“PG12”の『シン・仮面ライダー』は、子どもが観ても大丈夫?「鬼滅」や「東リベ」にも共通する疑問を解説
この大型連休に家族連れや、友人同士で本作の鑑賞を計画している方もいらっしゃると思うが、本稿では未見の方から多く聞かれる、「シリーズに詳しくなくても大丈夫なのか」「“PG12”は子どもに観せても大丈夫なのか」という疑問点について解説しながら、本作の魅力に改めて迫ってみたい。
■ゴジラ、ウルトラマン…コンテンツのファン以外も魅了する「シン・」の魅力
SHOCKERの手によって高い殺傷能力を持つオーグメントと化した本郷猛(池松)が、組織から生まれるも反旗を翻した緑川ルリ子(浜辺)の導きで脱走。迫りくる刺客たちとの壮絶な戦いに巻き込まれていく本作。序盤からクライマックスまで息付く暇もない怒涛のアクションシーンの連続に、西野七瀬や本郷奏多、長澤まさみ、松坂桃李、竹野内豊、斎藤工、そして森山未來といった日本を代表する俳優たちの登場も見どころの一つ。
興収82.5億円を記録し、第40回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞するなど社会現象を巻き起こした『シン・ゴジラ』(16)。『エヴァンゲリオン』シリーズの完結編となった『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(21)、庵野自身もファンであることを公言している日本を代表するキャラクターを新たに映画化した『シン・ウルトラマン』(22) 。そして今回の『シン・仮面ライダー』と、庵野監督が携わり「シン・」と冠された作品はこれが4作目となる。
『シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース』としてコラボプロジェクトも展開されているこの4作品は、いずれも各コンテンツ本来のコンセプトにまで遡り、その核となる部分の魅力を活かす斬新な表現で従来のコンテンツイメージを大きく刷新。大人から子どもまでが楽しめる大作エンタテインメントとして、作品の発表ごとに話題を集めてきた。
現代日本を舞台に、初めてウルトラマンが降着した世界を描いた『シン・ウルトラマン』が昨年公開され、1966年に放送開始された初代「ウルトラマン」の企画、発想の原点に立ち還って「空想と浪漫。 そして、友情。」というテーマを掲げ、これまでウルトラマンに触れてこなかった観客にまで波及するヒットとなったことは記憶に新しい。
そうした「シン・」のスピリットは、本作にも色濃くあらわれている。石ノ森による原作漫画と、1971年に放送され子どもたちを熱狂させた「仮面ライダー」に準拠した世界観のなかで、“原点”の精神性に立ち返り、正義とはなにか、悪とはなにかという疑問符を投げかけながら、自身のアイデンティティに向き合うという普遍的なドラマが展開。
これによって、現在進行形で「仮面ライダー」シリーズに熱狂している子どもたちや、かつて熱狂した大人たちだけでなく、「仮面ライダー」初体験となる人にとっても深く響く、『シン・仮面ライダー』という新たな物語が誕生したのだ。
■実は「鬼滅」や「東リベ」も。「PG12」は家族で観ても問題ナシ!
このように、「シン・」シリーズとして、従来の「仮面ライダー」作品とは目線の異なる、間口の広いエンタテインメントとして完成した本作だが、映倫の審査では「PG12」に区分されており、もしかすると「子どもが観られない作品なのでは?」と勘違いしてしまっている人も少なくないだろう。ここからは、「PG12」についてわかりやすく解説していこう。
「PG12」とは、劇場公開映画などの審査を行なう第三者機関の映倫が定めた区分の一つ。映倫のホームページには「PG12」とは「12歳未満の年少者の観覧には、親又は保護者の助言・指導が必要」と明記されている。よく耳にする「R指定」(R15+とR18+)が一定の年齢に満たない観客の観賞を禁止しているのに対し、「PG12」は観賞を禁止するものではないという違いがある。
映倫が明示している「PG12」の判断基準をわかりやすく言いかえると、「暴力やホラーなどの要素が多少含まれるため、もし子どもが悪影響を受けると判断した時は、保護者が正しい方向へ導いてほしい」といったところだ。
今回『シン・仮面ライダー』が「PG12」となった理由は「殺傷・流血の描写がみられるため」。これだけを聞くと尻込みしてしまう人もいるだろうが、過度な表現ならば「R15+」などに区分されるため、あくまでも「PG12」で大丈夫な範囲内に留まっていると判断できる。
近年では『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』(20)が「簡潔な刀剣による殺傷・出血の描写」、『東京リベンジャーズ』(21)が「未成年者によるノーヘルでの単車の運転および簡潔な刀剣による殺傷の描写」を理由に「PG12」になっていることを考えると、「PG12」がどの程度の描写を指すのかイメージしやすいだろう。
ちなみに暴力描写以外にも「PG12」になる作品はあり、日本でも人気の高い『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)は2010年代の再上映に際した審査で、未成年の喫煙・飲酒描写を理由に「PG12」となったほか、同様の喫煙描写で『スタンド・バイ・ミー』(86)や『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)といった名作も「PG12」に。最近では『シング・フォー・ミー、ライル』(22)が未成年の無免許運転の描写で「PG12」となっている。
また「PG」と「R」でより厳密な区分を敷いているアメリカでは、ディズニーアニメやマーベル・シネマティック・ユニバース作品、「ハリー・ポッター」シリーズなどであっても、日本の「PG12」とほぼ同等の「PG-13」になることもしばしば。
子どもたちには、普段の「仮面ライダー」よりはちょっぴりハードな描写があることを教えたうえで映画館に足を運ぶのがいいだろう。そして鑑賞後には、『シン・仮面ライダー』に描かれた正義と悪について親子で語り合うというのも、本作のように深いテーマを持った作品ならではの楽しみ方だ。
■劇場に行くならいまがお勧め!『エヴァ』ファンも必見の企画が続々
いよいよ始まった2023年のゴールデンウイーク。『シン・仮面ライダー』では特別企画として、庵野監督の代表作の一つである『エヴァンゲリオン』シリーズとの強力なタッグが実現した。
5月11日(木)までのあいだ全国すべての『シン・仮面ライダー』上映回の冒頭で、3月8日に発売されたばかりの『シン・エヴァンゲリオン劇場版』Blu-ray&DVDに収録されている特典映像の劇場版、『EVANGELION:3.0(-46h)劇場版』が上映されている。これは『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(12)の前日譚を描いた10分40秒の物語で、イベント上映などは行われたものの全国的な劇場公開は初めてとなる。
そしてさらに、第7弾入場者プレゼントとして「シン・仮面ライダーカード劇場版 エヴァンゲリオンコラボver.」の配布も実施中。『エヴァンゲリオン』シリーズのキャラクターと『シン・仮面ライダー』のキャラクターがコラボした描き下ろし絵柄が入ったスペシャルカードの全5種のなかから、1枚がランダムで配布される。全国合計100万パック限定なので、気になった方はどうぞお早めに。
5月末にはアメリカで500館規模のイベント上映が予定されているなど、まだまだ話題の続く『シン・仮面ライダー』。未見の方も、このゴールデンウイークにご家族やご友人と誘いあって劇場に足を運んでほしい。
文/久保田 和馬