2011年に、カーネギーメロン大学とトロント大学の共同研究で、1936年から2010年の間にアカデミー賞主演男優賞と主演女優賞にノミネートされた751人を対象にしたある調査が行われた。これによると、751人中265人がノミネート時に婚姻および事実婚状態にあったにもかかわらず、約60パーセントにあたる159人が、その後1度は離婚や破局にいたっており、“オスカーの呪い”と呼ぶべき衝撃の研究結果が明らかになっている。そして今度は、受賞俳優がメンタルヘルスの問題を抱える確率が、一般人の7倍に上ることが判明した。

何十人ものセレブをクライアントに持つ、英国とスイスベースのParacelsus Recovery Clinicが、1992年から30年にわたって主演男優および女優賞を受賞した俳優を調査したところ、60人のうち41人(3分の2以上)が、受賞後にメンタルヘルスの問題に悩んでいることがわかったという。

主な症状はうつ、不安症、依存症などで、ポール・ホクメイヤー精神科医によれば、「名声と、恐れ、痛み、孤独はしばしば関連づけられているものです。類まれな成功を手に入れることで、妄想的な感情が生まれます。主演男優賞や女優賞を受賞するという成功のレベルは、全人口の99.9%の人には理解しがたいものですが、そのレベルまで一度達成してしまうと、成功は虚無であてにならないものになり、経験するに値しないという感情になる」のだという。

その結果、メンタルヘルスの問題を抱えている一般人は人口の約10%なのに対して、受賞者は68%と約7倍におよぶそうだ。

『カポーティ』(05)でオスカーを手にしたのち、2014年に薬物の過剰摂取で亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマン、『チョコレート』(01)で、黒人女性初の主演女優賞受賞という快挙を成し遂げたハル・ベリーは、その後は役に恵まれず、私生活では男性関係で様々なトラブルに見舞われ、恋人との泥沼破局や離婚を繰り返した。

そのほか、『ペーパー・ムーン』(73)で、弱冠10歳で最年少オスカー受賞者となったあとは、ローティーンのうちに薬物漬けの生活を送るようになってしまったテイタム・オニール、『マイ・レフトフット』(89)、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(07)、『リンカーン』(12)で3度の主演男優賞を受賞したダニエル・デイ=ルイスは、一種のうつ状態から、『ファントム・スレッド』(17)を最後に役者を引退している。

そして今年は、『ドリームプラン』(公開中)で悲願の主演男優賞を受賞したウィル・スミスが、妻のヘアスタイルをジョークのネタにしたクリス・ロックを壇上で平手打ち。ウィルの受賞が有力視されていただけに、自らも主演男優賞を手にしているデンゼル・ワシントンがウィルに放った、「最高の状況にいる時こそ悪魔がやってくる。だから気をつけなければならない」という金言に支えられたウィルだが、栄誉ある受賞の話題ではなく、不名誉な平手打ちの話題と、10年間のアカデミー賞授賞式出禁という代償を払うことになり、メンタルヘルスの問題を抱えることになるかもしれない。

文/JUNKO