直木賞作家の重松清の同名ベストセラー小説を、阿部寛と北村匠海の共演で映画化した『とんび』(公開中)。昭和、平成、令和と三つの時代を舞台に、家族の姿と普遍的な愛のかたちを、阿部演じる“日本一不器用な男”ヤスの息子として生まれたアキラの目線で描く本作。その物語にリアリティを与え、この上ない感動をもたらすのは、0歳、3歳、5歳、12歳、そして北村演じる青年期以降と、5人の俳優によって繋げられた“アキラのバトン”だ。

メガホンをとった瀬々監督は、劇中でたしかに成長していくアキラを作りあげるに当たり、観客に違和感を抱かせないよう慎重にキャスティングを進めていったという。その上で、3歳と5歳、12歳のアキラはそれぞれオーディションで選出。「5歳のアキラを演じた森優理斗くんは、芝居もしっかりしていて感情を表すこともできた。なので彼を真っ先に選びました」と、そのプロセスを振り返っていく。

「3歳のアキラは、まだ皆さん芝居どうこうの年齢ではありませんので、森くんと似ている小川和真くんを選びました。『かあさん』という言葉が出てこず、『かーたん』と言ってしまうのが逆にリアリティがあってかわいかったですね。そして12歳のアキラを演じた白鳥晴都くんは、会った瞬間になにか持っているものがあるというか、スター性のような輝きを感じました。思春期前の不安さや危うさみたいなものが、優しさのなかに垣間見える。普段の素の姿がとてもアキラっぽいと思いました」。

次なる難関は、それぞれのアキラが見せる演技をいかにして繋げていくかということだった。幼少期から思春期への成長、母の死の真相やヤスへの思いなど、多感で繊細な心の機微を5人で演じ、それを一人の少年の物語として繋げていかなければならない。天馬プロデューサーは「子役のアキラたちは決して北村さんに似ているわけではありません。それでも確かに一人のアキラが成長していっているように見えて驚きました」と振り返る。

「それは小川くんや森くん、白鳥くんそれぞれがアキラという役に全力でぶつかった賜物であり、瀬々監督が丁寧に演出されていたからでもあると思います」と絶賛。そして4人の子役たちが繋いできたバトンを最後に託された北村についても「途中からの撮影参加で子役アキラと対面していないにもかかわらず、繊細に流れを汲み取り圧倒的な説得力を持ち合わせていました」とあたたかな賛辞を送った。

昭和末期から令和までのアキラを演じ、幼少期のアキラの姿をスクリーンで初めて目撃したという北村は「この作品は普通の映画よりも月日が早く過ぎる。感情の波が小刻みに動くので、ずっと泣いていました」と明かす。5人のアキラが繋いだバトンによってリアリティが息づき、観る者の感情を揺さぶる作品となった本作。それぞれの時代のアキラの姿に注目しながら、過去から未来へと受け継がれていく親子の絆を劇場で味わってほしい。


文/久保田 和馬