男気あふれるダンディな声で人気を博すベテラン声優の小山力也。2011年に第5回声優アワード「富山敬賞」を受賞し、「名探偵コナン」シリーズでの2代目毛利小五郎役でも知られる小山だが、ジョージ・クルーニー主演の海外ドラマ「ER」で声優デビューして以降、洋画や海外ドラマの吹替えも数多く務めてきた。最新作は『ジャングル・クルーズ』(映画館で公開中、ディズニープラス プレミア アクセスで配信中) の日本版で、ドウェイン・ジョンソン扮する主人公のフランク役を演じている。小山を直撃すると、自身の役割について「影武者です」と言うが、そこには自分が吹替える俳優陣への深いリスペクトが込められていた。

タイトルどおり、東京ディズニーランドの人気のアトラクションから誕生した本作。小山が演じるフランクは観光客相手のクルーズ・ツアーの船長で、ジャングルに生息する珍しい動物や、スリルあふれる先住民の村、“滝の裏側”などの名所の数々を、ジョークを交えながらガイドをするという陽気なキャラクターだ。

お金に目がないフランクは、女性博士のリリー(エミリー・ブラント)から大金を用意すると言われ、彼女と共にアマゾンに眠る秘宝<不老不死の花>を求め、謎に包まれたジャングルの上流奥深くへ入っていく。そこで、秘宝を狙う追跡者との熾烈な争奪戦が繰り広げられていく。

――『ジャングル・クルーズ』を観て、どんな点に惹かれましたか?

「まずはアトラクションに飛び込むダイナミズム!視覚、聴覚、全身で体感できるアドベンチャー感がたっぷりです。そしてコメディ、アクション、ラブストーリー、壮大なファンタジー。最初はハラハラドキドキ!観た後は、エンタメ爆食いでお腹いっぱいになります」

――フランクとリリーの掛け合いがとても楽しかったです。演じてみていかがでしたか?

「聡明で気が強くてビューティフルなレディは憧れですし、いわゆる“叱られたい”タイプかと。それでもって、フランクとしては、なんとか良いところを見せようとカッコつけて、彼女から『あら、なかなかやるのね!』と見直してほしいんです。そんな会話を楽しみました」

――物語の途中でいろんな事実が明かされていき、フランクの印象も変わっていきました。演じるうえで意識した点はありますか?

「フランクはいつも素直で、気取りもごまかしも一切ありません。ただ、秘密をなかなか言いにくいだけで心に裏がなく、誰にも公平に接します。だからそんな彼の人の良さを大事にしました。そして、やっぱり勇者でしたね。勇者は、優しいです」

――ドウェイン・ジョンソンの吹替えは『スコーピオン・キング』(02)以降、数多くの作品を担当されてきましたが、小山さんが考えるドウェインの魅力とは?

「本物の格闘家という説得力を感じます。チャンピオンはショーマンシップの極意を心得ていますから。年齢と共に、ストロングスタイルにコミカルな面もプラスされ、演じる人間の幅が広がりましたね」

――「ワイルド・スピード」シリーズのルーク・ホブス役も印象に残っていますが、ホブスの魅力についてもお聞かせください。

「肉体に嘘が無い。一発のパンチ、一発の蹴りのリアリティが一番です。最高のファイターの魅力プラス、最近はパパとしての可愛らしさも見せてくれています。おじさんは強い、そしてパパはもっと強いんです!」

――「24 -TWENTY FOUR-」でキーファー・サザーランドが演じたジャック・バウアーも小山さんの当たり役となりましたが、ほかにもジョージ・クルーニーはもちろん、デンゼル・ワシントン、キアヌ・リーブスなど数多くの人気スターの吹替えを担当されていますが、小山さんにとって彼らは、どんな存在なのでしょうか?

「これは度々申し上げるんですが、私は影武者です。歴史に名を残す英傑の影として、時に馬上に君臨し、鉄扇を振るいます。英傑の名を汚さぬよう、心して影に命吹き込みます。コメディでは遊びますが、芯のところは揺らぎません。武将の誉れ、汚すなかれ。是、忘れまじ、ということです」

■「『ER』の吹替えに抜擢してくださったプロデューサーとディレクターが、人生の大恩人です」

――大学卒業後に劇団「俳優座」に入団され、最初に「仮面ライダーBLACK RX」(89)で俳優デビューされました。俳優の近作としては、放送中の大河ドラマ「青天を衝け」に酒井忠績役で出演されていましたが、実写の映画やドラマなど俳優としての出演作はどんなふうに選んでいるのでしょうか?

「肉体を酷使するも又愉し、と感じています。『青天を衝け』は、座り芝居でしたけどね(笑)。ご縁に感謝しつつ、このごろはチョイスもさせていただいてます。僕は舞台俳優ですが、デビューしたのは映像作品でしたし。久しぶりにアクションしたいなと思っています」

――では、声優のお仕事のおもしろさを感じ始めたのはいつごろでしょうか?転機となった作品があれば教えてください。

「僕は『ER』のジョージ・クルーニーの吹替えで声優デビューをしましたが、抜擢してくださったプロデューサーとディレクターが、僕の人生の大恩人です。吹替えの誇り、醍醐味、真髄を教えていただきました。いまも目指して精進しています」

――声優としてシリアスな役からコミカルな役柄まで守備範囲がとても広い印象を受けますが、どちらのほうがやりやすいですか?

「どちらも大好きですが、コメディを楽しめるのは演者の醍醐味です。コメディが最上。コメディができれば、トラジディ(悲劇)は掴める。コメディは貧乏役者の真骨頂です。シェイクスピアの王家の悲劇は、実際に富を得ないと体現できない。そういういろいろなアドバイスを受けました。やはりコメディが最上です!それを踏まえてシリアスに社会を見つめたい、そう考えています。ちなみに劇団『俳優座』の機関紙は『コメディアン』と申します」

――小山さんが声優冥利に尽きる、と感じる瞬間はどんな時でしょうか?

「俳優は観客の人生を励ますために芝居をする!これはもっとも大切な人に教えられました。吹替えも、またしかり。ですから観客、視聴者の方からの御声、御手紙、激励にもっとも心躍ります。ありがたいことです」

――これから『ジャングル・クルーズ』を観る方に向けて、本作で一番のおすすめポイントを教えてください。

「このご時世で、この夏。いまだからこそ観てほしいです。『ジャングル・クルーズ』は、最大最高のエンタテインメントで、大冒険、大スペクタクルです。ダイナミックな感動に、必ずや心も身体も震えます。全身でアトラクションを、ドラマを、生きる喜びを味わってください。VIVA Jungle Cruise!」

取材・文/山崎伸子