映画監督や著名な俳優、一般クリエイターたち総勢36名が“短編オムニバス映画”を製作する一大プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)」。その公開第一弾となる“Season1”が公開す中だ。そのなかで念願の監督デビューを果たしたのが、女優やモデル、ミュージカルと様々なフィールドで活躍する三吉彩花。以前から「自分の表現の仕方に興味があり、クリエイティブな活動をもっとやっていきたい」と周囲に語っていたという三吉に、初監督作品『inside you』にかける想いや本プロジェクト参加への意義をたっぷりと語ってもらった。
この日の取材では、今回のプロジェクトで“撮られる側”から“撮る側”も経験した三吉に、自身を撮影するセルフポートレートに挑戦してもらった。撮影では「韓国にこういった自分で撮れるスタジオがあるんですけど、日本では初めて撮りました。楽しいですね!」と笑顔をはじけさせつつ、完璧なシャッタータイミングでさすがのトップモデルとしての貫禄をのぞかせ、スタッフたちからは思わず感嘆の声が…!華麗なセルフポートレート写真もたっぷりお届けする。

■“だれでも映画を撮れる時代に”「MIRRORLIAR FILMS」

俳優の山田孝之や阿部進之介らが発起人となり、年齢や職業を問わず多くの人たちに映画製作のきっかけや魅力を届けるべく立ち上がった「MIRRORLIAR FILMS」。“変化”をテーマに、短編全36作品が9作品ごとに4シーズンに分けて上映されるという、映画業界にとってもまさにチャレンジングな取り組みとなる。柴咲コウや安藤政信など多くの俳優たちが監督として参加しているが、三吉自身どのような経緯で参加が決まったのだろうか。

「もともと2019年にやらせていただいた『Daughters』という映画のプロデューサーの方が『MIRRORLIAR FILMS』のプロデューサーを務めていたのがきっかけです。当時から自分の表現の仕方などにとても興味があったので、そういったクリエイティブなことをもっとやっていきたいというお話を『Daughters』の津田肇監督やスタッフの方々としていたら、今回すごく早いタイミングで呼んでいただけて」と、まさに想いが実現した形となったようだ。念願の監督デビューが決定し、三吉自身「すごく楽しみでした!いろいろな方が監督として参加されるので皆さんの作品もとても気になりましたし、“だれでも映画を撮れる時代に”というのがこの企画の大きなテーマ。その第1弾に参加できて嬉しいです」と喜びを語る。

三吉は今回、主人公の女性が自身の内面と向き合う『inside you』という作品を手掛けた。「スタッフさんはすべて『Daughters』のチームにお願いしていたので、ものすごく贅沢なことなのですが私が監督で、監督補佐を(『Daughters』の監督である)津田さんにやっていただいたという(笑)。なので編集や撮影の進め方などは津田さんに教えていただいて、私としてはその辺りの不安はなにもなく、皆さんにいろいろなアドバイスをいただきながら進めていきました」と、最強の布陣で挑んだ現場で安心して監督業に打ち込めたようだ。

■「どういう風に伝えたら、自分のニュアンスが丁寧に伝わるのかが一番難しかった」

では実際にカメラの前の世界、カメラの後ろからの世界を体験して女優としての意識にも変化はあったのだろうか。「自分が演じる側の時もすごく考えることなのですが、1つの台本をしっかり形にするには現場の方や監督とのコミュニケーションがすごく大事だと思っていて…特に監督と台本の擦り合わせなどをする時に、自分の解釈の伝え方など“言葉選び”が大きな課題なんです。監督の立場として伝えるとなると、全体を見て考えないといけないので、とても難しかった。でも今回監督をやったことによって、どうしたら役者さんがお芝居しやすくなるのか、今度自分が別の現場に入る時に監督に対してどういう風に意見していったらいいのか、より丁寧に伝えるにはどうしたらいいのかみたいなことがすごく勉強になりました」と自身の貴重な糧となった製作期間を振り返る。

■こだわった“色”「映像で心情を表現したいと思っていた」

“変化”というテーマのもと制作された『inside you』では、“自身のやりたいこと”に悩む女性の姿が美しい世界観で描かれていく。「まず映像を美しく撮ることにこだわった」という三吉だが、なかでも特にこだわったのは“色”。「言葉で説明するよりも、映像で心情を表現したいと思っていたので、コップに注がれるお水を青くして少しネガティブな要素を出したり、主人公がバレリーナとの出会いによって心が動かされるシーンは赤色を印象的に取り入れていたりと、色にはかなりこだわりました」と明かす。

三吉自身、「9作品のなかでは人間の変化によって心情が変わったり揺れ動いたりするというのが分かりやすい作品なんじゃないかな」と分析する本作。「主人公の人生を前向きにする、背中を押してくれる“変化”を描いているので、観てくださった方には自分に置き換えて考えたり感じたりしてもらえたらすごくうれしいです。今後人生の選択に迷ったり、なんかちょっと上手くいかないなっていう時に『そういえば“inside you”もう1回観返してみようかな』って思ってもらえるような、その人の人生に寄り添える作品になれたらいいなと思います」と強い想いを明かした。

■「よりみんなが、クリエイティブなことをやりやすい環境に」

公開中の“Season1”では、『百円の恋』(14)や『アンダードッグ』(20)の武正晴監督による『暴れる、女』や、俳優の安藤政信がメガホンをとった『さくら、』など様々なジャンルの9作品が上映されるが、三吉自身も「こんなにも全然違う作品が揃っていてすごいなと思いましたね。それぞれ皆さん楽しませ方も違いますし、独特でおもしろかったです」と率直な感想を語る。まさにボーダーレスで斬新なアイデアあふれる作品が詰まった「MIRRORLIAR FILMS」だが、一方でクリエイターの発掘や育成を目的に映画製作のきっかけや魅力を届けるために生まれたプロジェクトでもある。

「私自身、今回監督という形で参加させていただいたんですけど、自分の表現したいやり方というのはほかにもまだまだたくさんある。例えば空間コーディネートをしたり、誰かの衣装のスタイリングやPVを撮ってみたり、とにかく自分の世界観を表現することについては無限にやりたいことがあります。『映画に興味があるけど、そういう大学に行っているわけではないからできないかな』とか考えている人ってたくさんいると思うんですけど、一歩勇気を踏みだして作ってみたら新しい反響があるかもしれないし、もっと違う作りたいものが明確になるかもしれない。なので今回の企画はすごく素敵な企画だと思いますし、これがどんどん浸透していって、よりみんながクリエイティブなことをやりやすい環境になっていくといいなと思います」と期待を寄せる。

「9作品とも全然違うジャンルの個性あふれる作品が集結しているのでずっとジェットコースターのピークみたいな状態が続くと思うんですけど(笑)、そういったアトラクション感覚で気軽に観ていただけたら。楽しい作品もあればすごく考えさせられる作品もギュッと詰まっているので、ぜひ楽しんでいただきたいなと思います!」

取材・文/富塚沙羅