21日からNetflixで配信が開始されたオリジナル映画『バード・ボックス』で、見えない恐怖に立ち向かう母親マロリー役を演じたサンドラ・ブロック。いままで、コメディからSFまであらゆる役柄を演じて来た彼女にとって、心情的にこれほどしっくり来る役はなかったようだ。プライベートでも2人の子どもの母親であることが、彼女の役作りと生き方に大きなウエイトを占めている。ロサンゼルスで行われたインタビューでは、役作りからハリウッドでのサバイブ術まで、サービス精神たっぷりに語ってくれた。

ーー出演する映画を選ぶ際の判断の基準はなんですか?

「子ども達が幸せなこと。子ども達が撮影現場に一緒にいられて、彼らのスケジュールが守られることね。そういう作品は多くないので、その中から最もよい経験を与えてくれそうな作品を選ぶ。大ヒットするかどうかじゃなくて、一緒に仕事をする仲間とどんな経験ができて、自分が満足を得られるような作品をね。『バード・ボックス』はあらゆる意味でその判断基準に当てはまっていた。とても珍しいことなのよ」。

ーー映画の中での子ども達とは共演者としてどのように接していましたか。

「あの子達はプロの役者なので、撮影の前にちゃんと話せばわかってくれる。『これからあなたたちの腕を強く引っ張ったり大きな声を出すけれど、これは演技で、いつも一緒に遊んでいる私じゃないのよ』と。説明しすぎても自然な演技が引き出せないので、やりすぎはいけないけれどトレイ(トレヴァンテ・ローズ)と私は撮影以外でも子ども達とコミュニケーションをとるようにしていた。この映画のような出来事は自分たちの人生に絶対に起きて欲しくないけれど、どの母親も子ども達を守り抜くための強さを持っているものだから」。

ーー役作り、特に目隠しの演技のためにどんな訓練をしたのでしょうか。

「数か月間、盲目の方に訓練をしてもらったわ。視覚が使えないということは、それ以外の感覚が補ってくれるということで、耳で聴くこともできるし、身体で聴くこともできる。映画の半分は目隠しをして演じているから、トレイも私も感覚が研ぎ澄まされてくるのを感じていたの。ホテルの部屋で、どこに壁があるかも感じられるようになったのよ」。

ーーあなたが演じたマロリーは、いままで映画で描かれてきた母親像とは少し違う、前へ進んで行く母親でした。

「そうね。いままでマロリーのような強さを持った女性はあまり描かれてこなかったし、(トレヴァンテ・ローズが演じた)トムのような深く大きな愛で包み込むような男性像もなかったわよね。男性だって、そういう姿を描いてもらいたいと思っているんじゃないかな。私たち、役柄が逆転しているみたいでしょ。それは本作が男性だから、女性だからということではなく、人間としてどのように家族を愛し、危機的状況を乗り越えるかを描いているからなの」。

――母親として、今現在の世界が置かれている状況についてどう思いますか。

「歴史を顧みると、原始時代から落ち着いた時なんて1度もない。どんどん状況は悪化しているようにも見える。私の両親は冷戦時代を生きて来たので、私たちが持ち得ないような恐怖を潜在的に抱いている。私の子ども達はアフリカ系なので、子どもたちにも厳しい話をしなくてはいけない。でもその時に、『世界の難しい面も見せるけれど、人生の美しい面も見せてあげるわ』というふうに話すようにしている。私の家族はとても多様な人種構成で、義理の弟は日本人なのよ。彼は人生の違う面や、違う愛し方を私の家族にも教えてくれた」。

ーーもしあなたに同じような状況が訪れたらどうしますか?

「私こそ、『世界の終わりのような恐怖がやってきたら』って常に考えているような人間なのよ!家の外には緊急避難用ボックスが準備してあって、保存食や水のタンクや薬や犬の餌や…なんでも入れてあるのよ。そして『火事が起きたらどうするの?この窓から逃げて、あっちに梯子があって…』と子ども達にいつも言っている。いつどんなことが起きてもサバイブできるように」。

ーーでは、ハリウッドで生き抜くためのサバイブ術は?

「いまだにここにいられるなんて、それこそミラクルよね!大事なのは、ユーモアのセンスだと思うわ。自分の周りにいるすべての人を笑わせるユーモア。確かにハリウッドはクレイジーなところだけど、映画やドラマを作っている間は疑似家族のようなもので、全員が最高の作品を作るために全力を尽くしている。彼らは、私を映画の中でよく見せるために頑張ってくれているんだから、絶対に嫌な人間にはなっちゃダメ。同じスタッフと何度も一緒に仕事することになるんだから!あとは、物事をあまりシリアスに捉えすぎないことかな。仕事についても、自分自身についても。ファッションの流行みたいに、映画の世界にも流行り廃りがあるもの。自分が流行遅れの存在になっちゃったのかもしれないと感じていても、時間が経つとまた流行が巡って来るものだから(笑)。社会性を持って、周りの人たちを大切に、そしてユーモアのセンス!周りの人を笑わせられない人は大成しないわよ」

ーー出演作品を選ぶ上で大切にしているのはどんなことですか?

「私はこの世界に長くいるので、ようやくそれが何かを感じ取れてきたところ。役者というものは『すばらしい役を演じたいの、いい役柄をちょうだい!』って騒ぐけれど、その映画を誰が観たいっていうの?(笑)。いつも脚本を読むときは、誰がこの映画を観るんだろうと考える。『バード・ボックス』は、私がいままで出演したことのないジャンルで、スリルに満ちた物語。家族愛やサバイバル、人間の脆弱さといった複雑なテーマを描いていて、私自身がこんな映画を観たいと思ったのよ。そして、私たちはエンタテイナーであって、世界に役立つような研究をしているわけではない。映画の楽しさを伝えるサービス業だってことを絶対に忘れてはいけないって、経験を積むごとに感じている。『演技力の向上が…』って気になるのもわかるけれど、『でも、そうじゃないのよ』とも思う。撮影を終えた1日の最後には、自分が成し遂げられなかったことに落ち込んだりもするけれど、『これは映画なのよ、エンタテインメントなの』と考えて、しょうがないって思うことも必要。年を重ねるごとに意識の変化が必要になって来たわ」

――あなたはすばらしいキャリアを築いてきて、まさに夢を実現させた女優です。この先のキャリアについてはどう考えていますか?

「なにも考えないようにしている。企画開発やプロデュースに関わったものも、道筋通りに起きているわけではない。いい企画が飛び込んで来たら、飛びつくだけ。でもいまはコメディをやりたいって思っているわ。コメディをしばらくやっていないから。でも、私のコメディに対するハードルはめちゃくちゃ高いので、いい企画はなかなか簡単に見つからないわね。今度、テレビシリーズをプロデュースするのよ。カメラの前にいるだけじゃなくて、制作側に回る。クリエイティブな人々と一緒にいるのが好きなのよ。仕事が好きだし、頑張って来たという自負もある。だから、自分自身を驚かせるような将来が来るといいなと思う」(Movie Walker・取材・文/平井伊都子)