「DVD&動画配信でーた」と連動した連載「彗星のごとく現れる予期せぬトキメキに自由を奪われたいっ」では、私、南沙良がミニシアターを巡り、その劇場の魅力や特徴をみなさんにお伝えします。第16回は東京北区、田端にあるシネマ・チュプキ・タバタさん。支配人の平塚千穂子さんとの対談の模様をお届けします!

■「こだわりのスピーカーで、360度音に包まれることができます」
南「日本唯一のユニバーサルシアターということですが、どんな経緯で誕生したんですか?」

平塚「私はもともと早稲田松竹という映画館でアルバイトをしていたんですが、その時に視覚に障害のある方の映画鑑賞をサポートする“シティ・ライツ”というボランティア団体を立ち上げたんですよ」

南「シティ・ライツ?」

平塚「『街の灯(City Lights)』、チャップリンの映画です」

南「あ、はい、なるほど!」

平塚「浮浪者のチャーリーが盲目の花売り娘に恋をする感動的な物語なんですが、その『見えなくても気持ちは伝わる』内容にちなんで『目の見えない人に映画の内容をどうにか言葉で伝えたい』という思いで活動を始めました。2001年のことです」

南「私が生まれるより前だ!」

平塚「当時は日本に音声ガイドというものがほとんどなかったので、普通の映画館に行って介助者が障害者の耳元でコソコソささやいたりしていたんです。『いまこうなってるよ』って。でもそれだとほかのお客さんの迷惑になっちゃうので、映写中に障害者の方のイヤホンにラジオ電波を飛ばして実況解説する会みたいなのをあっちこっちで開催していました。2008年には『いつか夢のバリアフリー映画館をつくりたい』という目標を掲げて『バリアフリー映画祭』を年に1回開催することになり、その延長上にこの劇場があります」

南「でも、いちから映画館をつくるのはお金がかかるのでは?」

平塚「ええ、最初はちょっとなめていて、500万円くらいあればできるんじゃないかって思ってたんですよ。でも防音工事だけで1500万円もかかりました(笑)」

南「クラウドファンディングでも資金を集めたんですよね」

平塚「はい、たった3か月で1800万円も集まりました。ありがたいことに、熱心な支援者の方が『シティ・ライツが念願の夢を叶えるんだから』と周囲にたくさん声をかけてくれたんです。『私、この先短いから』と、ご自分の貯金をほとんどはたいてくださった方もいました。そうそう、ここは小さな映画館ですけど音響が自慢なんですよ。著名な音響監督の岩浪美和さんが音響設計を引き受けてくれて。天井から下にスピーカーが向いているドルビーアトモスという方式で7.2.4chです」

南「なんだかよくわからないけど、すごそう(笑)」

平塚「劇場の内装と同じく、森の中にいるかのように360度、音に包まれるんですよ」

南「音声ガイドや抱っこスピーカー、親子鑑賞室もそうですが、映画の多様な楽しみ方を叶える設備や配慮が行き届いていますよね。この場所を通じて映画の素晴らしさがいろんな人に伝わっていくんだなあって、すごく感じます」

平塚「南さんがもし自由に劇場を設計できるとしたら?」

南「寝ながら観たいです!スクリーンは天井で(笑)」

平塚「そういえば、身体の障害で起きられない方が『天井に映してくれたらどんなにいいか…』とおっしゃっていたのを思い出しました。さすがに天井には映せなかったですが、寝転んで観てもらったことがありますよ」

南「本当に、どんな人の楽しみ方も叶えてくれる映画館なんですね」

取材・文/稲田豊史