見た目は赤ちゃん、中身はおっさんの「ボス・ベイビー」がまたスクリーンに帰ってくる!ドリームワークス・アニメーションが放つ大ヒット作の続編『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』が、コロナ禍での公開延期を経てようやく12月17日(金)に封切られる。本作を手掛けたトム・マクグラス監督とプロデューサーのジェフ・ハーマンをリモートで直撃し、映画の見どころやコロナ禍での制作裏話について話を聞いた。

本作の時間軸は、ボス・ベイビー(声:ムロツヨシ)と兄ティム(声:芳根京子/宮野真守)が繰り広げた、赤ちゃんVS子犬のバトルを描いた前作から25年後。いまやリアルにおっさんとなったボス・ベイビーとティムは、どうやらすっかり疎遠になっている様子。ある日、ベイビー社は「悪の天才博士が世界征服を企んでいる」という情報をキャッチし、ティムの次女ティナ(声:多部未華子)を「ボス・レディ」として派遣することに。ボス・レディは、ティムたち兄弟をスーパーミルクで赤ちゃん返りさせ、潜入捜査に向かわせる。

■「家族にまつわるドラマは、国境や言葉を超えていろんな人に届く」(マクグラス監督)

――前作『ボス・ベイビー』(18)は、ドリームワークス・アニメーション映画として日本歴代興行収入No.1となり、34億円をマークしました。『ボス・ベイビー』がここまで日本のファンに愛された理由を、お2人はどう受け止めましたか?

マクグラス「僕のほうが聞きたいくらいです(笑)。ただ、僕が2作を手掛けてみて思ったのは、家族にまつわるドラマは国境や言葉を超えて、いろんな方に届くということです。家族というものは、自分にとって最高な時もあれば、なんとかしてくれ…と頭を抱える時もあります。前作は兄弟の愛を祝福する内容でしたが、親から子どもへの愛は無限大なのに、ティムは弟と愛を競い合ってしまうという物語が観客に響いたのではないかと。今回の2作目では、さらに家族の関係性を掘り下げていきます」

――どんなふうに掘り下げたのですか?

マクグラス「兄弟だけではなく、姉妹や父と娘、母と娘の関係性も描かれます。子どもの時はすごく近い存在であっても、年をとるにつれて、ちょっと家族と距離を置いてしまうことってありがちですよね。今回ティムは結婚して2人の子どもがいるイクメンになっているけど、ボス・ベイビーことテッドの場合はビジネスマンとして多忙な毎日を過ごしているところから物語がスタートします。

そして、ティムの娘が実はベイビー社のエージェントで、難関ミッションのために、ボス・ベイビーを再び駆りださないといけなくなる。そのために、ティムやテッドが特製ミルクを飲んで、若返るわけです。また、潜入する学校が、たまたまティムの娘が通っている学校だから、父であるティムは、いままで気づかなかった娘の内面を見ることになります」

■「前作よりも大掛かりでクレイジーなアクションシーンを入れてみた」(ハーマン)

――ティムの娘がボス・レディだったという点が最高です。今回、女の子バージョンを登場させた理由について聞かせてください。

ハーマン「ミーティングで、ボス・ベイビーを女性バージョンにしてみたらどうなんだろう?という話になり、新しいキャラクターを、女性の視点から描くことにしました。狙ったのは、前作とのコントラストです。前作のボス・ベイビーは、ちょっと硬めのビジネスマンだったけど、今回のティナは、仕事と家庭のバランスを上手く保っています。ティナは、ポジティブな意味で自分がどうするべきかをしっかり考えて行動をとるタイプです」

マクグラス「そのコントラストによって生まれるコメディが最高に愉快です。ボス・ベイビーは、自分と敵対するライバルを潰してやりたいと思うけど、ティナは逆にライバルを抱きしめたいと思うタイプ。この映画で一番頭がいいのがティナです」

――忍者ベイビーも登場しますね。

マクグラス「今回は前作よりも大掛かりでクレイジーなアクションシーンを入れてみました。ネタバレになるので、あまり詳細は話せないけど、ボス・ベイビーたちが学校に潜入した際に、忍者ベイビーたちが“あるもの”を守っているという設定です。技術的に言うと、アクションはとてもハイレベルで、群衆シーンもこれまでにない野心的なものになりました」

ハーマン「忍者ベイビーがたくさん登場するシーンにめちゃくちゃ興奮します!」

――マクグラス監督は、前作では声優として「ペンギンズ」のリーダー役を演じられていましたが、今回も声優として参加されているのでしょうか?

マクグラス「監督業が忙しすぎるから、一応、声優業はリタイヤしたつもりです。でも、実は本作でもある役で、1行だけ台詞を言うシーンがあるんですが、見つけてもらえるかな(笑)」

――マクグラス監督は監督や声優以外に、アニメーター、原案者としても活躍されています。いろいろなスキルがあることが、監督の強みにつながっているのでは?

マクグラス「はい。これまでのキャリアでやってきたことすべてが、フィルムメーカーとしてのいまを支えてくれています。監督をするうえで、ほかのスタッフがやっている仕事をより理解できているんじゃないかと。例えば、アメリカのアニメーション映画はプレスコ(声を先に録る)が多いので、声優の場合、背景もなく、共演相手もいないなか、1人で演技をしなければいけない。その大変さを僕自身が体験しているので、どうすればいいのか、アドバイスができます」

■「コロナ禍の制作では、自分たちが1つのチームだと感じることが一番大切だった」(ハーマン)

――コロナ禍のアニメーション制作は大変だったと思いますが、どのように乗り越えていかれたのですか?

マクグラス「ちょうどコロナ前に制作がスタートし、中盤でコロナ禍になり、スタッフたちは家からリモートで作業をすることになりました。でも、そういう時こそがジェフの腕の見せどころで、滞ることなく作業を進められる体制作りをしてくれたんです。この取材のような形で、ZOOMなどを使ってやりとりをしました。でも、幸いにもコロナ前の1年半は、みんなで一緒に作業ができていたので、すでにお互いにコミュニケーションが取れていたことが大きかったです。やはり最初の2か月間くらいは難しいなと思いましたが、本作は家族についての映画なので、ほとんどの人が家族と一緒に作れた作品になったことは、逆によかったのかなと」

――ハーマンさんがスタッフ陣を引っ張っていくうえで、心掛けていたことはありますか?
ハーマン「コミュニケーションですね。自分たちは1つのチームだと感じることが一番大切でした。また、トムが言ったように、コロナ前に関係性がすでに築けていたことはよかったです。オフィスに行けない状況で、みんながいろんなストレスを抱えていました。人によっては、私生活とのバランスを取るのが大変だった人もいましたし。でも、みんながお互いに支え合っていると感じられたことで、僕たちは乗り越えられたと思います。もちろん『ボス・ベイビー』という作品に対する愛情や想い入れも大きかったです」

――最後に、これから映画を観る日本のファンへ、メッセージをいただきたいです。

マクグラス「大スクリーンで観ていただきたいと思って作った映画です。やはり、映画を誰かと一緒に観るという行為は最高ですから。特にコメディの場合、人の笑い声が聞こえるので、ぜひ映画館で観ていただきたいです。また、1作目に比べて、もっとハートがある作品になっているので、ちょっと驚くかもしれないですが、楽しみにしていてください」

取材・文/山崎伸子