MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今週は、一匹狼の刑事と悪党どもの激闘を描くバイオレンス・エンタメ、『寝ても覚めても』の濱口竜介監督が村上春樹の短編をベースに描く、カンヌ国際映画祭で脚本賞ほか4冠に輝いた人間ドラマ、思春期の少年少女の恋と性を描く青春譚の、惹き込まれずにはいられない3本!

■濃密なドラマとアクション、演技。余韻も深くしみわたる力作…『孤狼の血』(公開中)

日本映画における久々の本格ハードボイルドとして評価された前作から3年。この続編は、壮絶な殉職をとげた役所広司の大上刑事に代わり、彼の部下だった松坂桃李の日岡刑事が主役となる。暴力団の危険な男たちを前に一切ひるまず、むしろ上から目線で豪快にふるまう日岡。冒頭から松坂が振り切れまくった熱演で圧倒。その日岡をも超えるインパクトで登場するのが、刑期を終えた組長の上林。演じる鈴木亮平がモンスター並みの狂気と暴れっぷりで、観る者の背筋を凍らせまくる。警察と暴力団の攻防でキーパーソンとなる村上虹郎など、日本映画の俳優たちのインパクトを、ここまで感じさせる作品は珍しい。
バイオレンス描写にも容赦ないので、覚悟して観ることをオススメ。音楽で劇的に盛り上げるといった小手先の演出は避け、あくまでも濃密なドラマとアクション、演技で押し切り、余韻も深くしみわたる力作。これほどのハイテンションは、前作のLEVEL 2どころか、5、10、いや無限大である。(映画ライター・斉藤博昭)

■繊細で大胆。いつの間にか火傷させられる“低温火傷ムービー”…『ドライブ・マイ・カー』(公開中)

何かがゆっくりと、進行していく。刻一刻と。中心となるのは、舞台俳優で演出家でもある男(西島秀俊)だ。秘密を残して急死した妻(霧島れいか)。彼女と関係を持っていた若手俳優(岡田将生)。2年後、広島での演劇祭に招かれた男は規約で、真紅な愛車「サーブ900」のハンドルを終始、寡黙な専属ドライバー(三浦透子)に預けなければならなくなる──外容からは想像がつかないだろうが、各人物に“時限爆弾”が仕掛けられていて、タイムリミットサスペンスを形成、ジワジワと手に汗握らされる。後部座席に座ることを余儀なくされていた主人公がいつ、助手席に移るか。どんな小さな事象も見逃せない、聴き逃せない! 村上春樹の原作を借りて自分のスタイルを貫いた、(世界の熱視線を浴び続ける)濱口竜介監督の繊細で大胆な映画。低温でありながら観客をいつの間にか火傷させてしまうそれを、“低温火傷ムービー”と名付けたい。(ライター・轟夕起夫)


■どこにも嘘がないから、リアルに心に迫ってくる…『うみべの女の子』(公開中)

2010年の『ソラニン』以来となる、カリスマ的漫画家・浅野いにおの同名コミックの実写映画化。本作は海辺の小さな街で暮らす中学生の少女・小梅と少年・磯辺との“恋”と抑えられない“性”の衝動を描いた青春ムービーだが、原作の世界がそのまま実際の風景と生身の人間になってスクリーンに映し出されたからビックリ! W主演の石川瑠香(『猿楽町で会いましょう』)と青木柚(『アイスと雨音』)はもはや小梅と磯辺にしか見えないし、彼らの苛立ちやモヤモヤした感情も生々しい。ほかの数多ある青春映画と違って、どこにも嘘がないから、リアルに心に迫ってくるのだ。そして、何よりもスゴいのは彼らのどうしようもなさを、近すぎず離れずの距離感と息遣いでまんまと視覚化しているところ。約5年の歳月をかけて念願の映画化を実現させたウエダアツシ監督は、本作の肝とも言える性描写も適度な塩梅で映し出していて、そこに監督作の『リュウグウノツカイ』(13)や『富美子の足』(18)にも繋がる彼の眼差しが見え隠れするのが面白い。いずれにしても、2009年から4年にわたって描かれた原作をちゃんと今の物語にした本作は、この夏いちばんの注目作! 小梅たちの閉塞感には、このいまいましい状況下で生きる現代の同世代がいちばん共感を覚えるに違いない。(ライター・イソガイマサト)

週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!なお、緊急事態宣言下にある都道府県の劇場の一部では引き続き臨時休業を案内している。各劇場の状況を確認のうえ、足を運んでほしい。

構成/サンクレイオ翼