“かっこいい女性”の代名詞とも言える女優、アンジェリーナ・ジョリー主演のサバイバル・サスペンス『モンタナの目撃者』がいよいよ9月3日(金)に公開。森林消防隊員のハンナを演じた本作で彼女が対峙することになるのは、冷酷非道な“暗殺者”と猛威をふるう“山火事”という強烈なダブルパンチだ。しかもそんな極限状態で、少年を守りながら戦うというミッションに挑むのだから、観ているこちらもハラハラしっぱなし!ハンナのサバイバル術にクギづけとなり、「こんなアンジーが観たかったんだ!」とシビれるような本作の魅力を、イラストレーター&エッセイストの石川三千花の描き下ろしイラストと共にご紹介する。

■“Wの脅威”から浮かび上がる、アンジェリーナ・ジョリーの新境地

本作でアンジーが演じるのは、過去に壮絶な事件を“目撃”したことでトラウマを抱えている森林消防隊員のハンナ。ある日ハンナは、父の殺害現場を“目撃”してしまったがために暗殺者に追われる少年コナー(フィン・リトル)に出会う。コナーは、父親が命を懸けて守り抜いた秘密を握るたった一人の生存者だった。ハンナはコナーを暗殺者から守るために戦うことを心に決めるが、コナーの命をねらう暗殺者たちが刻一刻と2人に近づき、さらに大規模な森林火災が迫りくる…。監督と脚本を『ウインド・リバー』(17)のテイラー・シェリダンが務めた。

同僚たちからの信頼も厚いハンナは、時には彼らと軽口をたたき合い、ワークパンツを泥だらけにしながら荒野を走り回る。すでにこの時点でかっこいいアンジーを堪能できるが、さらにピンチに見舞われるごとに彼女の輝きが増していく点が大きな見どころだ。コナーと出会ったハンナは、彼を守るべく大奮闘。迫りくる暗殺者だけでも恐ろしいのに、山火事や落雷という自然の猛威までが彼らに襲いかかるのだから、逃げるほうとしてはたまらない!“アサシン×ディザスター”というWの脅威を描く映画も珍しく、新鮮な衝撃を味わえるはず。そんななか、ハンナは何度も傷を負い、傷を洗い流しては苦痛に顔を歪める。ヒロインの戦い方や受けるダメージの生々しさも本作の特徴で、その都度立ち上がり、必死に少年を導こうとする姿がなんとも美しいのだ。

アンジーは、人気ゲームを映画化した「トゥームレイダー」シリーズや、プロの殺し屋を演じた『Mr.&Mrs.スミス』(05)、スパイ・アクション映画『ソルト』(10)など、あらゆるアクション・ヒロインを力強く演じてきた。超人的なアクションを見せる機会も多く、スマートで完璧といったイメージを持っている人も多いかもしれない。しかし彼女にとって11年ぶりのアクション映画となった本作は、そのどれとも違う。“等身大でリアルな戦う女性像”という、新しいアンジーを目撃できる。撮影を終えた彼女自身が「強くなれて、汚れて、汗をかけて、幸せでした。初めてのことに挑戦し、自分にもできるんだと思えた」と並々ならぬ充実感をみなぎらせている。

■暗殺者と山火事にどう立ち向かう?ハンナのサバイバル術に惚れ惚れ

アンジーの体現するヒロイン像と共に観客を惹きつけるのは、手に汗を握るようなスリリングな描写。まず、ハンナとコナーを追いかける暗殺者のジャックとパトリックが怖すぎる。目的を果たすためには、相手が少年であろうと容赦なく攻めに攻めてくる。なにをしでかすかわからない殺し屋だけに、一瞬の油断が命取り。見ているこちらも、緊張し通しだ。ジャックを演じるのは、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のエイダン・ギレン。「X-MEN」シリーズや『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)のニコラス・ホルトがパトリックに扮し、ゾクゾクするような悪役を演じ切っている。

また燃え盛る山火事の迫力は、目を見張ること間違いなし。プロパンを仕込んだ森林そのものをセットとして作り上げるという大規模なロケを敢行し、うねりながら立ち昇る煙、驚異的なスピードで広がっていく山火事の恐ろしさを再現している。また、変わりやすい天気もハンナとコナーを悩ませる。山で遭遇する雷がこんなに恐ろしいものなのかと震えるようなシーンもあるが、そこはハンナの腕の見せどころ。森林消防隊員として鍛え上げた洞察力とサバイバル・スキルで、数々の難関を突破していく。彼らが経験する危機には絶対に無縁でいたいものだが、「森で迷ったらこうすればいいのか…」「山火事に巻き込まれた時の対処法はあるのか?」など映画に没入しつつ、大自然でサバイブする術も目にすることができる。

■傷ついた者同士が、年の差を超えて育む絆も胸アツ!

本作を忘れがたいものにしているのは、サバイバル・サスペンスとしてのハラハラ度だけでなく、ハンナとコナーが織り成す人間ドラマがしっかりと描かれているからだ。ハンナは一見、勇敢で強い女性に見えるが、その胸の奥は、過去に起きた事件によるトラウマに苛まれている。失敗を悔やみ、ひとりになると涙を流すハンナの姿も多くの人の共感を呼ぶはずだ。一方のコナーは、すでに母を亡くしており、唯一の支えだった父の死を目の当たりにしてしまう少年。ひとりぼっちになってしまったうえに暗殺者にねらわれるという、不安でしかたない状況だ。

そんな2人が孤独や秘密を打ち明けあった時に、彼らは強固な絆を結び、互いにかけがえのない存在となっていく。コナーは守るべき存在でありながら、ハンナは決して彼を子ども扱いせず、対等な人間として信頼を築いていく様子にグッとくる。どんな極限状態でもその時にできることを探し、手を取り合って克服していこうとする彼らの姿は、困難な時代を照らす希望の光となりそうだ。

文/成田おり枝