ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが、COVID-19(新型コロナウイルス)の影響を受けているクリエイター、制作スタッフ、俳優が継続的に創作活動に取り組めるように、短編映画製作プロジェクトを発足。「COVID-19をひっくり返す」という想いが込められたその映画の名は、『DIVOC-12』(公開中)だ。藤井道人監督、上田慎一郎監督、三島有紀子監督がリーダーとなり、それぞれが公募を含む3人の映画監督たちとチームを結成。総勢12人の監督が、10分間という限られた時間のなかでオリジナルの作品作りに挑む。

MOVIE WALKER PRESSでは連続インタビューを実施。今回は、『よろこびのうた Ode to Joy』の三島監督と藤原季節の対談をお届けする。

本作は、孤独な日々を過ごす冬海(富司純子)に、謎めいた青年・歩(藤原)が声をかけたことから始まる。歩に持ち掛けられ、冬海は“ある仕事”を行うことに。「みんな、不安だから」というセリフが象徴するように、いまを生きる私たちの心に潜む暗澹たる気持ちが、お金を巡る物語のなかであぶり出されてゆく。
互いへの敬愛がにじむ三島監督と藤原だが、藤原が三島監督も知らなかった、ある告白を行うひとコマも見られたインタビューとなった。

■「『三島監督の作品に出られるんだ!やった!!」と興奮してしまいました」(藤原)

――『DIVOC-12』プロジェクトという試みに対して、藤原さんはどんな感想を抱きましたか?改めてお聞かせください。

藤原「正直なことを言うと、お声がけいただいた当初はプロジェクトについて詳しく知らなかったんです。単純に『三島監督の作品に出られる!』という喜びでいっぱいで、ほかのことはあまり聞いていなくて(笑)」

三島「(笑)。ありがたいですね」

藤原「その時はマネージャーさんも僕も『三島監督の作品に出られるんだ!やった!!』と興奮してしまっていましたね(笑)。あとから『こういった企画なんだ』とお聞きして、僕らのほかにも物語を作ろうとしている人たちがいることが、素敵なことだと感じました。それぞれがそれぞれの形で、ある一つのテーマで物語を紡ごうとしている。それは競争とかではなく、もっと高いレベルの話だと思いましたし、ワクワクしました」

――藤原さんは全12作品をご覧になって、いかがでしたか?

藤原「好きな作品が多かったですし、同世代の俳優がたくさん出ているのもうれしかったです。松本穂香さん(『ユメミの半生』)、清野菜名さん(『死霊軍団 怒りのDIY』)、笠松将くん(『ココ』)、石橋静河さん(『流民』)…。松本さんには爆笑させられましたね。『his』などでもご一緒してきましたが、『こんなに素敵な女優さんだったんだ!』と改めて思わされました。笠松くんに対しては、『ここまで骨太い男だったんだ』と思ったし、知っているつもりのみんなの知らない一面を見られた気がします。
初めて作品を拝見する監督も多かったですし、既に知っている方々も『10分でこんな物語を撮るんだ』という新鮮な驚きがありました。あっという間の120分でしたね」

■「できるだけ違和感のある2人にしたいと思っていました」(三島)

――今回、三島監督のチームに参加した山嵜晋平監督(『YEN』)、齋藤栄美監督(『海にそらごと』)は助監督の経験が豊富で、加藤拓人監督(『睡眠倶楽部のすすめ』)は一般公募からの選抜です。

三島「自分自身も、演出部で『撮りたいけれど、なかなか撮れない』と悶々としている時期がありました。演出部の後輩のなかには、やりたいことも気概も力もあるけれど、機会に恵まれない演出部の方がたくさんいます。『DIVOC-12』のお話をいただいた時に、そういった後輩たちに機会をもっていただけるのではないかと感じました。

もう一つこの企画に参加しようと思ったのは、自分自身がこの時期にもう一度ピュアに自由に映画を作りたいという想いからです。『DIVOC-12』はそれができる場所でしたし、そのなかで純粋に『この人にやってほしい』と思う方たちにお声がけさせていただきました。それは今回の監督たちも、富司純子さんも藤原季節くんも同じです」

――このお2人の組み合わせが観られるのは、本作ならではですよね。すばらしい化学反応でした。

三島「できるだけ違和感のある2人にしたいと思っていました(笑)。『よろこびのうた Ode to Joy』というタイトルにも通じますが、出会うはずのないふたりが出会うことは“よろこびの瞬間”だと思います。季節くんと富司さんが出会ってくれたらいいのになと思いながら、本を書いていましたね」

――藤原さんは、富司さんと共演していかがでしたか?

