ディズニー長編アニメーション60作目となる『ミラベルと魔法だらけの家』(11月26日公開)は、『モアナと伝説の海』(16)以来、4年ぶりとなる待望の新作オリジナルミュージカル。アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞した『ズートピア』(16)以来の再タッグとなる、バイロン・ハワードとジャレド・ブッシュが監督を務めた。

本作でミュージカルの全楽曲を手掛けているのが、ブロードウェイ・ミュージカル「イン・ザ・ハイツ」や「ハミルトン」の作詞、作曲、主演などを務め、トニー賞やグラミー賞を含む数々の賞を受賞したマルチタレントのリン=マニュエル・ミランダだ。彼のみならず、ディズニーの名作にはいまも昔も変わることなく、常に名作曲家たちの支えがあった。今回は、ディズニーがこれまでにたどってきた軌跡を振り返りながら、魅力あふれるクリエイターたちを、プレイリストと共に紹介していく。

■ミュージカル界、映画界でもマルチな才能を発揮するリン=マニュエル・ミランダ

まずはそのミランダが楽曲を手掛けた『ミラベルと魔法だらけの家』から。南米コロンビアの山奥で、魔法の力に包まれた不思議な家に暮らすマドリガル家。家族全員がそれぞれに“魔法のギフト”と呼ばれる特別な才能を家から授かっていたが、ただ一人、少女ミラベルだけなにも魔法を使えなかった。「どうして私は“魔法のギフト”をもらえなかったの?」と思い悩むミラベルは、ある日、家に大きな“亀裂”があることに気づく。それはマドリガル家の家族から魔法の力が失われていく前兆だった。ミラベルは家族の危機を救うため、立ち上がることを決意する。

『モアナと伝説の海』では、オペタイア・フォアイ、マーク・マンシーナと共同制作で作詞&作曲を担当し、全11曲を手掛けたミランダ。同作の主題歌「How Far I'll Go」はアカデミー賞やゴールデン・グローブ賞にノミネートされたほか、シンガーとして劇中の曲「We Know The Way」を歌っている。

そんなミランダは俳優としても、ディズニー・クラシックの名作『メリー・ポピンズ』(64)の続編『メリー・ポピンズ リターンズ』(18)ではガス灯の点灯夫、ジャック役を演じ、ゴールデン・グローブ賞〈ミュージカル・コメディ部門〉で主演男優賞にノミネート。また、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15)に登場する楽曲「Jabba Flow」も共同で制作し、ボーカルとしても参加している。今後、制作が予定されている『リトル・マーメイド』(89)の実写版では、巨匠アラン・メンケンと共に作曲するとのことで、ミランダとディズニーとの関わりはますます深くなりそうだ。


■ディズニー映画にミュージカルの手法を取り入れたシャーマン・ブラザーズ

ディズニー・クラシックの名曲の数々で知られ、映画音楽にミュージカルの手法を取り入れたシャーマン兄弟。兄のロバートと弟のリチャードはそれぞれ、1950年代に流行歌の作詞・作曲家として活躍し、1960年代にウォルト・ディズニーに請われて、ディズニー・プロダクションに参加した。彼らの初のディズニー作品は、商業的にも大ヒットを記録した実写映画『メリー・ポピンズ』だ。本作でシャーマン兄弟はアカデミー賞作曲賞を受賞し、劇中で歌われる楽曲「Chim Chim Cher-ee」も歌曲賞に輝いた。

その後は、ウォルト・ディズニーが最後に手掛けた『ジャングル・ブック』(67)に楽曲提供し、「くまのプーさん」のテーマ曲をはじめとする数多くのディズニー作品の楽曲を生みだしてきた2人。ただ曲を作るだけでなく、作品のシナリオや演出にも携わるという彼らの積極的な姿勢は、現在のディズニーの作品作りの原点にもなった。


■後世に語り継がれるディズニー音楽のレジェンド、アラン・メンケン

ディズニー映画を代表する作曲家として、真っ先に名前が上がる人物といえば、アラン・メンケンになるに違いない。名作曲家たちのなかでも、いまのディズニーの礎を築いた別格的存在だ。作詞家ハワード・アッシュマンとコンビを組み、初めてディズニー映画の音楽を手掛けた『リトル・マーメイド』では、アカデミー賞作曲賞、劇中曲「Under the Sea」で歌曲賞を受賞したほか、ゴールデン・グローブ賞でも作曲賞、歌曲賞に輝く快挙を成し遂げた。

