いつの時代も、ラブストーリーをはじめとする多くの映画で様々な愛を表すシーンが描かれてきた。デートをする、手をつなぐ、抱きしめる…。なかでも、誰かが誰かに愛を伝える形の象徴とも言える“キスシーン”は、映画ごとに独自のときめきが詰め込まれている。キスシーンひとつを取ってみても、その瞬間に至るまでのバックグラウンドは三者三様で、登場人物が抱く気持ちも、観る側が受け取る感情も、ひとつとして同じものはないだろう。

現在公開中の林遣都と小松菜奈がW主演の『恋する寄生虫』にも、またひとつ新たな魅力を放つキスシーンが誕生している。今回は本作をきっかけに、観客の心をつかんできた「語り継がれる名キスシーンのある映画」をまとめてみた。

■想いがあふれるワンシーン…『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(08)

まずは、都会の片隅で出会う2人の恋を描いた『マイ・ブルーベリー・ナイツ』から。本作でスクリーンデビューしたシンガーのノラ・ジョーンズが失恋で傷つき人生に迷う主人公エリザベスを、ジュード・ロウが彼女の心を癒すカフェの店主ジェレミーを演じている。いつも閉店間際にひとり店を訪れるエリザベスへ想いを募らせたジェレミーが、ブルーベリーパイを食べながら寝てしまった彼女へカウンター越しにキスを…。『恋する惑星』(94)のウォン・カーウァイ監督によるオリエンタルな美しい映像が、2人の甘く切ないムードを盛り上げる。

■初心で奥手な弁護士見習いが大胆アプローチ!『ラブ・アゲイン』(11)

妻の愛を取り戻そうとする中年男の奮闘を中心に展開される群像劇『ラブ・アゲイン』では、うぶでお堅い弁護士見習い女子が、自分の殻を破ろうと大胆な行動に出る。エマ・ストーン演じるハンナは、美人なのに保守的で友達も心配するほど恋に奥手。婚約間近の彼氏にあっけなくフラれた彼女は、勢いで飛び込んだバーでライアン・ゴズリング演じる百戦錬磨のナンパ師相手に、強引にキスを浴びせるのだ。そのまま彼の腕を引っ張ってお持ち帰りするハンナの雄姿がなんとも痛快!ストーンとゴズリングは、その後共演した『ラ・ラ・ランド』(16)でもその相性のよさを発揮した。

■雨も相まったセンセーショナルな名シーン『スパイダーマン』(02)

いままでに何度も映像化されてきた「スパイダーマン」だが、トビー・マグワイアとキルスティン・ダンストが共演した2002年スタートのシリーズでは、“逆さ吊りのキス”がとびきり異彩を放つ。悪漢をやっつけ、クモの糸で中吊り状態でヒロインの前に現れたスパイダーマン。命を救われたヒロインは、彼のマスクを鼻までめくり上げ、お礼の熱いキスを送る。素性も知れないヒーローとの刺激的な出来事に舞い上がるヒロインの笑顔がキュート!

■唇と共に想いも重なる瞬間…!『君の名前で僕を呼んで』(17)

北イタリアで過ごすひと夏の恋を描いた『君の名前で僕を呼んで』は、美青年同士が艶っぽいキスを披露する。今作で一躍注目された若手俳優ティモシー・シャラメが、思春期の欲望に戸惑いながらも“初恋”に身を焦がす17歳のエリオをみずみずしく演じている。バカンス先で出会うミステリアスな大学院生のオリヴァー(アーミー・ハマー)を、エリオは「僕だけの場所」という静かな池に連れだし、初めての口づけを交わす。求める気持ちを抑えきれず、屋根裏部屋や滞在先のホテルなどで密会を重ねる2人の恋の行方を見届けてほしい。

■激しさと初々しさが共存するキスにドキドキ『アデル、ブルーは熱い色』(14)

