世界中で人気を博した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(20)が、ついに本日21時よりフジテレビ系にてテレビ初放送される。本作のキーパーソンの一人であり、幅広い世代の観客に愛されたキャラクターといえば、鬼殺隊最強の剣士である“柱”の一人、炎柱の煉獄杏寿郎だ。柱として、長男として、強き者として、信念を貫き通した彼の生き様に観客は熱狂。そんな煉獄を演じたのは、数多くの人気作品に出演してきた実力派声優の日野聡である。

煉獄杏寿郎は、強い精神と肉体を持つ明朗快活な性格で、隊士たちにとっては兄貴分のような存在。一人で上弦の鬼に立ち向かい、200人あまりの汽車の乗客と、戦闘で負傷した炭治郎たち仲間の隊士を命懸けで守り抜いた彼の勇姿は、日野の凛とした正義感あふれる声によってさらに際立ったと言えるだろう。戦闘シーンでは、最後まで相手から目を離さずに向かっていく煉獄の強さを表現するため、日野はあえてダメージ音などの息づかいを入れず、炭治郎たちにまっすぐな気持ちを伝えられるように、しっかりした口調を意識したという。

このように誠実で頼り甲斐のあるキャラクターを演じることが多い日野だが、実はほかにもコミカルな役や悪役、海外の吹替え作品などで活躍している。そんな日野の魅力がわかる、おすすめの作品を紹介していこう。

■魔王と普通の青年の演じ分けが光る!「オーバーロード」:アインズ・ウール・ゴウン役

丸山くがねによる大人気小説が原作で、とあるゲームのサービス終了時にアバターの姿のまま、異世界へ転移してしまった主人公、(ハンドルネーム、モモンガこと)アインズの活躍を描くダークファンタジー。テレビアニメは2015年から2018年にかけて第3期まで制作され、現在、第4期と完全新作劇場版の制作が決定している。アインズ役は日野にとって重要なキャラクターの一人で、「オーバーロード」を含む人気作品の登場人物たちがぷちキャラ化し、一堂に会するクロスオーバー作品「異世界かるてっと」でも同一人物を演じている。

海外でも人気の高い本作の特徴は、アインズの見た目が“骸骨”の姿をした大魔法使いというインパクトの強烈さ。圧倒的な力を持ち、守護者たちの頂点に君臨する魔王アインズは、威風堂々と世界征服に乗り出していくのだが、実はその体の内側に、現実社会では平凡なサラリーマンだった“鈴木悟”としての意識がそのまま残っている、という異世界もののお約束設定もポイントだ。低い落ち着いた声色で、魔王らしいセリフを発するアインズと、必死に魔王のフリをがんばっている鈴木。アインズと鈴木の両極端なキャラを瞬時に切り替える日野の演じ分けがすばらしい。支配者としての口調や仕草を一生懸命に練習するかわいい姿も必見だ。

■主人公の前に立ちはだかる天敵として登場!「東京リベンジャーズ」:清水将貴役

2017年より週刊少年マガジンで連載され、単行本の累計発行部数が累計3500万部を突破している(2021年8月時点)和久井健による異色のヤンキー漫画が原作。テレビアニメは2021年4月から9月まで放送され、同年7月に公開された実写映画も大ヒットを記録している。人生どん底のダメフリーター、花垣武道(タケミチ)が、人生のピークだった12年前にタイムリープし、当時付き合っていた人生唯一の恋人、ヒナタを救うため、そして逃げ続けた自分自身を変えるために、人生のリベンジを開始する。

この熱くてせつない青春サスペンスで日野が演じているのは、不良集団、東京卍會の参番隊隊員、キヨマサこと清水将貴。(物語開始の)12年前、タケミチを奴隷扱いし、彼の人生を狂わせる発端となった人物だ。ガタイの良さ、顔に残った傷跡、パンチパーマという恐ろしげな外見どおり、タケミチの前に立ちはだかる天敵として登場。“8.3抗争”の際は、東京卍會の副総長である龍宮寺堅(通称:ドラケン)をナイフで刺すといった凶行におよぶなど、日野としてはめずらしい“本物の悪役”である。正義漢だった煉獄のキャラクターとは対極に位置するキヨマサだが、やはり声は最高にかっこいい。すごみのあるセリフで光る声質の魅力と演技力の高さに注目してほしい。

■優等生だけど天然な一面も!「呪術廻戦」:加茂憲紀役

週刊少年ジャンプで連載中の芥見下々による大人気コミックを原作とし、2020年秋から2021年春まで放送されたテレビアニメが話題になり、『劇場版 呪術廻戦 0』(12月24日公開)も控える「呪術廻戦」。ジャンプ作品らしいバトル展開に、“呪い”という要素が加わり、自分の魂に呪いを宿してしまった少年、虎杖悠仁を主人公に、人間の負の感情から生まれた呪霊たちと、呪術師たちとの壮絶な闘いが描かれていく。

超個性的なキャラクターぞろいの本作で日野が演じるのは、虎杖が通う東京都立呪術高等専門学校の姉妹校である京都府立呪術高等専門学校3年生の加茂憲紀。呪術師の御三家、加茂家の本家筋としての矜持の高さから、秩序を重んじ、常に責任感を持って行動するキャラクターだ。長い黒髪に糸のような細い目、加茂用の高専制服は和装という風雅なルックスに、高校生とは思えない落ち着いた語り口と低いイケボが印象的。個性的なキャラクターが多い生徒たちのなかでは数少ない優等生タイプだが、思い込みが強く周囲との会話がズレてしまったりする天然な一面も。日野のイメージにもぴったりと合う、頼れる先輩役が注目ポイントだ。

■闇に紛れて悪を撃つ孤高のヒーロー!「ARROW/アロー」:オリバー・クイーン/グリーンアロー役

医療ドラマ「ER 緊急救命室」の吹替えに参加したことをきっかけに本格的に声優として活動するようになった日野は、海外ドラマの出演作も多い。DCコミックスの「グリーンアロー」を原案とする実写テレビドラマシリーズで、アメリカでは2012年から2020年まで計8シーズンが放送された人気ドラマ「ARROW/アロー」では、スティーヴン・アメルが演じる主人公、グリーンアロー役の吹替えを担当している。

表の顔は億万長者のプレイボーイ、オリバー・クイーン。しかし、その真の姿は、緑のフードで顔を隠しながら、鋼の肉体と超人的な弓矢の技術を武器に、悪と戦う孤高のヒーロー、グリーンアロー。ドラマの初期はダークヒーローとして悪を成敗していた彼が、シリーズを重ねるにつれて徐々に仲間が増え、本物の正義のヒーローへと成長を遂げていく姿が共感を呼んでいる。日野のクールでかっこいい声と繊細な演技を思う存分堪能できる作品だ。

また、外国映画の吹替えでは、「ハリー・ポッター」シリーズのセドリック・ディゴリー(ロバート・パティンソン)を演じたほか、『海の上のピアニスト』(98)の4Kデジタル修復版Blu-rayにて主人公のナインティーン・ハンドレッド(ティム・ロス)を好演している。

クールなキャラから熱いキャラまで柔軟に演じ分け、どんな役柄であっても、その美声でファンを聞き惚れさせてしまう日野聡は、まさに万能の声優。気になる作品をチェックして、煉獄さんとはまた違った彼の魅力を発見してほしい。

文/石塚圭子

※煉獄杏寿郎の「煉」は火+東が正式表記