都内の公共施設や民間施設、映像事業者、地域の人々との協力によって、映画やテレビドラマなどの円滑なロケ撮影を様々な形でサポートすると共に、地域の活性化を図ることを目的に運営されている組織「東京ロケーションボックス」。その活動内容は多岐にわたり、都内自治体に置かれたフィルムコミッションとの連携や協力、サポートも行っている。

映像作品を通して東京の魅力を国内外に広く発信し、観光振興に努める東京ロケーションボックスでは、その活動の一環として、支援作品やロケ地登録の案内などを掲載した年4回の季刊紙「Tokyo Location Box Press」を発行。各自治体の観光案内窓口やフィルムコミッションをはじめ、映画やテレビの関係者、関連イベントの際にも配布されているチラシで、作品のファンにはたまらない貴重なロケ地情報が満載だ。今回は、21号となる11月30日発行の秋号に掲載されている、東京都日野市のフィルムコミッション団体「日野映像支援隊」がバックアップした現在公開中の映画『彼女が好きなものは』を紹介したい。

■ゲイの男子高校生とBL好きの女子高生によるせつない恋愛模様

「腐女子、うっかりゲイに告る。」の題名でドラマ化もされた、浅原ナオトの小説を基に製作された青春映画『彼女が好きなものは』。『私がモテてどうすんだ』(20)の神尾楓珠と、現在公開中の『ひらいて』の山田杏奈という新進俳優2人がメインキャストを務め、今井翼、前田旺志郎、山口紗弥加、渡辺大知という手堅い演技派が共演。ゲイであることを隠している男子高校生と、陰でBLマンガを愛好する“隠れ腐女子”の女子高生という2人のせつない恋愛模様を中心に、彼らを取り巻く人々の変化をみずみずしく描く。

周囲の人間に自分がゲイであることを隠している高校生の安藤純(神尾)。唯一自分のセクシュアリティをさらけだせるのは、妻子持ちの彼氏、佐々木誠(今井)と逢瀬を重ねる時だけ。孤独な日々を過ごす彼は、ある日書店で男同士の恋愛マンガを買い込むクラスメイトの三浦紗枝(山田)と遭遇する。紗枝から「誰にも言わないで!」と口止めされるが、この出会いをきっかけに2人は急接近。純と一緒に過ごすうちに、紗枝は純に惹かれていく。紗枝から告白された純は、戸惑いながらもいわゆる“普通”とされている幸せへの憧れから彼女と付き合い始めるが…。

■純と紗枝がイヤフォンを分け合う甘酸っぱいシーンが撮影された東邦歯科医療専門学校でのロケ

劇中には、水族館や遊園地、温泉地などで2人がデートをするシーンも多く描かれているが、なかでも注目したいのは、純と紗枝が仲良くランチをする学校の食堂でのシーンだ。この場面は、純のお気に入りの曲を聴こうと2人でイヤフォンを分け合う、まさに青春映画的ハイライトとなっている。開放的な窓がトレードマークとなる洗練された雰囲気の学食は、日野市三沢にある東邦歯科医療専門学校で撮影された。この専門学校には、美しい藤棚のある日本庭園や静かな茶室など、日本文化に触れられる施設もそろっており、未来の歯科技工士や歯科衛生士たちの憩い場になっているとのこと。

■多摩川と浅川が流れる“水都”としても魅力的な東京都日野市

このロケ地を推薦したのは、東京都日野市から委託を受ける「日野映像支援隊」。映画、テレビドラマ、CM等のロケに関する総合窓口として、ロケ地情報の提供や案内だけでなく、エキストラやロケ弁の手配協力も行っている。高幡不動尊や多摩動物公園を抱え、モノレールも走っている日野市は、多摩川と浅川が流れる“水都”。真っ白い支柱が印象的な万願寺歩道橋(通称ふれあい橋)や、水流に沿って走るのどかな用水路など、魅力的なスポットが豊富だ。また、坂道が多いことから、高台の一軒家や見晴らしのいい公園などの要望に応えることが可能。 高い建物がないため、地方設定の撮影の依頼も多いという。

世間からレッテルを張られがちな世の中で、生きづらさを抱えた男女の心情を描く『彼女が好きなものは』。そのロケ地に注目しながら、エモーショナルな物語の余韻に浸ってみてほしい。

文/水越小夜子