『悪人』(07)、『怒り』(14)など著作が映像化されてきたベストセラー作家・吉田修一の新たな傑作が『楽園』として映画化される。すでに綾野剛、杉咲花、佐藤浩市ら主要キャストが明らかになっている本作から、追加キャストが発表となった。

ある夏の日、青田に囲まれたY字路で幼女誘拐事件が起こった。未解決のまま住民の胸には罪悪感だけが残り、事件直前まで被害者と一緒にいた紡(杉咲花)は心に深い傷を負った。それから12年後、再びそこで2つの悲劇が起こる。少女が行方不明となり、町営住宅で暮らす豪士(綾野剛)が容疑者として疑われた。追い詰められ街へと逃れた豪士は驚愕の行動に出る…。そしてY字路に続く集落で暮らす養蜂家の善次郎(佐藤浩市)は、村おこしの事業を進めていたが、話のこじれから村中の非難を受け、村八分状態に。善次郎は狂気に陥り、恐るべき事件へと発展。被害者の親友だった少女、容疑者の青年、限界集落で暮らす男。それぞれの人生が交錯するとき、物語は衝撃のラストを迎える。

発表された追加キャストも豪華面々。幼女誘拐事件の被害少女の祖父・藤木五郎役に、日本を代表するベテラン俳優・柄本明。紡に想いを寄せる幼馴染・野上広呂役に、注目の若手俳優・村上虹郎。そして、善次郎の身を案じる女性・久子役に片岡礼子、豪士の母・中村洋子役に黒沢あすか、五郎の妻・藤木朝子役に根岸季衣、善次郎の亡き妻・田中紀子役に石橋静河と、個性溢れる役者陣が揃った。

プロデューサー・二宮直彦は、キャストについて「皆さん思い描いたイメージでベストな方と考えた」と語っており、映像化には高い期待ができそうだ。本作は、『アントキノイノチ』(11)や『64-ロクヨン-』(16)で高い評価を受けた瀬々敬久が監督を務める。

<キャスト&スタッフコメント>

●柄本明(藤木五郎役)

「吉田修一さん原作は『悪人』に続き2回目ですが、やはり今回も吉田さんの世界だなと感じました。綾野さん、杉咲さん、佐藤さんともこれまでにご一緒しており、現場も楽しかったです。人間なんて恐ろしい存在だから、本当のところは誰も分からない。紛れもなく瀬々監督の映画になっていると思うので、あとは映画を見て頂ければうれしいです」

●村上虹郎(野上広呂役)

「天使なのか、悪魔なのか。大事な人物を演じさせて頂きました。初の瀬々組ですが、監督の鋭い目つきにゾクワクする日々でした。監督の名台詞集をすぐにでも出版できそうですが此処ではひとつだけ、"さっきの方がグビッときた"。スクリーンでお逢いできるのを心待ちにしています」

●片岡礼子(久子役)

「原作の吉田さんと瀬々監督の強い思い。原作から膨らんでいるような印象の久子。その久子としてその場に居ること。書くとシンプルですが、現場では迷い...考え過ぎる自分をやめたい日々でした。途中から久子の家族や善次郎との未来を信じることだけに集中することにしていました。物語が生きてるかのように変化し続けていたことにも現場で何度も鳥肌が立っていました。映画を見届けるまで現場が終わらないような気分です」

●黒沢あすか(中村洋子役)

「喜びと共にひと筋縄ではいかない役柄を与えられるなと直感。楽しみでした。台本をめくっていくと綾野さんのお母さん役・中村洋子。ト書にはアジア訛りの日本語を話すと記されていました。後日、デモCDを手にし洋子という名のクメール人になりきる役作り。発音取りに試行錯誤しながらカタイ頭が柔らかくなっていく手応えを感じていきました。クランクアップの日は満ち足りた気分でした。今は完成する日が待ち遠しくて仕方ありません」

●根岸季衣(藤木朝子役)

「今迄にも老け役は何度か経験して来ましたが、遂に!初の認知症役でした。幸いあらぬ事を叫び続ける事もなく、余りに辛い現実から逃避するかのように、夫役の柄本明さんの手を拠り所にしっかり握って静かに惚けて行く朝子は、幸せにも思えました。前半には事件が起きる前のテキパキとした姿も演じられたので、落差を描けるのも楽しかったです。素敵なキャストが揃っているので、出来上がりを拝見するのが本当に楽しみです」

●石橋静河(田中紀子役)

「人間の恐ろしさと同時に、誰しもが心の中に持っている、狂気や哀しみが描かれているのが、この作品だと思います。初めて今回の脚本を読んだ時、私が演じさせていただいた紀子という役はこの物語の中のひとつの希望なのだと感じ、その灯りを大切に演じたいと思いました。たくさんの方たちにこの映画が届くことを願っています」

●瀬々敬久監督

「またも大きな力を各方面から借りて撮影を行うことが出来ました。長野県各所での撮影では、山間の限界集落に今も住む方々、伝統の火祭りを再現して頂いた飯山市奈良澤地区の方々、犯罪現場の再現にも厭うことなく協力して頂いた駒ケ根を中心とする南信地域の方々、撮影は広範囲に及びましたが地元の方々の尽力でやり通すことが出来ました。それら信州の自然が与えてくれた恵みと共に俳優部の皆さんに今回も助けてもらいました。柄本さんの人間の厚み、虹郎君の繊細な野生、片岡さんのしなやかな女性性、黒沢さんの生きようとする力、根岸さんが醸し出す日常の大切さ、石橋さんの無垢と可憐、それらが綾野さん、杉咲さん、浩市さんと人間ドラマとしてのシンフォニーを力強く築き上げています。その演技の数々に現場にいながら終始刮目し、皆さんの出すアイディアで映画に更なる大きな膨らみを形作ることが出来たと思います。吉田修一さんの『犯罪小説集』が役者の血肉を通し、『楽園』へと巣立っていく過程を楽しみながらも、現在はポスプロの中で格闘している毎日です。人と自然、その両輪が織りなすドラマをご期待ください」

●二宮直彦プロデューサー

「現在、瀬々監督と絶賛編集中で脚本の中でイメージしていたものに対して、俳優部の熱量がそれを大きく超えて立体的に迫ってきている日々です。柄本さん、虹郎くん、片岡さん、黒沢さん、根岸さん、石橋さんは皆さん思い描いたイメージでベストな方と考えてお声掛けさせていただきました。それぞれ人間誰でも持つ陰と陽、多面性を見事に体現されており、綾野さん、杉咲さん、佐藤さんと織りなす人間模様をより高次元に昇華しています。張り裂けそうな切ないサスペンスと震える思いがこみ上げる人間ドラマは世代、性別問わず心に問いかけてくれると思います。皆さまとこの近年そう無い、力強い映画でご一緒出来たことに喜びを感じています」(Movie Walker・文/編集部)