日本の歴代興収新記録を叩きだした『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(20)によって、コロナ禍で大きなダメージを受けた映画業界全体が復活しようとしていた矢先、またしても都市部の映画館の大多数が休業を余儀なくされた上半期。そしてハリウッドの大作映画や公開延期となっていた作品が相次いで公開され、ふたたび映画館に活気が戻ってきた下半期。動画配信が主流となった2021年は、映画館が存在することの意義を多くの人が痛感する一年になったのではないだろうか。

MOVIE WALKER PRESSでは昨年末より、毎年恒例となったスペシャルサイト「映画人が選ぶ、ベスト映画2021」を開設し、多くの映画監督・俳優らに2021年に観て“グッと来た映画”を教えてもらっている(回答は今後も順次追加予定)。

そのスタートにあわせ「映画ファンが選ぶ、ベスト映画2021」と題して、ユーザーの皆様からも投稿を募集。本稿ではそのなかから多くの投稿が寄せられた10作品をランキング形式で紹介し、印象的なコメントの抜粋とあわせて発表していきたい。

■2021年は“林遣都イヤー”!主演作2本が上位を席巻

もっとも多くの投稿を集め、見事「映画ファンが選ぶ、ベスト映画2021」の第1位に輝いたのは、林遣都が主演を務め、中川大志や大原櫻子らが共演した『犬部!』(21)。片野ゆかの「北里大学獣医学部 犬部!」を原案に、大学で動物保護サークルを立ち上げる学生たちの奮闘と、大人になった彼らが新たな問題に直面する姿を描いた青春ドラマだ。

「タイトルの明るさからは意外なほど、多頭飼育や保護犬猫の問題を真摯に取り上げ、辛い場面もありますが、同時に一途に犬好きに邁進する若者たちの青春ムービーにもなっていて、重いテーマを、明るく見せてくれます」(50代・女性)

「動物のために人生をかけて活動する主人公と仲間たちに心を打たれました。この映画をきっかけに少しでも多くの動物たちが幸せになることを願っています」(20代・女性)

「林遣都さんの主演という事で興味を持った映画でしたが、動物愛護や保護動物の存在について考えさせられる内容でした。これから動物を飼おうと考える時はもちろんですが、子ども達やどんな世代にも見てほしいと思う映画でした」(50代・女性)

「命とはなにかをとにかく考えさせられる映画。命を救いたいというただ一つの思いを掲げ奮闘する主人公の姿に、心打たれます。自分の日々の悩みなんてちっぽけなモノで、命ある限り精一杯生きていこうと思えます」(30代・女性)

コロナ禍によってペット需要が急激な高まりを見せ、同時に飼育放棄が社会問題化している昨今。そして世界中の多くの人々が“命”について考えをめぐらすようになったなかで、青春ドラマという親しみやすい切り口で重要なメッセージを伝える本作は、幅広い世代から支持を集めたようだ。

また、林の主演作ではもう一本、小松菜奈とダブル主演を務めた『恋する寄生虫』(21)も第8位にランクインしている。

三秋縋の同名小説を原作に、林演じる極度の潔癖症の青年・高坂賢吾と、小松演じる不登校で視線恐怖症の女子高生・佐薙ひじりがひょんなことから出会い、惹かれあっていく様を描いたファンタジックなラブストーリー。数多くのCMやミュージックビデオを手掛けてきた映像作家の柿本ケンサク監督が生みだす映像美に魅了されたとの声が多く寄せられた。

「世界観に一瞬で惹き込まれました。すばらしい映像美と音楽に、役者さんの繊細で力強くリアリティあるお芝居で、ファンタジーでありつつ、どこか生きづらさを感じるいま、そして自分にそっと寄り添ってくれる温かい作品でした」(30代・女性)

「孤独で生き辛さに苦しみ怯える主人公たちを、林遣都さんも小松菜奈さんも熱演していてしかも外国映画のように美しかった。そしてすばらしいラストに胸が温かくなった。観終わったあとすぐにまた観たくなり、何度も観に行った」(50代・女性)

2007年に『バッテリー』で俳優デビューを飾り、その後も連続テレビ小説「スカーレット」や「おっさんずラブ」シリーズなどコンスタントに活躍してきた林。俳優生活15年目を迎えた2021年は、上記2作以外にも「ドラゴン桜」や『護られなかった者たちへ』(21)などにも出演し、その高い演技力を見せつけた。

■過激なエンタメから静謐な傑作まで、下半期に話題を集めた洋画の数々が登場

第2位には「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズのジェームズ・ガン監督がメガホンをとった『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結。』(21)がランクイン。DCコミックスに登場する悪役たちが一堂に会する『スーサイド・スクワッド』(16)を再構築した本作は、日本公開時“R18+に限りなく近い”R15+作品として公開されるなど、その過激さが大きな話題に。笑いありアクションあり、さらにその奥には深いテーマ性もあるなど、娯楽要素満載の内容に20代から30代の男性を中心に熱狂的なコメントが多く見受けられた。

「全キャラ愛おしい。全ての命は意味があり、同時に価値はないという尖ったテーマや、“誰かの悲鳴に振り返れるか”という部分でヒーローかそうでないかを分ける演出に震えた」(30代・男性)

「ガン監督がまたやってくれた!!期待を遥か上空で越えてきてマジでぶっ飛ぶくらいおもしろすぎた!!こういう頭おかしいくらい最高で、芯もしっかりある映画が観たかった!!言葉で表せないくらいの大傑作!!」(20代・男性)

