「死霊館」ユニバースの「アナベル」シリーズに登場するアナベル人形や、「ソウ」シリーズの殺人鬼ジグソウ。名作ホラー映画には欠かすことができないインパクト大のホラーアイコンを次々と放ってきた鬼才ジェームズ・ワン監督が、3年ぶりにメガホンをとった最新作『マリグナント 狂暴な悪夢』(11月12日公開)で新たに生みだしたのは、正体不明の存在“G”だ。

極めて刺激の強い殺傷出血描写などからR18+(18歳未満鑑賞不可)指定を受けた本作は、ワン監督が自ら書き下ろした完全オリジナルストーリー。ある日を境に目の前で恐ろしい殺人現場を目撃するという悪夢に襲われるマディソン(アナベル・ウォーリス)。やがて彼女が夢のなかで見た殺人の数々が現実世界でも発生し、そのたびにマディソンは自身の秘められた過去に導かれていく。そしてついに殺人鬼の邪悪な手がマディソンのもとへ届く時、悪夢の正体が明らかになる。

すでに予告編などで開示されている“G”の存在につながるヒントは、名前が“ガブリエル”であること、マディソンが9歳の時から彼女の側に存在していたこと、そして幼いマディソンがガブリエルは“悪魔”であると語っていることのみ。そこで本稿では、現在わかっている“G”の手掛かりと、ワン監督が過去に手掛けたホラー映画や名作ホラー映画の有名なホラーアイコンとを比較しながら、その謎多き存在の正体へと迫っていきたい。

■ジグソウ、ジェイソン…もっとも恐ろしいのは“人間”!?

「ソウ」に登場した連続殺人鬼のジグソウことジョン・クレイマーのように、やはりホラー映画でもっとも恐ろしいアイコンとなりうるのは“人間”だ。常軌を逸した行動や、その動機がわからないだけで不条理さが生まれ、観る者にこのうえない恐怖を植え付けていく。身近な人間が豹変していく過程を描いたり、「13日の金曜日」シリーズのジェイソンのように印象的なマスクを付けていたりと、一目で危険な存在だとわかるような視覚的なインパクトも人間のホラーアイコンには欠かせない要素だ。

予告編に登場した“G”は、はっきりとその姿が確認できないものの人間の形をしているようにも見える。もしかするとマディソンのよく知る人物のもう一つの姿なのかもしれない…。

■ジェームズ・ワン作品といえば“人形”!

ジグソウが腹話術人形のビリーを使っていたり、「アナベル」シリーズに登場するアナベル人形が周囲の人間を不幸に陥れたりと、ワン監督が手掛けるホラー作品でたびたびホラーアイコンとして用いられてきた“人形”も、可能性として捨てきれない。ただ予告編を観る限り、“G”は積極的にマディソンやその周囲の人物に襲いかかっており、少なくともアナベルとは異なるタイプだとわかる。

仮に“G”が人形だとすれば、シリーズ化もされ近年リブート版も製作された名作「チャイルド・プレイ」シリーズのチャッキーのように、凶悪な殺人鬼の魂が乗り移ったという可能性も…。

■“G”の動きはまるで伽耶子!?Jホラーからの影響も

近年の世界各地のホラー作家たちと同様、ジェームズ・ワンも日本のホラー映画“Jホラー”から大きな影響を受けた作家の1人として知られている。予告編に登場する“G”のシルエットをよく見てみると、黒い影とともに長い髪の持ち主であるようにも見える。それはつまり「リング」シリーズの貞子や、「呪怨」シリーズの伽耶子といったJホラー作品に登場する“幽霊”タイプのホラーアイコンの定番中の定番。特にその動きは伽耶子に近しいものを感じるが…。

“G”が現れる瞬間に空間が歪むような描写も見受けられることから、悪夢の世界と現実の世界が交錯し合った、ある種の異次元に現れる存在なのかもしれない。ワン監督が独自のホラー理論でJホラーを再解釈したとなれば、なおさら興味は尽きない。

■人智を超えた新種のモンスターの可能性も…!?

人間、人形、幽霊と、定番のホラーアイコンの可能性を指摘したが、そのどれにも含まれないモンスターであるという線も充分にある。たとえば『エイリアン』(79)に登場するエイリアンのように宇宙からやってきた別の生命体であったり、「ヘルレイザー」シリーズの魔導士ピンヘッドのように魔界からやってきたり、はたまた一種の概念のようなものであったり。予告編では明らかに人間離れした動きを見せる“G”。果たしてその正体は…。

これまで幾度となくホラー映画の常識を覆してきた“ホラー映画の革命児”ワン監督が仕掛けるとあって、実際にスクリーンで明かされるまでその正体は未知数。もしかしたらここで分類したもの以外の、まったく新しい存在の可能性も充分に考えられる。

ワン監督は本作について、サイコサスペンスからイタリア製の“ジャッロホラー”、さらにはSFなど、ありとあらゆるジャンルの要素を混ぜ合わせた“ジャンル・ブレンダーな作品”と語っており、想像を超える未知との遭遇が待ち受けていること間違いなしだ。是非とも劇場で、驚くべき“G”の正体を目撃してほしい。

文/久保田 和馬