藤原「三島監督から『もっと富司さんを感じて』と言われていたのですが、完成したものを観たら自分はまだまだ視野が狭かったと感じました。富司さんを見て『ここまで軽やかに生きるんだ』と思いましたね。今回は世界の片隅の物語ですが、懸命に生きている人はきっとその懸命さを隠すはず。もっと当たり前に生きているし、小さな喜びを感じて生息しているものなんだと、富司さんのお芝居から学びました。

例えば富司さんとの車中のシーンで、ハーゲンダッツのバーを食べるシーンがあります。そこで興味深かったのは、富司さんが袋を開けてアイスを取り出した時に、すぐかじるのではなくまず舐めるということ。細かい部分かもしれませんが、そういったところに富司さんが演じた“冬海”という人物の生活がにじんでいるんです。撮影中には僕はそこまで見えていなくて…。完成品を観ている間はずっと釘付けでしたね。富司さんではなく、冬海さんにしか見えませんでした。

三島「富司さんは撮影の前日に現地入りして、冬海さんがどういう街に住んでいるのかをご自身で見て回ってから撮影に臨んでくれたんです。そういったエピソードもそうですし、撮っている瞬間瞬間、すべてが印象に残っていますね。砂浜に横たわるシーンでも、目に砂が入ってしまい充血していても、カットがかかるまでは絶対に動かない。本当にすばらしすぎて、頭が下がります。

『焼肉食べたい』と歌うシーンがあるのですが、『体操しながら歌ってほしい』とお伝えしたら、ちょっと意外な動きを披露してくだって(笑)。生命の爆発をこういった形で表現してくださるんだと思いました。
あと、あるシーンで母性と少女性が入り混じった表情を見せてくださった時は、震えました。今回は10分に収めるために、“描かずに想像してもらう”選択をした部分も多くありましたが、表情だけで悟らせる富司さんの演技に非常に助けられ、作品を豊かにしていただきました」

藤原「本当に、すばらしかったですよね」

■「公開するまで黙っていようかなと思っていたのですが…」(藤原)

三島「季節くんも歩として存在してくれていたから、演出というよりも『歩として素直に反応してくれれば大丈夫』とお伝えしましたし、信頼感がすごくありました」

藤原「三島さんはカメラを回す前から『うん、大丈夫』とおっしゃっていましたね(笑)。ちょっとびっくりしました」

三島「(笑)。私はいつも生の肉体を観るのでモニターをあまり観ないのですが、季節くんからちゃんと歩の人生が見えたんです。カラオケのシーンでも、彼は、抱えるものすごい不安や恐怖、複雑な感情を、歌という形で全部吐き出してくれましたし」

――カラオケのシーン、凄い迫力でした。無音ですが、全身から叫びが伝わってくるような…。藤原さんはどういった準備をして、臨んだのでしょう。

藤原「そうですね…(考え込む)。公開するまで黙っていようかなと思っていたのですが、実は僕、この役をいただいてから10日間くらい南三陸に行ったんです」

三島「えっ!そうなんだ。初めて聞いた…」

藤原「いま初めて言いました。本当に誰にも言わずに、歩が生まれ育った南三陸で過ごして、一人でカラオケをしていたんです」

三島「それであれが出たんだ…。歩が南三陸出身というのは、季節くんには伝えていましたが劇中で言及はされないんです。わざわざ行ってくださったんですね。歩の心の揺れがカラオケのシーンに出ていてすばらしかったのですが、そうした準備をされていたとは。本当にありがとうございます」

藤原「とんでもないです。監督にそう映っていたなら、本望です!」

取材・文/SYO