その『リトル・マーメイド』を超えた大ヒット作『美女と野獣』(91)では、ハイライトのダンスシーンの極上ナンバー「Beauty and the Beast」でアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の歌曲賞、作曲賞を受賞。『美女と野獣』の公開を待たずにハワード・アッシュマンが1991年に亡くなったあと、大物作詞家ティム・ライスが彼の後継となり、メンケンと共に音楽を完成させたのが『アラジン』(92)だ。同作屈指の名曲「A Whole New World」は、アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞で歌曲賞、作曲賞を受賞。さらにディズニー史上唯一米ビルボードの総合チャートで首位を獲得し、グラミー賞最優秀楽曲賞を受賞した。その後、作詞家スティーヴン・シュワルツと組んだ『ポカホンタス』(95)でも、主題歌「Colors of the Wind」でアカデミー賞歌曲賞、作曲賞に輝いた。

メンケンが参加した作品が次々と大成功を収めた90年代は“ディズニー・ルネサンス”と呼ばれ、『ノートルダムの鐘』(96)や『ヘラクレス』(97)でも数々の名曲を生みだした。2000年代以降、実写×2Dアニメーションのミュージカル『魔法にかけられて』(07)、初の3DCGで描かれるプリンセス・ストーリー『塔の上のラプンツェル』(10)などの作曲を担当したほか、『美女と野獣』(17)や『アラジン』(19)の実写版によって再び彼の功績にスポットライトが当たることに。現在は実写版『リトル・マーメイド』の音楽を手掛けているとの話もあり、ますます目が離せない。


■ピクサーの名作シリーズに彩りを添えるランディ・ニューマン

アルフレッド・ニューマン、ライオネル・ニューマン、エミール・ニューマンという3人の著名な映画音楽の作曲家の甥っ子として育ったランディ・ニューマンは、その類まれな音楽センスでファンを惹きつけてやまないシンガーソングライター。1980年代から映画音楽へと転向し、『ナチュラル』(84)、『レナードの朝』(90)、『マーヴェリック』(94)といった作品で優れた音楽を生みだした。

1995年にディズニーとピクサーの共同制作で世界初の長編フルCGアニメーション映画『トイ・ストーリー』の音楽を手掛け、ライル・ラヴェットと共に歌った「You've Got a Friend in Me」が大ヒット。アカデミー賞にもノミネートされた。本作を皮切りに「トイ・ストーリー」シリーズ、「モンスターズ・インク」シリーズ、「カーズ」シリーズなど、数多くのピクサー作品で音楽を担当する。

参加した映画のほとんどの楽曲でアカデミー賞にノミネートされてきたニューマンは、ついに『モンスターズ・インク』(01)の主題歌「If I Didn't Have You」で、アカデミー賞歌曲賞を初受賞。16回目のノミネートで悲願の受賞だった。ユーモアとペーソスを織り交ぜながら、古きよきアメリカを描くストーリー性の高い歌詞と、どこかノスタルジックなメロディが魅力の楽曲たちは、子どもだけでなく大人の心も震わせてくれる。


■社会現象を巻き起こした名曲の生みの親、ロバート・ロペス&クリステン・アンダーソン=ロペス

ディズニー・チャンネルの子ども番組の主題歌などを手掛けてキャリアを積んだ、作曲家の夫ロバート、シンガーソングライターの妻クリステン。『アナと雪の女王』(13)で作詞・作曲を手掛けた2人は、社会現象を巻き起こすほどのメガヒットとなった挿入歌「Let It Go」により、アカデミー賞歌曲賞、グラミー賞の映画・テレビ部門の最優秀楽曲賞と最優秀コンピレーションサウンドトラック賞を受賞した。

また、ロペス夫妻はピクサーの『リメンバー・ミー』(17)でも挿入歌「Remember Me」を手掛け、アカデミー賞歌曲賞を受賞。『アナと雪の女王2』(19)でも続投し、7つの新曲を発表した。