一方、美女同士のキスが胸に迫るのは、第66回カンヌ国際映画祭でパルムドールを見事受賞した『アデル、ブルーは熱い色』。『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(公開中)にも出演するフランスの女優レア・セドゥが、ボーイッシュな青髪の駆けだし画家エマを演じ、街で出会った女子高生のアデル(アデル・エグザルホプロス)とめくるめく恋に落ちていく様を描く。フランス映画らしくラブシーンは濃厚。だけど、寝転んだ原っぱや夕日が沈む川辺のベンチで、2人が互いの本心を探るように見つめ合いキスをする“2人だけの世界”は、まるで少女マンガのように爽やか。愛の激しさと初々しいトキメキの両方が味わえる1作だ。

■“セカンド童貞”を翻弄するキスは色っぽさ全開『モテキ』(11)

邦画作品も“名キス”ぞろい!『モテキ』では、“セカンド童貞”の31歳、幸世(森山未來)を翻弄するヒロイン、みゆきを演じた長澤まさみの“エロかわいいキス”が連投される。特にドキドキ指数が高いのは、酔いつぶれたみゆきが幸世の家に泊まった翌朝、寝ぼけながらミネラルウォーターを口移しで幸世に飲ませる場面。恋愛偏差値の低い幸世だけでなく、観る側も悶絶必至!

■背徳感に苛まれながらも飲み込まれていく…『ピース オブ ケイク』(15)

多部未華子と綾野剛が共演した『ピース オブ ケイク』は、流されるまま恋愛してきた20代女子のリアルな恋模様が綴られる。「今度こそ恋は慎重に」と決心していた志乃(多部)だが、偶然が重なってまたもやダメ男となし崩し的に恋に落ちてしまう。彼女持ちにもかかわらず後ろから抱きしめてくる京志郎(綾野)に、「ダメ」と解っていながらもキスを返す場面や、彼に翻弄された末「大っ嫌い!」と放つ言葉とは裏腹に唇を重ねるクライマックスに、割り切れない女心がありありと示されている。

■これぞ大人の恋?艶っぽさ抜群の『娚の一生』(15)
榮倉奈々のスラっとした長い脚に、豊川悦司が唇を這わせる色っぽいワンシーンが大きな話題となった『娚(おとこ)の一生』も外せない。ひょんなことから田舎の一軒家で2人暮らしをすることになった、失恋で帰郷したOLとイケオジの大学教授の2人が織りなすラブストーリー。日々の暮らしのなかで互いに惹かれ合いながらも、一定の距離を保っていた2人の関係を進展させる、ちょっぴりアブノーマルな大人のアプローチにドキドキ!

■“虫”の仕業で恋に落ちた彼女が選んだキスの形とは?『恋する寄生虫』

そして『恋する寄生虫』でも、注目すべきキスシーンが登場。新進気鋭の作家、三秋縋のベストセラー小説を原案に、孤独な2人が“虫”によって恋に落ちていく姿をファンタジックに描きだす。主人公は、極度の潔癖症の青年、高坂と、視線恐怖症で人と目を合わせることのできない不登校の女子高生、佐薙(さなぎ)。社会に適応できない2人が出会い、彼らは“普通”になるためのリハビリと称してデートをすることに。バスの中、マスクをする高坂とヘッドフォンを首にかける佐薙。生きることに悲観し、弱音をこぼす高坂に対し、強がりで奔放な佐薙はふいにマスク越しにキスをして、「ダサいこと言ってんじゃないよ」と一蹴。“虫”のせいでマスク越しのキスという方法を選ぶのだった。人との関わりを避けてきた2人がまっすぐに青春する姿に、思わずキュンとしてしまう!

数々の映画で描かれてきた、ひとつとして同じものがないキスシーンたち。これらの作品を振り返りつつ、『恋する寄生虫』で生まれる“令和的”名キスシーンをスクリーンで堪能してほしい。

文/水越小夜子