「ナターシャ・ロマノフには高潔さがある。自分が間違っていた時にそれを認めることを恐れない。自分に対しても他者に対しても好奇心を持っている。それがほかのスーパーヒーローとの違いだと思います。そしてなにより、彼女はとても可愛げのある人です」。

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19)以来およそ2年ぶりに劇場公開されるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の最新作『ブラック・ウィドウ』(公開中&ディズニープラス プレミアアクセスにて配信中)。本作の主人公であるブラック・ウィドウ/ナターシャ・ロマノフ役を演じるスカーレット・ヨハンソンは、10年にわたってキャリアを捧げてきた“美しき最強のスパイ”への、このうえない愛情をのぞかせた。

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)の直後の世界が描かれる本作では、ナターシャの過去に迫ると同時に、彼女が『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)で下した衝撃的な決断の理由に触れていく。メガホンをとったのは『さよなら、アドルフ』(12)で国際的な評価を得たケイト・ショートランド監督。「ナターシャというキャラクターを女性にも興味深く感じられるものにしたかった」と語る彼女は、「とてもパワフルにすると同時に、傷つきやすいところもある。弱いところも掘り下げていきたかったのです」と、本作を手掛ける上でのこだわりを明かしている。

それだけに、演じたヨハンソン自身も本作でのナターシャがこれまでの作品とは違っていることを感じ取っていたようだ。「彼女はレッドルームの犠牲者で、S.H.I.E.L.D.に参加してアベンジャーズに入って…と、いつもなにか大きなものの一部でした。それが突然中途半端なところにきて、自分にはすごく多くの可能性があることに気付き、息が詰まりそうになる。そんなナターシャを見ることができるのは素敵だった。そういうナターシャを見たことがない。そこから始めるのはとても楽しかったです」と、キャラクターの奥行きが拡がった本作について振り返る。

9歳の頃にスクリーンデビューを飾り、『ゴーストワールド』(01)や『ロスト・イン・トランスレーション』(03)で10代のうちに人気女優の仲間入りを果たしたヨハンソン。近年では第92回アカデミー賞で『マリッジ・ストーリー』(Netflixで配信中)で主演女優賞に、『ジョジョ・ラビット』(19)で助演女優賞にダブルノミネートされたことも記憶に新しい。そんな彼女が初めてナターシャ役を演じたのは2010年、『アイアンマン2』(10)でのこと。そこから10年の間に、カメオ出演も含めれば9作品で同役を演じてきた。

「マーベル作品で主要キャラクターを演じる機会を与えてもらったことも、何度も同じ役を演じられることも、とても幸せなことです。それにブラック・ウィドウは役者として最高の贈り物だと感じています。私が演じることを喜んで受け入れてくれた人たちには感謝しかありません」と、女優人生に欠かすことができないハマり役とめぐり逢えたことの喜びを語り、「いまの私は10年前よりも恐れることが減ったと思います。それは人生におけるポジティブな変化です」と、役柄を通して自身も成長を遂げたことを明かした。

また、共演者同士が家族のように仲が良いことでも知られているマーベル作品。ヨハンソンもロバート・ダウニー・Jr.やクリス・エヴァンスらとおそろいでアベンジャーズのロゴマークのタトゥーを入れてるほど。「この10年間、私たちは仕事や私生活において、なにか起きたらいつも支え合ってきました。『アベンジャーズ』シリーズの撮影は、休暇から自宅に帰ってきた感覚と同じで、私にとってホームに感じられるのです。私たち全員がお互いに親しいのは、一緒に多くの時間を費やし、たくさんの経験を共有してきたからでしょう」。

本作では新たに『ミッドサマー』(19)や『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(19)のフローレンス・ピューや、アカデミー賞女優レイチェル・ワイズがMCU作品に初参戦を果たす。それ以外にも、この10年の間で多くの人気俳優たちがMCUの世界に仲間入りし、今後もよりグローバルな顔ぶれが加わることが予定されている。

新たな俳優たちを仲間に迎え入れることについて「とてもエキサイティングなことです」と楽しげに語るヨハンソン。「私はマーベルのファミリーを愛しているから、それがどんなに特別なことかを知っています。ほかの役者さんたちが入ってくるのはとても嬉しい。新しい人たちが興味津々でマーベルのすばらしい世界を作るためにやってくる。みんなそれぞれ大作映画に出たことはあっても、マーベルは独特。すごくウェルカムな雰囲気がある現場です。それを分かち合えるのはとても楽しいです」。

ナターシャの妹エレーナ役を演じたピューは、撮影現場でのヨハンソンとのエピソードについてこう語っている。「スカーレットはあらゆることを私に教え、導いてくれようとする準備が整っていました。私はスーパーヒーロー映画に出るんだという意識で参加しましたが、彼女はその意識を取り払ってくれた。撮影の1週目には大々的なファイトシーンをやって、知り合って2日もしないうちに彼女のことをドア枠やキッチン・カウンターに叩きつけていました(笑)。誰かと素早くわかりあう方法として、とにかく闘うことはベストな方法かもしれませんね」。

さらにピューは「この映画の核にあるのは、彼女たちが自分は何者なのかということを見出していくというとても残酷な旅路です。爆発やファイトシーンやアクションもあるけれど、実はその根底にとても悲しいストーリーが流れています」と本作の見どころを語った。

孤独な暗殺者だったナターシャ・ロマノフは、なぜアベンジャーズというヒーローチームの一員になったのか?そして『エンドゲーム』の背景につながる過去の秘密…。ヨハンソンとブラック・ウィドウが歩んできた10年間の集大成を、是非とも劇場で見届けてほしい。

文/久保田 和馬