人類が宇宙で新たな帝国を築いた10190年、辺境にある砂漠の惑星アラキス、通称デューン(砂丘)を舞台にしたSF超大作が『DUNE/デューン 砂の惑星』(公開中)だ。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が長年にわたって構想を温めてきた本作は、アラキスで採取される稀少な資源、香料(スパイス)を巡り様々な勢力の争いを描く壮大な物語。厳しくも美しいロケーションのなか、波乱の人間ドラマが繰り広げられる本作の主要人物を紹介しよう。

■ポール・アトレイデス <アトレイデス家>

本作の主人公である、アトレイデス家の若き跡継ぎ。誇り高く思慮深さを持ちながら、領主という将来について、また故郷を離れ辺境の惑星アラキスに移ることに漠然とした不安を抱えている。そんなポールは母ジェシカによる修練によって精神力を高め、わずかだが特殊な力を操り、断片的に未来を見通す能力を会得。夢を通してスカーフを巻いた女性やたたずむ戦士など、同じビジョンを繰り返し見るようになる。アラキスでハルコンネンや皇帝の策略に巻き込まれたことで、大きく成長を遂げていく。

■レト・アトレイデス公爵 <アトレイデス家>

豊かな空と水を持つ惑星カラダンを治めるアトレイデス家の領主。物静かだが威厳ある人物で、責任感も強いことから家臣や民の人望も厚い。有力な領家で組織された大領家連合のなかでも特に大きな力を持ち、そのため帝国に君臨する皇帝から危険視され、アラキス行きを命じられた。皇帝の魂胆を見抜き、アラキスの原住民フレメンと同盟を模索するなかでハルコンネン軍の奇襲に遭う。若いころはパイロットを目指しており、いまだ操縦の腕は高い。

■レディ・ジェシカ <アトレイデス家>

ポールの母。遺伝子の組み合わせで理想の人類を作ることを目的とする女性だけの組織、ベネ・ゲセリットの一員で、レト公爵に見初められた。その際、ベネ・ゲセリットの教母より女の子を産むよう命じられたが、跡取りを欲しがっていたレト公爵のため男の子をもうけてしまう。精神力を高める訓練を受け、声(ボイス)で他人を操ったり、心を読んだりするなど特殊な力を持つ。厳格なベネ・ゲセリットと愛する家族の間で苦悩する。

■ダンカン・アイダホ <アトレイデス家>

レト公爵が厚い信頼を寄せるアトレイデス家の軍人。剣の名手で、ポールの武術指南役も務めている。ポールにとっては頼れる兄貴のような存在で、ダンカンも彼に弟のように接している。アラキス行きが決まった後は、レト公爵の密命を受け先遣隊として潜入。砂漠で暮らす種族フレメンと友好的な関係を築き、アトレイデス家との仲介役を務める。ポールを護って戦う雄々しき姿は、まるで牛若丸と弁慶のよう。

■ガーニイ・ハレック <アトレイデス家>

アトレイデス家の軍司令官。常にレト公爵の傍らに控え、周囲に目を光らせている側近中の側近。剣の腕は達人級で、ダンカン不在時はポールに武術を指南。ただしそのスタイルは実践さながらの荒々しさで、技術だけでなく精神的にも戦うことの厳しさを教え込む。敵の攻撃を受けた時には、先陣を切って部下を率いる勇猛果敢な武闘派ボス。どんな時も厳しい表情をしているが、本人によると感情を表しているらしい。

■ウラディミール・ハルコンネン男爵 <ハルコンネン家>

惑星ジェディ・プライムを治める領家で、アトレイデス家とは数百年にわたり対立関係にあるハルコンネン家。その領主がウラディミール・ハルコンネン男爵だ。アラキスの前統治者で、アトレイデス家の骨抜きをねらう皇帝と組んで宿敵の血を根絶するため策を巡らす。スキンヘッドに冷酷な眼差し、丸々とした巨体はどこから見てもザ・悪役。浮揚装置で宙に浮き、上から目線で毒づく高圧的な態度はレト公爵とは対照的に憎々しさに満ちている。

■グロス・“ビースト”・ラッバーン・ハルコンネン <ハルコンネン家>

ハルコンネン家の軍人で、ハルコネン男爵の甥。“ビースト”のあだ名通り、荒々しく残忍な性格の持ち主だ。ハルコンネン男爵の信奉者で、彼を悩ませているアトレイデス家への怒りを募らせる。アラキスへの侵攻が始まると、巨体にものを言わせて大暴れ。ただし賢いわけではなく、カッとなりやすい性格のため、ハルコンネン男爵にとってゲームの駒以上の存在にはなれそうにない。

■チャニ <フレメン>

ポールのビジョンに何度も出てきた美しい女性で、砂漠の洞窟で暮らすフレメンの戦士。自信にあふれ、スパイスの影響による青い瞳でまっすぐ相手を見据える眼差しも印象的。死と隣り合わせの日々を送っていた彼女は、人を殺したことがないポールを、初対面の時にはひ弱な少年だと考えていた。ほかの惑星から来た者には厳しい態度で接するが、ふと見せる笑顔はチャーミング。

■スティルガー <フレメン>

フレメンの部族リーダー。アラキスの前統治者であるハルコンネンと激しい戦いを繰り広げてきた。仲間やアラキスの自然を守るためには手段を選ばない武骨な戦士。凛とした立ち姿からも、何者にも屈しない強い意志の持ち主であると伺える。レト公爵との会談の席でポールに会い、彼になにかを感じ取っていた。のちに皇帝の軍に追われ砂漠に逃げたポールとレディ・ジェシカに手を差し伸べる。

ほかにも各陣営の間で暗躍するベネ・ゲセリットの教母ガイウス・ヘレネ・モヒアム、アトレイデス家の主治医ユエ、高度な訓練によってコンピュータ級の演算能力や記憶力を身につけた能力者メンタートなど、個性豊かなキャラクターが登場する本作。広大なアラキスの景観や巨大な砂虫(サンドワーム)、戦闘艦の襲撃など圧倒的ビジュアルはもちろん、奥深い人物設定や彼らが織りなすエモーショナルなドラマも本作のキモといえよう。

文/神武団四郎