1986年に日本で公開され、社会現象を巻き起こす大ヒットを記録した『トップガン』。その36年ぶりとなる続編『トップガン マーヴェリック』が、度重なる公開延期を乗り越え、ついに5月27日(金)に公開される。トム・クルーズを一躍トップスターにした代表作だが、今作ではトム自身が製作に入り、撮影では自ら戦闘機に搭乗するなど、並々ならぬ情熱を注いでいることでも話題だ。そんな本作の日本語吹替版で、主人公マーヴェリックを演じるのが、声優の森川智之。森川はトム本人からも公認された吹替キャストとして、これまでも様々な作品でトムの声を担当してきた。本作の吹替キャストは森川のほか、マーヴェリックの亡き友人グースの息子ルースター役に、宮野真守の出演が決定している。

伝説の「トップガン」続編とあらば、吹替キャストの発表だけでも超大がかり。今回はなんと“マーヴェリック、ルースターに続く本作の強力吹替キャスト陣を森川が発表するプロモーション映像”の撮影現場にMOVIE WALKER PRESSが密着。訓練中の戦闘機が飛び交う航空自衛隊の基地で、パイロットや整備士などの協力のもと、約50名の航空中央音楽隊が演奏する「TOP GUN ANTHEM」のBGMをバックに、フライトジャケットを身にまとった森川が颯爽と飛行場を闊歩するという、前代未聞の撮影現場の模様をお届けする。

■本物を追求しすぎ。森川マーヴェリックの『トップガン』体験

撮影は4月上旬、茨城県小美玉市の百里基地にて行われた。今回は基地内の一角を使わせてもらったが、撮影のために訓練を休止しているわけではないため、背後でたびたび戦闘機が飛び交うという類を見ない光景のなか撮影がスタート。最初は森川が飛行場に足を踏み入れ、颯爽と歩くシーンから始まった。フライトスーツがばっちり似合っている。

続いて戦闘機に乗り込むシーン。はしごを登って操縦席に入るのだが、このはしごは機体からぶら下がり、足が地面に触れていないため、見ていると心配になる。自衛隊員にコツを教わりながら、「もう一度いいですか?」と慎重に練習を重ねる森川。そうしてスムーズに機体に乗り込み、ヘルメットとマスクを装着してマーヴェリックのポーズを決める。まるでマーヴェリックがそこにいるかのようなかっこよさなので、完成した映像をぜひチェックしてもらいたい。

そしてラストは、森川が吹替キャストの名前を一人ひとり読み上げる重要なシーン。約50名の航空中央音楽隊が、本作を象徴するテーマ曲である「TOP GUN ANTHEM」を演奏するなか、颯爽と歩く森川が現役パイロットと整備士たちに答礼をし、吹替キャストの名前を読み上げる。

余談だが、このテーマ曲のスコアは日本に存在しておらず、この映像のために楽譜を起こして練習してもらったという。どこまでも壮大だ。しかしその甲斐あって、航空中央音楽隊の演奏による「TOP GUN ANTHEM」は重厚感たっぷりで、飛行場が一瞬にして「トップガン」の世界に。撮影を見守る自衛隊員たちも、この場所でこの曲を聞ける貴重な現場を目の当たりにし、感無量の様子。

最後に、このプロジェクトに快くご協力してくださった、自衛隊員の皆さんと森川が記念写真を撮り、あたたかい拍手が響くなか撮影は終了。訓練中の時間を使っての撮影ということで、撮影の一時中断や待ち時間も発生して疲れているはずなのに、撮影終了後の森川をはじめ自衛隊員やスタッフの顔は晴れやかに見えた。これが「トップガン」のパワーなのかもしれない。こうして、壮大な吹替キャスト発表の撮影が幕を閉じた。

そんな前代未聞の撮影を終えた森川に、MOVIE WALKER PRESSが独占インタビュー。撮影を終えた感想から、マーヴェリックを演じるにあたっての心構え、公開当時から大好きだという「トップガン」への想いを語ってもらった。

■「『トップガン』は僕の声優人生と同い年。運命を感じます」

――本日は撮影お疲れ様でした。森川さんでもあまりない経験だったかと思いますが、振り返ってみていかがでしたか?

「あまりないというか、初めてですよね(笑)。普通だったら経験できないようなことをさせてもらえたので、すごく刺激になりましたし、僕自身もマーヴェリックに近づいたかな?と思いました。今日のコックピットに座った経験を踏まえて、このあともう一度収録してみたいなという思いもあるのですが…。でも自分で言うのもなんですけど、吹替収録を振り返ってみて『大丈夫だ!』と思いました。戦闘機に乗る前も乗ったあとのいまも、マーヴェリックを演じたマインドは一緒だったので、安心しています。

