『かもめ食堂』(06)や『彼らが本気で編むときは、』(17)の荻上直子監督の最新作で、11月3日(水・祝)からの公開を予定していた『川っぺりムコリッタ』が、新型コロナウイルス感染拡大の状況を鑑みて公開延期となることが決定した。

松山ケンイチを主演に迎えた本作は、人と人のつながりが希薄な社会で、人はどうやって幸せを感じることができるのかという根本に立ち返るヒューマンドラマ。共演にはムロツヨシや満島ひかり、吉岡秀隆、江口のりこ、柄本佑といった実力派キャストが揃い、荻上作品ではおなじみの“おいしい食”とユーモアいっぱいの会話が展開する、心温まる一作に仕上がっている。

物語の舞台は北陸の名もなき町にあるボロアパート「ハイツムコリッタ」。誰とも関わらずに生きていくことを決め、イカの塩辛工場で働きはじめた山田は、社長から紹介された安アパートでの暮らしを始める。そんな山田のもとに、あるとき隣の部屋の住人の島田が風呂を貸してほしいとやってくる。それ以来、山田の静かな日々は一変。いつのまにかアパートの住人たちと関わりを持つように。

ある日、子どもの頃に自分を捨てた父の孤独死の知らせを受けた山田は、島田に説得されて遺骨を引き取りに行くことに。父が残した携帯電話には「いのちの電話」への着信履歴が残っており、腹立たしいような落胆するような複雑な感情に駆られる。そんな山田を不器用ながら優しく励ます島田。2人の間には少しずつ友情のような関係が芽生えはじめ、山田の心に光が灯りはじめた頃、彼が北陸の町にやってきた“秘密”が島田に知られてしまう。

友だちでも家族でもない住人たちとの関わり合いのなかで、孤独ではないことを実感し“ささやかなシアワセ”に気付いていく主人公の姿を描く本作は、いまの時代忘れかけていた大切なものを思い起こさせてくれることだろう。延期後の新たな公開予定は2022年を予定。詳細が決定次第、作品の公式ホームページや公式SNSなどでアナウンスされるとのこと。続報を楽しみに待ちたい!

文/久保田 和馬