“泣ける”小説として口コミが広がり、2016年本屋大賞2位に輝いた、住野よるのベストセラー小説「君の膵臓をたべたい」。浜辺美波、北村匠海、北川景子、小栗旬と爽やかな俳優陣を迎えた待望の実写映画が7月28日(金)に公開される。

重い膵臓の病気を患ったヒロイン・桜良と、桜良の病気を唯一知るクラスメイト【僕】の、儚くせつない関係を映し出す本作。映画の脚本を手掛けた吉田智子さんは、今回、原作にない“12年後”を描写するという試みに挑んだ。そんな彼女の瞳に桜良と【僕】の関係はどう映っているのだろうか?

「桜良と【僕】の変化していく関係が、危うげな魅力を放っていて、それが友情なのか、愛なのか、それとももっと崇高な関係なのか‥と自分なりの答えを探すことができる作品です。その世界観を壊さないよう愛おしみながらも、映画では大胆に、原作にはない“12年後”を描いています」

「それは、12年前に届けられなかった“ある想い”を見つけ出す、【僕】の物語。私は原作の行間から想像を広げるのが大好きなので、きっと桜良ならこんなイタズラを仕掛けるんじゃないか?と考えていたら、“宝探し”というキーワードが浮かびました。それを軸にプロットの段階から、ちょっと謎を仕掛けて描いています」。

劇中、クラスの人気者である桜良と、友達のいない冴えない図書委員の【僕】の関係をつなぐアイテムとして、サン=テグジュペリの名作「星の王子さま」が登場する。この本は、実は吉田さんにとっても思い出深い一冊だった。

「今年の1月、なんの前ぶれもなく、突然母親が倒れました。末期癌。春まで持たないかもと言われ、いま緩和病棟にいます。なんの予告も兆候もなく、人は唐突に別れを迎えるものだな、と思いました。母は幼い頃から毎晩私に本を読み聞かせ、いろいろな本を買い与えてくれた人。『星の王子さま』は私が泣いてしまった作品で、あまりに泣くので母が抱き寄せてくれたのですが、当時私はもうマセていて撥ねつけてしまった、という思い出があります。お母さんが作ってくれたオレンジのワンピースを着ていたのにね、ごめんね、と思っています」。

「星の王子さま」は、母への感謝と想像する楽しみを教えてくれた存在だと明かす吉田さん。その魅力をこう語る。「叡智のキツネの話ばかり一人歩きして、哲学的に思われがちですが、私にとってはシンプルな恋愛小説。バラへの愛に気づかない王子が、バラを置き去りにして放浪した末、一緒に長い時を過ごしてたくさんのことをわかち合ったバラこそが一番大切だと気づく」

「だが気づいた時には遅く、王子は死を選ぶことで、心だけバラのいる星に帰る…というせつなく美しいお話。王子さまはちゃんと星に帰って、いまも星が瞬くように笑っていると受け止めている人は多い。でも、小説の解釈は読者の自由。想像力を掻き立てられ、論争が起きる小説ほど名作だと私は思います」。

「星の王子さま」から受けた影響は、その後、彼女が手掛ける脚本にも表れていると言う。「痛みを伴うせつない物語=“悲恋”に魅かれるようになって、結末も、読み手や観客に判断を委ねる小説が好きになりました。私の恋愛映画作品は結果的にハッピーエンドでも、必ずそういった痛みとせつなさを伴う構造になっています。たとえ10代向けのものでも、それらを粒立てているので、大人でも泣ける作品になっているはずだと自負しています」。

“キミスイ”でも桜良と【僕】をつなぎ、吉田さんの人生においても、大事な母との思い出や現在の仕事に通じる想像力など、様々なことをつないでくれた「星の王子さま」。「私はこの映画が、皆さん自身のかけがえのないものを見つけ出す、“宝探し”になるといいなと思います」。【取材・文/Movie Walker】