今日の撮影で緊張したのは、戦闘機から降りる時ですね。僕自身は落ちようが怪我しようがどうでもいいのですが、高価な機体に傷を付けて、高額な請求でも来たらどうしようと(笑)。でもやっぱり、実際に戦闘機に乗り込んだ時はテンションが上がりました。航空中央音楽隊のみなさんの演奏もすばらしかったです。本当に映画のなかにいるような気分になったし、隊員の方もおっしゃってましたが、あの曲を聞くとみんなトム・クルーズになる。本当に貴重な経験をさせていただきました」

――森川さんはこれまで何作もトムの声を吹替えてきましたが、今作でマーヴェリック役が決まった時の気持ちを教えてください。

「僕は『トップガン』の公開当時、ちょうど声優を始めたくらいの時に劇場で観たんです。観たあとは自分もマーヴェリックになったような気持ちで、颯爽と映画館を出てきたことを覚えています。あのころはレイバン“風”のサングラスをかけて、カワサキのバイクには乗れなかったので自転車でしたが(笑)。なので出演が決まった時はもちろんすごくうれしかったですし、決まる以前に、続編製作の噂を聞いた時点で感動しましたね。今回はトムが製作にまで関わるということで、最高の『トップガン』ができるんだろうなと思っていました」

――マーヴェリックを演じるにあたり、どんな心構えで臨みましたか?

「トムがガチで戦闘機に乗り、ほかのキャストを引っ張りながら、過酷な状況であれだけの演技をして…というのを目の当たりにすると、自分自身も覚悟して演じきらなければという想いがありました。ギリギリの状況でしゃべっているので、飛行中のマーヴェリックやクルーのセリフなんかもう、超リアルですよ。それに合わせて呼吸も浅くしなければならないので、収録している時は吐きそうでした(笑)。映画を観た人が、吹替版と字幕版で同じ感動を得られるよう、声優も常に努力しなくてはいけないと思います。そのためには、もちろん訓練をしっかりすることと、あまり自分の声質に頼らず、本物のお芝居をしようと心掛けています。あとは常にトムのお芝居をじっくり観ていますね」

――トムの作品の現実離れしたアクションシーンを声だけで演技するのはひと苦労だと思うのですが、吹替で意識していることはありますか?

「もちろんすべてが体験できるわけではないので、やはり想像力を大切にしています。トム自身が超人的な方じゃないですか。汗をかかないとか、水中で6分間息を止められるとか(笑)。そんなトム・クルーズの吹替を担当している身としては、そこに少しでも自分が近づけるようにしたいと思っていますし、ほかの方の吹替とはちょっと違うスタンスで挑んでいます」
――トムと言えば、自ら飛行機を操縦したり、スタントマンを付けずに危険な場所から飛び降りたりなど、全部自分でやってしまうパワフルさが魅力ですよね。前作から36年経ったいまも第一線に立ち続けている彼から、刺激を受ける部分はありますか?

「僕もちょうど声優歴が36年なので、すごくつながりを感じています。僕は仕事人間で休みもいらないくらいなんですけど、トムはもっとそんな感じじゃないですか。止まることを知らないというか、自分がやりたいことをすべて成し遂げるパワーがありますよね。『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』の撮影で骨折したというニュースを聞いた時、通訳の戸田奈津子さんがトムに『大丈夫なの?』って連絡したんです。そしたらトムから返信が来て『いい画が撮れた。楽しみにしておいて』って(笑)。最高ですよね。そういった仕事への熱い想いというのは、トムと通じる部分があるんじゃないかな、と思っています」

――『トップガン』への想いと、今作『トップガン マーヴェリック』の見どころについて教えてください。

「『トップガン』は僕にとって、青春映画のNo.1です。いみじくも僕がこの仕事を始めた年に公開されて、こうやって仕事を続けて36年後にマーヴェリックを演じることができるなんて、すごく運命を感じるし、やっぱり特別な作品だなって思います。 

今作は、36年経ったいまだからこそできる、という話になっているんです。映画ファンとしては当然、前作同様の感動を期待していると思うんですけど、もう完全に凌駕していますね。この映画をつくろうと思ったら、自分が国をつくるしかないくらいのレベルですよ(笑)。アクションの派手さや、本人が戦闘機に搭乗しているといったリアリティももちろんありますが、前作から引き継がれたヒューマンドラマもしっかりと描かれているので、自分でも驚いたのですが泣いてしまいました。

36年経ったマーヴェリックがそこにいたんです。彼だけじゃなくほかのクルーも…。みんなあそこからあのまま生きてたんだという、熱い想いがこみ上げてきました。目に見える部分だけではなくて、ちゃんと“人間”を描いているからこそ、感動があるんですよね。みんなの夢を全部叶えてくれるような、そんな映画です。前作を知らない若い世代にもぜひ観てもらいたい。いまの時代はCGが当たり前になっていますが、偽物一切なしの“本物の凄さ”をぜひ実感してもらえたらうれしいです」

森川をはじめ、まさに声優界の“ベスト・オブ・ベスト”な吹替キャストが集結した『トップガン マーヴェリック』。公開まであと少し、楽しみに待ちたい。

取材・文/編集部