現地時間5月27日に行われた第76回カンヌ国際映画祭の授賞式において、コンペティション部門に出品されていた是枝裕和監督の最新作『怪物』(6月2日公開)が脚本賞を受賞。日本映画によるカンヌ国際映画祭脚本賞の受賞は『ドライブ・マイ・カー』(21)以来2年ぶり2度目となる。

授賞式に登壇した是枝監督は「一足早く日本に帰った坂元裕二さんにすぐに報告します。僕がこの脚本の元になったプロットをいただいたのが4年半前。そこに描かれた2人の少年たちの姿をどのように映像にするか、少年2人を受け入れない世界にいる大人のひとりとして、自分自身が少年の目に見返される、そういう存在でしかこの作品に関わる誠実なスタンスというものを見つけられませんでした。なので脚本の1ページ目に『世界は、生まれ変われるか』という一行を書きました。常に自分にそのことを問いながら、この作品に関わりました」とスピーチ。

今回が2年連続7回目のカンヌ国際映画祭コンペティション部門への参加となった是枝監督。過去には『誰も知らない』(04)で柳楽優弥が男優賞を受賞し、『そして父になる』(13)で審査員賞を受賞。『万引き家族』(18)では最高賞のパルムドールに輝き、前年の『ベイビー・ブローカー』(22)ではソン・ガンホが男優賞とエキュメニカル審査員賞を受賞。今回『怪物』は独立賞の「クィア・パルム賞」も受賞しており、是枝監督は2年連続で2冠を達成したことになる。

また是枝監督は授賞式後、現地メディアの中継のなかで、坂元から「夢かと思った。たったひとりの孤独な人のために書きました。それが評価されて感無量です」と喜びのメッセージが届いたことを伝えた。

日本公開日である6月2日からは、全国の書店やAmazon、TOHOシネマズ全上映劇場を含む82の映画館(※5月24日現在)、カドカワストアやMOVIE WALKER STOREで、坂元が手掛けたオリジナル脚本の“決定稿”を完全収録した、『怪物』シナリオブックの発売も決定している。映画本編を劇場で目撃したら、カンヌが認めた坂元裕二脚本の世界をシナリオブックで味わい尽くしてほしい。

文/久保田 和馬