■ピクサーから始まり、ディズニーのあらゆるスタジオ作品を網羅するマイケル・ジアッチーノ

ゲーム音楽やテレビドラマの音楽で活躍し、ブラッド・バード監督によるピクサー作品『Mr.インクレディブル』(04)で、華々しくディズニーでのデビューを果たしたマイケル・ジアッチーノ。同じくバード監督の『レミーのおいしいレストラン』(07)にも起用され、アニー賞音楽賞とグラミー賞最優秀サウンドトラックアルバム作曲賞を受賞。さらに『カールじいさんの空飛ぶ家』(09)では、初のアカデミー賞とゴールデン・グローブ賞の作曲賞、グラミー賞の最優秀インストゥルメンタル作曲賞を受賞する。

これら3作品で実力を不動のものにした彼は、以後、『カーズ2』(11)、『インサイド・ヘッド』(15)、『リメンバー・ミー』、『インクレディブル・ファミリー』(18)など、ピクサー作品の音楽を次々と担当していく。彼の才能はピクサーだけにとどまらず、『ズートピア』で初めてディズニー長編映画のスコアを手掛けることに。社会の多様性というテーマをはっきりと打ち出した、メッセージ性の強い『ズートピア』は、ディズニーにとっても重要な意味を持つ作品となった。

また、ジアッチーノは『ドクター・ストレンジ』(16)でマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)にも参加。さらに、「スター・ウォーズ」シリーズのスピンオフ1作目『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)ではルーカス・フィルム作品初の音楽を担当。ピクサー、ディズニー長編アニメーション、「スター・ウォーズ」シリーズ、MCUと、ディズニーのあらゆるスタジオ作品で活躍する彼は、いまの米映画界における重要な作曲家の一人だ。


■「スター・ウォーズ」シリーズでおなじみ、映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズ

『ジョーズ』(75)、「スター・ウォーズ」シリーズ、「インディ・ジョーンズ」シリーズ、『E.T.』(82)、「ジュラシック・パーク」シリーズ、『シンドラーのリスト』(93)、「ハリー・ポッター」シリーズといった大作映画で知られる、89歳の現役天才作曲家。

「スター・ウォーズ」の映像化権を獲得したディズニーによって、いわゆる続三部作の1作目『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が公開されたことで、偉大な巨匠もディズニー音楽の仲間入りを果たした。以降、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(17)、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(19)の音楽や『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(18)のテーマ曲を手掛ける。登場人物たちの心理を鮮やかに際立たせる、華麗なオーケストレーションは圧巻。ちなみに「スター・ウォーズ」のサウンドトラックは、すべてウィリアムズが指揮しているという。


■MCUヒーローたちの士気を高めるテーマ曲を生んだアラン・シルヴェストリ

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズや『フォレスト・ガンプ 一期一会』(94)など、ロバート・ゼメキス監督とのコラボレーション作品で知られるアラン・シルヴェスエトリは、多種多様なサウンドを作りだすことができる作曲家だ。

ディズニー作品ではアニメーション映画『リロ&スティッチ』(02)や、ゼメキス監督作『Disney's クリスマス・キャロル』(09)などの音楽を手掛けている。しかし、昨今、シルヴェストリを最も有名にした作品といえば、『アベンジャーズ』(12)を筆頭とする MCUの作品群だろう。

彼が作曲した、アベンジャーズのメインテーマ曲「The Avengers」は、もはや作品を超えてMCUを象徴する特別な一曲。大事なシーンで鳴り響く壮大なオーケストラサウンドには、聴く者の気持ちを勇気づけ、映画の世界に完全に没入させてくれるパワーがある。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)が世界興収歴代1位(公開当時)になるなど、時代を作ったシルヴェストリは、いまや大作曲家としての地位を確立している。

ディズニー映画と関わりが深い名作曲家は多い。楽曲を聴くだけでも、そのシーンが瞬時によみがえり、何度も感動を味わえるのが映画音楽の魅力だ。好きな作品のサウンドトラックで、ウォルト・ディズニーが心から愛した音楽の力を再確認してみてはどうだろうか。

文/石塚圭子