第3位はドゥニ・ヴィルヌーヴ監督がフランク・ハーバートの伝説的SF小説をティモシー・シャラメ主演で映画化した『DUNE/デューン 砂の惑星』(21)。

「圧倒的な映像美と独特の世界観、性差別ない描写に『スター・ウォーズ』を初めて観た時のような新しい"宇宙"を感じました。また主役、脇役どのキャラクターも光り輝いていました。続編が楽しみ!!」(40代・女性)

「いまの技術だからこそ表現できた世界観。その世界の奥行きの広さに心を揺さぶられました。第二部も無事制作されるようでホッとしています」(50代・男性)

「ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の美しい絵と『砂の惑星』という素晴らしい作品の融合によって映画という総合芸術の極地へ辿り着いたと言っても過言ではないほど完璧な作品に仕上がっていた」(10代・男性)

コメントからも分かる通り、とにかくその壮大なスケールの映像で映画ファンの目線をくぎづけにした『DUNE/デューン』。特に話題となったのはその世界観への没入感を高めてくれるIMAX上映であり、本作はクリエイターの意図したクオリティの映像と音響を劣化することなく観客に届けるというIMAXの新規格「Filmed for IMAX」に初めて認定。日本でも多くの観客がIMAXシアターに足を運び、『DUNE/デューン』の世界を“体験”していた。

そして第4位には、エドガー・ライト監督がトーマシン・マッケンジーとアニャ=テイラー・ジョイの最旬女優2人を迎えて手掛けた『ラストナイト・イン・ソーホー』(21)。現代と1960年代、ふたつの時代のロンドンを舞台に、2人の女性がシンクロしていく姿を描く。

「エドガー・ライト監督の新境地!ストーリー、ビジュアル、ミュージック、どれを取っても一級品!60年代のロンドンに浸ることができて大変満足です。エロイーズの表情にも注目!」(30代・男性)

「60年代ロンドンと現代を舞台に夢を追いかけて生きる若者の理想と現実をホラーというフィルターにかけて描いた作品。2人の女優、トーマシン・マッケンジーとアニャ・テイラー・ジョイのシンクロするダンスシーンは必見!」(30代・男性)

また、第5位には『犬部!』にも出演した中川大志が、石井杏奈とダブル主演を務めた『砕け散るところを見せてあげる』(21)がランクイン。6位には10年続いたシリーズの集大成となった『るろうに剣心 最終章 The Beginning』(21)が、7位にダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドの最終作となった『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(21)。映画ファンから絶大な共感を集めた『サマーフィルムにのって』(公開中)が9位で、スパイク・リー監督がメガホンをとったドキュメンタリー映画『アメリカン・ユートピア』(公開中)が、10位とベストテン圏内に入った。

■大ヒットシリーズの集大成から、熱量にあふれた小規模作品までがランクイン!

「あまりにも衝撃的な展開で映画館ではなかなか立てないほどでした。しかしラストシーンに救われて、二人の何気ない日常に会いたくなって、何度も映画館に足を運びました。中川大志くん演じる清澄がとにかくヒーロー! 間違いなく彼の代表作ですね」(40代・女性/『砕け散るところを見せてあげる』)

「10年にも及ぶ『るろうに剣心』の締めくくりでもあり、始まりでもある物語。巡り巡って1作目に繋がる奇跡的な作品。アクションもすばらしいし、アクション以外の演技もすばらしい。脚本もすばらしい。語彙が少なくてすばらしさが表現できません」(50代・女性/『るろうに剣心 最終章 The Beginning』)

「待ちに待ってやっと公開されて、待った甲斐があった映画でした。長くダニエル・クレイグを追ってきて良かったです。お疲れ様と言いたいです」(50代・女性/『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』)

「観ている間に同じだけの熱量を持たせてくれた。映画というコンテンツが持つ力を教えてもらった気がした」(20代・男性/『サマーフィルムにのって』)

「コロナ禍だからこそ渇望していたライブ体験。痺れるクリエイティブとセンスの塊。政治的で社会的なメッセージ性も持つ作品だった」(20代・その他/『アメリカン・ユートピア』)

カンヌ国際映画祭で脚本賞に輝き第94回アカデミー賞への期待もかかる濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(公開中)と、興行収入100億円を突破し25年の歴史に終止符を打った『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(21)。2021年の日本映画を代表する両作は惜しくもあと一歩のところで次点になったものの、熱いメッセージが多数寄せられていた。

「生きていく上でどうしても超えなくてはならない悲しみをどうやって乗り越えていくか、折り合いをつけていくか、その様を映像美と役者さんたちの演技で表していて感動しました。3時間という長い上映時間を長く感じさせないすばらしい作品です」(40代・女性/『ドライブ・マイ・カー』)

「初めてアニメを観たのが高校生の時で、テレビの最終回や当時の劇場版を観て、モヤモヤとしてましたが、新劇場版観たことで『ありがとう』と思えたし、『さようなら』と区切りがつけました」(40代・男性/『シン・エヴァンゲリオン劇場版』)

『劇場版 呪術廻戦0』(公開中)や『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(公開中)のヒットスタートと共に幕を開けた2022年。まだ世界的に苦しい日々が続きそうではあるが、そんな暗い気持ちを吹き飛ばしてくれるであろう映画が今後も多数控えている。かつての日常が一刻も早く取り戻されることを祈りながら、新たな映画との出会いを存分に楽しんでいきたい。

文/久保田 和馬