんとご一緒した時間は、奇跡のような時間」と喜びを噛み締めたが、北川にとっても、山田組への参加は一つの転機となる出来事だったという。北川は「この映画の撮影中に子どもを授かっていて。まだ皆さんに報告していない時期でした。監督に一番にお伝えした時に『いいお母さんになってくださいね。子どもを持つという経験がまた女優業をやっていくうえで糧になって、成長できるでしょうから、次のステップに行っても頑張ってくださいね』と言葉をかけていただいた。うれしくて涙が出ました」と振り返る。「もちろんよく覚えていますよ」と穏やかに微笑んだ山田監督は、「撮っていて、うっとりするくらいきれいな人。あるワンカットは、彼女が出ている映画やテレビドラマのなかでも、一番きれいなカットだと密かに自負しているカットがある」と胸を張り、これには北川も「どこですか?知りたい!」と照れつつもうれしそうな笑顔を見せていた。

取材・文/成田おり枝